この力加減が難しいのだ。
ストーリーにとって一番簡単なのは、
「全員死ぬ」とか、
「全員の目的の、前提だったものが全部無効になる」とか、
「何の意味もなかった」
「全部夢でした」
とかの、
全部ひっくり返して、ダメにすることだ。
上手なバッドエンドはそれに意味を見出すように作ってあるが、
下手なバッドエンドは、
逆張りのひっくり返しだけに終わってしまう。
どんでん返しは、
それまでのストーリーに夢中になっていればいるほど、
驚くので、
ついやってしまいたくなる。
しかし、
これまでのことを全否定するのは簡単だから、
「台無しにする」になってしまうことが多い。
それは下手な壊し方である。
上手な壊し方とは、
これまでのことが全否定されたが、
そのことによって、
次により力強い何かが展開するときである。
つまり、死が再生の前準備になっているときを言う。
下手な人は壊しておしまい。
上手な人は壊すことで次をもっと面白くする。
あああそうだったのかーなるほどー
これは面白い展開だぞー、が正解で、
あああ壊れたー何もなくなったー、鬱ー死ぬーは、
間違いだ。
たとえば。
ベルセルクの「触」は、
壊し過ぎて次を作るまでに二十年かかっている。
やりすぎたね。
でもまだ一本の線がグリフィスに向いていると信じたいが。
あしたのジョーの力石の死は、
壊し過ぎて復活しなかった。
ジョーのその後の生き方は、
完全復活どころか死に魅入られてしまった。
壊してしまってはだめだ。
再生の為の死こそ、一番面白い。
壊すのは簡単で、つくるのは難しい。
つまり、壊れるほどギリギリまでやって、
生まれ変わらせるのは、
実は一番腕がいる。
2020年09月21日
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