その登場人物は、突然そこにぽっと出てきたわけではない。
どこかで誕生し、子供時代を経験し、
いろいろあってそこにいる。
それを、単純でもいいから作っておくとよい。
なぜそうするべきなのか?
それをしないと、
主人公サイドの行動に反応する、
自動人形のようになってしまうからだ。
主人公の娘に父がいるとして、
喧嘩しているとしよう。
その父は、かつて自分の父とどう喧嘩したか、
覚えているはずだ。
(そしてその父も、以下同様のはずだ)
それを覚えているうえでの喧嘩の仕方と、
ただ娘に対する障害としての人形だと、
全然台詞の含みの豊かさが変わってくる。
年頃の娘は反抗しがちなのを分かったうえで対処するのか、
ただいけませんというだけなのか、
の違いだ。
あるいは、貧乏な人の話を書こうとしたとき、
その人は今突然貧乏になったわけではないだろう。
何か大きな原因はあるのか、
なるべくしてなったのか、
それとも不可抗力だったのか、
周囲は助けなかったのか、
その人の両親はどうしたのか、
などなどを作っておかないと、
「突然ぽっと出の貧乏という設定の人」
になってしまう。
もちろん、本編では、
裕福な状態から貧乏に転落するところまで、
一々描く必要はない。
登場時にすでに貧乏なわけだ。
そして、原因があれば、それを究明することで、
脱することが可能かもしれない。
その貧乏な人が裕福になるストーリーであれば特にそれは重要だけど、
そうでない脇キャラだとしても、
変化のストーリーを組める可能性が出てくる。
つまり、
変化のない貧乏設定の静が、変化という動へ、
書き直せる可能性が出てくる。
バックストーリーのない、
ぽっと出の設定だけの人は、
そういう人でしかない。
変化できず、同じ反応しかしない、
点で静的でしかない。
それは、動的に変化していく、ストーリーの登場人物ではないわけだ。
同世代のことならなんとなく作れるかもしれない。
上の世代はなかなかリアリティがないから作りづらい。
しかし、その人が自分たちと同じ頃どうだったか想像すると、
作りやすいかもしれない。
「父さんの若い頃はな」なんて台詞がドラマによくあるのも、
実はこうしたことを考えたものが、つい漏れてしまったやつなんだね。
こんな下手なセリフは手口がバレバレだぞ。
点は、
同じ絡み方しか出来ない。
何回出てきても同じ反応だ。
それはロボットであり人間ではない。
人は線である。
前こうだったから今度はこうだ、があるし、
それは初手からなのだ。
その「前」を作っておかないから、
出落ちで終わりなのだ。
何も壮絶でドラマチックな過去話を作る必要はない。
本編で使わない前提だからね。
行動や台詞の前提でそれらを感じられる何か、
程度に作っておくと、
その人物は点で生きている、反応ロボットでないものになるだろう。
ちなみに子供は?
それがないよね。
つまり子供は点なのだ。
成長していけば線になる。
大人とは、すでに線の途中の人である。
2020年09月18日
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