2020年09月27日

できているストーリーと、感情のダダ漏れと、テーマ性

理想はこれだと思われる。
この三角形が成立しないと、
完全ではないと思う。


できているストーリーというのは、
マイナスから始まって、きちんとプラスで終わることだ。
無理や矛盾やご都合主義がなく、
自然で合理的で最短手順になっていて、
しかもそれがパズルのように緻密に組み合わさっていて、
「こうすればそれは解決する」を、
見事に示したものであるといえる。

アクシデントすらリアルで、
現実はそのようなアクシデントをも利用したりする、
というところまで行くと完璧だ。

これはパズル的な要素だと僕は思う。
だから、
「おみごと」「できている」「うまくはまった」「完璧」
なんかが感想になり、
「無理がある」「できてない」「ここおかしい」
「あれどこいったん?」「これがあるならあれはいらんだろ」
が指摘や批判になるだろう。

どちらかというと、理性的、論理的、理系的な考えを必要とする。


感情がダダ漏れになるのは、
私たちがそのストーリーを見るための、
必要条件ではないかと思う。

つまり、クールで感情を表に出さないものよりも、
人懐っこくて、感情が現れて、
泣く時は思いっきり泣き、
驚く時はたまげて、
嬉しい時はほんとうに嬉しいようにすると、
その感情に人は同調する。

悲しいことがあったあと、
それを嬉しさに転じられたら、
ほんとうによかったねと思う。

他人のどうでもいい感情から、
それがまるで自分の感情だと思えるようになると、
そのストーリーの冒険は、
「自分の冒険」でもあるようになる。
そのドキドキワクワク、成功した後の達成感は、
まるで自分がやったことのように思える。

感情の種類はなるべく沢山あるとよい。
ひとつだけだと飽きてしまうからである。
目まぐるしく変わる感情は、
人のナイーブなところに沢山触れて、
最終的にそれがハッピーエンドならば、
大切な思い出にすらなるだろう。

なまもののような感情こそが、
人を惹きつける。



テーマ性は、
「で、結局それはなんだったのか」
に答える一行のことである。

私たちは、
意味のないことは、意味のないことだと思ってしまうからだ。

それがとても意味のあること、意義のあることだと分かったら、
「そのような意味でこれは凄いことだ/大切なことだ」
などのように、意味付け、ラベリングすることができる。

パズルのように組み合わされた因果関係、
怒涛のように流される感情の結末、
それらを統合する、
「ゆえにこれはこのようなことだったのである」
という意味によるラベリング。

これらの三位一体が揃って、
はじめて名作たりえる。


この意味を付与するには、
ストーリーの構造から隠喩されなければならない。

否定された価値と肯定された価値は対句になり、
変化する前の捨てられたものと、
変化した後の得たものは、対句であるべきだ。

そのようなことがストーリー構造にあって、
はじめてこれはこのような意味があったのだ、
と「わかる」ことになるからだ。

Pは良くなくて、Qは良いのだ、
この怒涛のような感情はただの潰えて消えてゆく感情ではなく、
ここにたどり着くための意味のある旅だったのだ、
と、納得が訪れることが必要だ。


それがないものを見ればわかるけど、
「ほんで、これなんやったん?」となるものは、
結局何にもなっていない。

たとえば「フロムダスクティルドーン」というホラーがあるけど、
ただ騒いでギャーギャーやって、朝が来ればおしまい、
というだけでは、その2時間がなんだったのか、
なんの意味もなく終わってしまう。

それは金曜の夜クラブで騒ぐことと何が違うのかということだ。

あの金曜の夜のクラブは、
僕の人生でおいてもあまりに特別で、
このように一生記憶にとどまることになったのだ、
なぜなら、
とならなければならない。

そうでなければ、
そのストーリーは残す価値などないからだ。


実のところ、
その間だけ空騒ぎしておしまい、
というどうでも良い映画もたくさんある。
ある種の瞬間風速で金を稼ぐやり方もある。
それは、興行としては儲かるかも知れないが、
レベルの低い興行だと思う。
良い興行とは、それだけでない何かを、
繰り返しでもいいから、何回もやれるものだと思う。
なぜなら、その方が人に信用されるものだからだ。

ワンナイトは気持ちいいが人として信用されない。
永遠の愛は人として信用される。

おそらくその違いだろう。



ということで、
名作には、
できているストーリーと、
感情のダダ漏れと、
テーマ性が必要である。

そしてそのどれかもしくは全てが、
時代の何かと噛み合った時、
ヒットが起こると思う。
posted by おおおかとしひこ at 00:12| Comment(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。