原作ものをやるときとか、
有名芸能人で当て書きするときに注意すること。
あるいは、
自分の既成キャラクターを書くときにも注意すること。
「自分が既知のことを、相手が既知だと考えないこと」
が前提だ。
「相手が未知だと考えて、
自分の既知のことを教えること」
を考えないといけない。
それがたくさんあればあるほど、
いっぺんには伝えられない。
じゃあどうするか。
ひとつには、小出しにしてちょっとずつ洗脳する。
しかし小出しにしているだけで、
それらで少しずつ魅了されていく保証はない。
説明にはなっているかもしれないが、
心を掴んでいるとは限らない。
もっと有効な方法は、
「自分が既知のものを、一発で魅力的に伝えるエピソードを創作する」だ。
たとえば織田信長を書くとしよう。
ある程度信長は有名キャラクターだから、
それに甘えている面がある。
だが外国人は知らない。
だからこのちょんまげがちょっと長い男が、
どういう性格で、どういう立場で、
どういう動機で動いていて、
どういう過去を持ち、どういう人間関係の中にいて、
そもそもどういう魅力を持っているか、
知らないわけだ。
そんな外国人に、
一から信長を布教するにはどうしたらいいか?
ひとつひとつ説明していたら、
ストーリーが止まってしまうし、
それがよほど面白くない限り、退屈がやってくる。
だから、
「知らない人でも一発でこの人を好きになるエピソードを創作する」
のがベストだと僕は思う。
信長に関しては好きなエピソードがひとつあって、
「初めて見た黒人の弥助を、『泥で汚れている』と身体を洗ってやった」というやつ。
南蛮胴をつけた異国のファッション傾奇、
怖い殿様、野望の人、比叡山を焼き討ちにした第六天魔王、のちに暗殺される悲劇の人、
などの常識を振り切って、
「案外優しい人」という魅力があると思わせる小さなエピソードだ。
もしこれが信長のファーストエピソードだとしたら、
みんな信長を好きになるのではないか?
save the catテクニックである。
どういう第一印象を与えるかは、
どんなキャラクターのときにも考えないといけないことだ。
そのキャラクターの第一印象は、
作中ずっと、
あるいは完結後も語り継がれるものになるだろう。
そのキャラクターの、外面的な立場を示すエピソードだけでは足りない。
おそらく、「その人の内面に触れるようなエピソード」
のほうが強い。
喧嘩に明け暮れ先生の言うことを聞かないとんでもない不良というエピソードよりも、
「そんな不良が捨て猫を世話している」をこっそり見た、
ということのほうが、
その人のキャラクターに強烈な記憶となるだろう。
そうしたエピソードを、創作することだ。
原作ものでは、
それが原作にあって流用できることもある。
しかしないときもある。
ひとつのエピソードに限定しきれず、
蓄積した何かがその人のキャラクターになっているときもあるだろうし。
しかし、そういう時でも、
必ずオリジナルでよいので、その人を表すエピソードを、
なるべく登場時から数ページ以内に与えてやることだ。
主要キャラでないならそんなにいらないけど、
主要キャラならとくにケアするべきだ。
これは自分のオリジナルでも同じで、
当て書きでも同じだ。
その人の内面に触れられたと思わせる、
ひとつの印象的なオリジナルエピソードが第一印象であるべきだ。
みなさんご存じの、で逃げてはいけない。
たとえば、またゼータガンダムを例に出すが、
アムロにそういうものがなかったのが、
脚本上の欠点だと思う。
新しい登場人物のカミーユやジェリドにはあったが、
旧人物のアムロにはなかった。
だから、どう扱っていいか誰も分らないまま、
ずるずると時が過ぎていったと思う。
シリーズものではとくにこうした現象がある。
その人がどこで立ってるか、で考えると、
その作中で立つべきであって、
他のこのへんで立っていたから、はその作品しか見ない人に失礼だろう。
上手に圧縮して、しかも立ってるエピソードを創作すること。
これはとても難しい。
だから成功している例が少ない。
ということは、やれたら最高だということだ。
ドラマ風魔では、
小次郎のそのエピソードはなんだろう。
原作にあるオープニング、ハチの巣退治だろうか?
僕は違うと思っていて、
「忍びは片付けたから、あとは学生たちが頑張ればいい」
というエピソードだと思っている。
これがあることで、
この人はこういう人なんだ、という魅力が出てくるわけだ。
それまでは単なるコントの役割しかしていないキャラクターでも、
人間小次郎が出てきた瞬間だと考えると、
分りやすいのではないだろうか。
こうしたことが、原作ものであろうが、
みなさんご存じであろうが、
有名人器用であろうが、
オリジナルキャラクターであろうが、
必要だと僕は考えている。
そこをうまくやれれば、
キャラは自然に立ってくる。
理想は恋させること。
次善は、「おっ、こいつちょっとええやつやん」と思わせること。
2020年09月17日
この記事へのコメント
コメントを書く