2020年09月17日

【薙刀式】僕の求める速さとはなんだろう

僕はタイピング上級者になりたいわけではない。
楽さと速さは完全な比例関係にないのではないかと疑っている。
(ただし検証の仕様がないかもだ)


短い文を書くとき、
なるべく抵抗がないものがいい。

自作キーボード界隈では、
「バターに熱したナイフがすっと入る感じ」
とよく形容されることがあるけど
(リニアのルブの感覚)、
言葉の海に手を突っ込んで、
自分の思考にすっと合う感じが、
まずは僕の求める「書く道具」の条件だと思う。

薙刀式はとくに、
人差し指と中指を中心に(8割)、
親指を添え指して、
薬指と小指は補助程度に使う感覚だから、
「言葉の海に手を突っ込む感覚」
という表現が似合うと思う。

微視的に見たとき、
自分の考えが、文字として確定していく、
その手と思考の一致加減が、
たぶん僕の求める速さだ。

前置シフトのように2打制にせず、
同時押しを多用するのは、
そうした微視的速度だと思われる。

1モーラ1アクション、
頻度の高いカナは単打、
またはシフトであっても中央付近、
という感覚が、それを後押しするのだろう。
ついでに、左右独立で見たときに隣鍵を渡っていくような運指の感覚も、
言葉の海に手を突っ込んで何かを取りだす感覚に近いのかもだ。


薙刀式は長距離用だといいながら、
実のところこの水際の感覚が、
一番大事なのではないかと思う。

同時押しには規則性があるから、
記憶負担というか認知負荷が少なく、
脳を圧迫しないのもいいと思う。
(この容量が多い人は、
不規則配置だとしても清濁別置などを使えるのだろう)

逆にここで負荷がかかるようでは、
長距離などとても望めまい。

マラソンのフォームがシンプルで無駄が削ぎ落とされたように、
薙刀式の負荷はとても小さい。
(僕にとっては。他の配列でそう感じる人もいると思う)


長距離で問題になるのは、
そのフォームで走り続けたとき、
どこかにずっと負荷がかかり続け、
破綻が生じてしまうことだと思う。

つまり満遍なく使われて、
強いところには強い負荷がかかり、
弱いところは弱い負荷がかかり、
理想的には全てが同等に疲れることだと思う。
(背理法的には、
逆にどこかが集中的に疲れるならば、
そこに穴が開いた時点で作業は終了だから)

僕が左薬指の調整ばかりしているのは、
それが僕の弱点であるからで
(そしてほとんどの人の弱点でもあろう)、
その負荷を下げすぎると、
こんどは別の指の負荷が代わりに上がって、
そこが疲れてしまうからだ。

うまくそれらを均すような、負荷分布を探しているというわけだ。


「速い」というイメージは、
マシンガンのように猛烈にキーボードを叩き、
何かをごぼう抜きにするようなビジュアルを想像させる。

そうではなくて、
まるで動かないかのようにフォームは小さく、
ずっと似たような動きをキープし続けても動きは変わらない、
細く長く合理的に進んでいく動きだ。

剣の達人的なことではまだ足りない。
剣の達人が駅伝をやるような感じか。


配列の客観的な評価には、
打鍵数や打鍵効率やヒートマップがあると思うけど、
そうした客観的な数値に出にくい、
「自分の思うことがすっと出やすい」
「それをずっとキープし続けて疲れない」
が、
僕には重要だと考えている。

またqwertyローマ字を悪例にだすが、
自分の思う言葉を出すのに手数が多すぎて、
しかも変な指の分布を強要されるのは、
僕の書く道具の理想では全くなかった。

ペンのようにさらさら書ける道具が欲しかった。

それが僕の求める速さだ。


結果的に、作業量が多くできるとか、
それで収入アップとかはあまり興味がない。
ノイズの入りづらいクリアな思考を、
配列によって長時間キープし続けられて、
しかも疲れないことが、
僕にとっての重要なところだと考える。

「速い」というとき、
自分の言葉がすっと手の動きになる速さと、
それがアップダウンが少なくずっとキープできることと、
二つが重要な気がする。

僕にとって薙刀式と、自作キーボードは、
そのように調整されていると思う。



だからタイパーの騒がしいモーレツ打鍵は、
僕にとって真逆の理想だ。
音がしてる分エネルギーが無駄になっていると思う。
「まるで山に山菜がキノコでも採りに行くように、
野武士を殺してくる」
というような台詞が「七人の侍」にあるけど、
そんな感じが僕の理想の速さだ。

だから、○字/○時間とか、
○字/秒とかは、
ほんとはどうでもいい。
測定の仕方がそれしかないのが問題なだけだ。

指が問題ではなくて、
頭と字が問題なわけで、
指はそのうち消えたい。

そんなふうに薙刀式はあるべきだと思う。


たとえば親指シフトをめぐるツイートを引用すると、
> 久々に親指シフトでツイッターやるとやっぱこれは入力速度がはやいわ
と、
> 前に日本語のデータ入力業務の単発の仕事をしていたことがあって、どんだけ頑張ってもかな打ち入力の人の量には追いつかなかったです。
と、二つの速さのことが、
同じ「速さ」という言葉で混同されて広がっているように見えた。

僕はこのふたつは、別の速さだと思っている、
ということだ。
posted by おおおかとしひこ at 20:02| Comment(0) | カタナ式 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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