2020年09月12日

言いたいことなどなくて良い

ものを書く時に、何か言いたいことが核にあり、
それを軸に発展させて、そして出来上がる、
と考えているならば、
書き続けていくことは出来ないと思う。


じゃあブログを毎日書き続けてみるとよい。
一ヶ月続けばたいしたものだ。
一週間が関の山ではないか。
毎日数千字を書くということは、
最初の数日は出来ても、
すぐに燃料がなくなるものだ。

つまり、「書きたいこと」「言いたいこと」なんて、
意識の上澄みでしかないのだ。

書いたら溜めて、書いたらまた溜めて、
なんてのは自転車操業に過ぎず、
書くこととは違う。

じゃあどうするのかというと、
ジャンクを沢山つくるのだ。

マッドサイエンティストの研究室をイメージしよう。
作りかけのものや、ガラクタのようなものが、
たくさん転がっていると思う。
昔やりかけたが放り出したもの、
行けるかと思ったが行けなかったもの、
なにに使うかわからないがとりあえず保存したもの。

そうしたものをたくさん集めておくことだ。

それが直接役に立つことは稀だが、
それらの周辺のことが、
急にモリモリと形になることは、
稀によくあるのである。

ぼくらの場合は、アイデアノートがそれだろうか。
何冊あってもいいし、デジタルでやっても構わない。
デジタルは写真や動画が貼り付けられるので便利だね。

だけど本当に役に立つのはアナログのメモだ。

なぜなら、
ガラクタそのものが役に立つわけではなくて、
その周辺の何かが利用できるからだ。
デジタルは鮮明過ぎて、それそのものしか存在しない。
アイデアとはもっと曖昧な形からでないと立ち上がらない。

なので、手書きくらいの、どうとでも取れるようなものからのスタートが、
一番伸びる。


それらを育てよう。
それもアイデアノートに書き、
成長しなかったらガラクタの山に追加だ。

これらをやっているうちに、
ふとひと繋がりのものになる。

面白いアイデア、面白いストーリーになってゆく。
竜巻ができる瞬間みたいなものだ。
リーチ目を沢山置いとくと、
ある日ふっと竜巻になる感じ。

あとは、それ自体が吸引力になり、
どんどん自発的に形になってゆく。


このとき、あなたの言いたいこととは、
関係なく形が整っていくことに気づこう。

で。

もともとあなたにも言いたいことのひとつやふたつあるだろう。

今竜巻として出来つつあるそれと、
言いたいことは関係しているか?
してないのならここから先はまたぽしゃるかもしれない。

あなたの言いたいことのうち、
ごく一部の○○となら、関係をつけられて、
竜巻を育てられる、と見出すことができるかもしれない。

その時、おそらくその先をつくることになる。


あなたの言いたいことありきでは、
アイデアの竜巻など発生しない。
アイデアの竜巻だけでは、粘着力がなくすぐに萎む。
竜巻と、言いたいことの一部の関係性ができた時、
おそらくそれは持続する竜巻になる。


あるいは、言葉にしなくてもよい。
書き終えた時にはじめて、「自分の言いたいことはこれだったのか」
とわかることすらある。

その時は、その言いたかったことを軸に、
リライトし直すのがスッキリしたものになるだろう。


言いたいことが必ずあるべきではない。
感覚先行で構わない。
しかし自己組織化して、まとまりを作り始めた時、
これをまとめるコンセプトはなんだろうと、
立ち止まって考えることは必要だ。

それが決まったら、
「だとするとこれは必要」「これはいらない」と、
さらにディテールを詰めていけるからである。

最終的に出来上がったものは、
アイデアや言いたいことのバランスが丁度いいのだが、
最初からそうであったわけではない。
それは他人の製作過程を1から10まで見ないと分からないかもしれないが。



「言いたいこと」を探すのは、
そもそもおかしい。
テーマを探してからストーリーを書くのは、
作り方が間違っているとすら思う。

それよりも面白そうなアイデアをたくさん集めておくんだ。
そのガラクタから、
そのうち渦ができる。

テーマがあれば、その渦は完走できる、
というだけのことだと思う。
posted by おおおかとしひこ at 02:15| Comment(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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