2020年09月14日

【配列】速度競争の誤り

AとB、どっちが速いんだ?
(AとBには、qwertyローマ字や親指シフトや、
フリックや、JISカナや、新下駄や薙刀式が入る)

という問いに対して、間違った考え方があると思う。


AはBより速い、大体見たらわかるだろ
→いや、Bのトップクラスはお前のAより速いぞ
→俺のAは遅いけどさ、Aのトップクラスはまじ速いぞ
→じゃあ頂上対決で決めよう
→Bがタイピングゲームで速かったとする
→でもBなんか使ってる人少ないし、チャンピオンの個人が速いだけだろ
→じゃあ速さってなんだよ

まあよくある論争だ。

この思考の罠にハマると結局、

・タイピングゲームでの速さしか比べられない
・集団のトップで比べてしまう
・普及率を速さの基準と考えてしまう

の3つの誤りに陥ると思う。

これは、「最強の格闘技は何か?」でも同じ誤りになりがち。
・グローブありの試合結果でしか比べられない
・流派のトップ同士で比べてしまう
・普及率を強さの基準と考えてしまう
で想像すると、わかりやすいかも。


・タイピングゲームでの速さしか比べられない誤り

「速さ」は短距離走か?

AとBの速さを比べるとき、
実戦の文章、たとえば議事録や報告書、メール、
あるいは小説やエッセイやブログなどの創作文で、
本来比べるべきだ。
一日の作業速度や負担、
あるいは一ヶ月単位でのそれを比べるべきで、
たかが1分前後のそれで比べるべきではないと思う。

短距離走が速いものが長距離走が速いとは、
必ずしも僕は思えない。
400mドラッグレースに出る車と、
ラリーに出る車は違う。
人間の筋肉は100m走用の速筋(無酸素)と、
マラソン用の遅筋(有酸素)は別に存在する。

試合とは測定可能な、一部を切り取った部分で競うのはわかる。
じゃあ短距離走と、長距離走(1万字程度)、七日間走(1万字×7日とか)
などの複数で測定したらいいんじゃないか?


・集団のトップで比べてしまう誤り

メソッドの良し悪しよりも、個人の才能が勝ると、
メソッドそのものの評価は難しくなる。

こういう時は大きな集団で比較すると、個人の才能のバラツキをキャンセルできる。
たとえば平均値、中央値で比べるとよい。

「一人だけ突出して優秀だけど、
脱落者が多いメソッド」と、
「脱落者は少ないが、トップクラスでもない」は、
どちらが優秀な集団だろう?
平均値は同じくらいでも、中央値は後者の方が上だろう。

十分大きな集団を比べて有意差があるか検定するのは、
統計学の基礎である。
ところが、配列やタイピングは、十分な母集団を得られないのが問題だ。

最低でも100人は母集団が欲しいところ。
今それだけの規模がある集団は、
フリック、qwertyくらいだ。

しかも無作為抽出であるべきで、トップ100を集めるべきではない。
あくまで集団としての比較をしないと、
メソッドの影響だけを取り出せない。

かつてワープロコンテストで親指シフトが上位を占めたときは、
「文章を沢山入力するガチ勢」は、
親指シフトワープロ(100万円以上)を買うほどの、
ガチ勢ばかりだった、
つまり測定集団として偏っていたことが考えられる。

挫折した人が多いタイピングメソッドは、
優秀とは言えないと考える。

また、文章ガチ勢がそもそも少ない。

文章を沢山書く人に向いた、文化を進めるための配列こそ最適、
と考えるべきか、
文章をそんなに書かない人に最適、
と考えるべきかでも、
用途に対するメソッドの議論は分かれてしまうだろう。


・普及率を速さの基準と考えてしまう

上の議論と重なるが、
そもそも大量に文章を書く人は少ない。
報告書やメールなどのビジネス文書は、
小説などに比べればたかが知れている。

何のための配列か、ということだ。

予想だけど、十分な母集団を比較できるとして、

新下駄や飛鳥はどの部門でも優秀な成績を収めるだろうし、
薙刀式は中距離以上で優秀な成績を収めそうだ。
qwertyやJISカナは長距離ではしんどい。
いろは坂や月は、中距離までは最強になり得る。
親指シフトはあまり目立った活躍をしなさそうだ。

しかし脱落率の少なさでは、フリックと新JISは優秀だろう。

しかし現実には、
フリックとqwertyが普及して、
他の配列は多くても100人とか1000人のオーダーだろう。

メソッドの良し悪しと普及率には強い相関はない。
qwertyは最初からついてたから普及した。
最初から新JISだったら、新JISが普及したと思う。
フリックがここまで普及したのは、ガラケー打ちより明らかに良かったからだ。

普及したものがもっとも美味いものなら、マックとコカコーラが最強になってしまう。
普及とメソッドの良し悪しは、強い相関はない。



このように、
現状がメソッドだけを分離して議論できる、
公平な状況になっていないので、
出来ることは部分的な比較にすぎない。

限定的な比較だと最初はわかっていても、
RTCでqwertyが優勝したとか、
ワープロコンテストで親指シフトが優勝したとか、
小さい比較でマウントしてしまいがちだ。
その個人は称えるべきだけど、
それはメソッドの良し悪しとは関係がないことだ。

「自分の出身地の高校が甲子園で優勝したからといって、
出身地がすべて優秀とは限らない」のと同じだ。
誇りに思うことと、
メソッドの良し悪しは関係がない。


現状、統計的に調べられそうなことは、
フリックとqwertyの無作為集団100人で、
短距離、中距離、長距離を比較することだろうか。
無作為抽出のやり方に偏りがありそうだから、
3回とか5回集団を変えてやるべきかもしれない。

予想だけど、中距離まではフリックが勝ち、
長距離ではフリックに故障者が出るだろう。

qwertyのブラインドタッチ率は3割なので、
できない7割が足を引っ張るだろう。

これに親指シフトも絡められると、
もう少しメソッドに対する議論ができそうだ。
このメンツでは長距離は強いだろうが、
脱落者も無作為抽出に入れるなら、勝負はわからないね。


誰か石油王がやってみてくれると、面白い結果になると思う。

こうしたメソッドの比較法を議論せずに、
どっちが速いとか言ってもしょうがないと思う。



つええ奴の属する集団が強いかは、なんとも言えない。
才能とメソッドが揃っただけかもしれないし、
メソッド関係なく才能だけかもしれないし、
才能関係なくメソッドだけでこうなったかもしれない。

多くの人を、短期間で、そこそこ強くするのが、
もっとも効率のよい配列で、
武術では空手、配列ではフリックじゃないかな。

長距離では、
武術では銃か弓、配列では新下駄、飛鳥、薙刀式あたりだろう。


刃牙の徳川翁みたいになって、
地下トーナメントでも開いてみたいわ。
posted by おおおかとしひこ at 10:44| Comment(2) | カタナ式 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ご無沙汰しております。
大岡さんの話を読んで、確かに、明確な結論を出すのは難しいよな―と、思い、ちょっと勉強中の統計手法の話など絡めてすこし書いてみました。

https://hiyokoya6.hateblo.jp/entry/2020/09/15/150433
Posted by 井上明人 at 2020年09月15日 15:18
>井上明人さん

拝読しました。中心極限定理の導出が院試で出たなあ…
僕は格闘技が好きなので、いつも「最強の流派は?」
という答えのない問いの争いを見ていて、
タイピングも同じだなあと思ったので書いてみたのです。

僕は一回じゃなくて、何回か統計取ればいいんじゃないかと思います。
勿論統計条件は記録した上で。
そうすると隠れた変数が浮かびやすいのではないかと。
むしろ、隠れた変数を炙り出すために統計は取るべきかなと思います。


そもそも万葉の昔から、女性の方が文章の嗜みはあるので、
初手で有意差があるかもですね。
文章を書く目的が、女性はコミュニケーション、男性は報告、
に偏るかも知れないし。

たとえばフリックは、LINEやTwitterに目的を特化した配列
(スマホの持ち歩き性と込みで)と言ってもいいと僕は思っています。
統計を取りづらいでしょうが、現在フリックの方がqwertyよりも、
ネットの中の文字量は多いと想像します。
Posted by おおおかとしひこ at 2020年09月15日 15:49
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