2020年10月01日

【薙刀式】キーの同じ所に毎回指が当たるわけではない

イメージ: 安定して同じ構え、安定して同じ指の動き。
結果、キーキャップの同じところばかりがすり減る。

現実: 当たり方が毎回違う。角度も場所も。
結果、いろんなところがすり減る。
中心極限定理的には、重心はあるが分散値もある。

ということが分って来た。


イメージだと、どんな言葉を打つときも、
指は同じように機械的に動き、
同じように打ち、同じように戻る感じ。
たしかに理想の打鍵スタイルはそうかもしれない。
他の指の影響を受ける指だとしたら、
理想的な打鍵を出来ないだろう。

しかし現実には、それは無理だと思う。

タイパーや楽器経験者は可能かもしれないが、
ほとんどの人にとっては、
「毎回当たり方が違う」がリアルだと思う。

簡単な例は、
JKとNKで比べることができる。
薙刀式だと「あいたい」で確認するとよい。

JKのKの中指の当たり方と、NKのKの当たり方は違うと思う。

NKのほうが手首が回転している。
これは人差指伸ばしをするために、
手首を先立って回転しているからで、

元に戻しながらのKになるために、
中指がより立った状態で、
横方向に滑りながら当たることになると思う。

これをどっちのKも同じ当たり方のフォームにすることが、
打鍵を鍛えることなのだろうか?
僕にはよくわからない。

で、分らないなりに、
「どっちの指の当たり方でも不快じゃないキーキャップの形をつくろう」
と思って、3Dキーキャップに手を出したわけだ。


たとえば中指下段はとても打ちづらいキーだけど、
キーキャップの形を工夫することで、
どういう打鍵になっても打ちやすくするような、
形をつくることはできるのではないかと思ったからだ。

工業的に同じ形のほうが安いけど、
指の形や長さや器用度などの違いで打ちづらいキーが出てくる。
それを打ちやすい形にすればいいじゃないか、
と単純に思ったわけだ。


エルゴノミクスでよく言われる、
「手の形に沿うように」の原則は分るけど、
これって同じ軌道で指がキーに当たることを前提としていると思うんだよね。

うまい人はそうかもしれないが、
僕はそうじゃない。
そして道具は、下手な人にうまく下駄をはかせるためにあると僕は思う。



ということで、
僕の3Dキーキャップは、
「どういう文字列の連接の、
どういう違う当たり方をしても、
打ちやすい形」
を追求しているわけだ。

お椀型のキーボードや、
お椀型の3Dキーキャップは、
そこまで考えていないと思うんだよね。
毎回、同じ指の同じキーは、同じ軌道を描くことを前提としているような気がする。

(そもそも突き刺し系の打ち方が前提で、
僕みたいな撫で打ちは想定していない説)

そうじゃなくて、
(特に撫で打ちでは)言葉や連接に応じて、
指の軌道は微妙に、あるいはダイナミックに変わっていくと思う。
それを同じに制御する必要がないキーキャップの形を、
僕は目指したのだと思う。



ということで、
本日、最新プリントしたテスト版が着弾しました。
それで今書いているんだけど、
すこぶるよい。
今までで最高の出来で、もう発売したいくらい。

ただし今までの経験から、
打ったことのない連接を打ってみたりすると、
角度が微妙によくなかったりするので、
そうした言葉をつぶすために、
長いこといろんな文章を書いてみて、
その感触を確かめてからにしたい。

つまり、今まで時間がかかりすぎていたように見えるのは、
「いろんな角度から指で押しても、
うまく力を受け止める形と角度はどういうものか」
を詰めていたと言えるだろう。
完成に近づいたときに、自分のやってきたことの意味がわかる、
ということはよくあるよね。


粘土でつくって、
原稿を書きながら盛ったり削ったりできれば最高だったのかもしれないが、
それだと3Dプリントができないという欠点がある。
なので何回もプリントしては微調整、
という方法論を取らざるを得なかった。
しかし今回の版で、ようやく全キーが整って、
「おっ」というものになったので、
慎重に実戦テストしていきたい。

今のところ何も問題がなく、
怖いくらい順調で、早くこれを触ってもらって意見を聞きたいくらいだ。
早くキーボードイベント復活しないかなあ……。


「指に吸い付くようなキーキャップ」
が理想だったが、
それは静的に吸い付く形をしているのではなく、
「ばらつきのある運動でも、
すべて吸収するような形。
それを運動の中で吸い付くように感じる」
というのが、正しいように思った。

と、いうことでいましばしテストしてみます。
posted by おおおかとしひこ at 20:36| Comment(5) | カタナ式 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
rev2は全てのキーキャップの向きが違い、繊細に調整されているようですが、miniaxeレイアウト専用(格子配列・36キー)になるのでしょうか
Posted by とおりすがり at 2020年10月02日 02:10
>とおりすがりさん

汎用性があるかは、これからテストしようと思っています。
予測ですが、MiniAxeとレイアウトが離れているほど使いづらいかもです。
レイアウトテストのためだけに自キ買うのはなあ、と思っているため、
図面を手に入れてキースイッチ置き場を3Dプリントして試そうかなと。

とくに親指キーの斜め具合はめちゃくちゃ調整したので、
回転してる系の親指は合わないだろうなあ…
それ用にいくつか親指パターンを同梱する手も考えましたが、
そうすると基本セット1万超えちゃうので、テストしてから考えたいと思っています。

36(3ダースなのでピースを立体的に隙間なく詰められる)個の現状でも気軽に買える値段にはならない(予測価格8200円)ので、
自己責任で試してねと言えなさそう…

直接貸すんでその場で交換してみて!おれも触らして!
ってなるのが一番早いんでしょうが…
Posted by おおおかとしひこ at 2020年10月02日 07:23
>大岡さん

返信ありがとうございます

HelixやErgo42などは期待できそうですね。親指部分のみ使用すれば失敗もなさそうですし。

36キーより増やすのが難しいとなると、市販キーキャップを使う部分との相性も気になりますね。

実験と発売楽しみにしています。
Posted by とおりすがり at 2020年10月04日 21:22
>とおりすがりさん

キーが36より多いキーボード用に、
汎用性の高いDSA的なキーキャップを含んだ、
追加セット版も考えています。
小指外とか、GHより内側用にして、
あとは親指の斜め違いとか(コルネやClaw44くらいまで対応できるのが理想)。

DMMの新レギュレーションだと、
MJFだと1個単価250円弱くらいになってしまうんです…
なるべく安く提供できるように配置の工夫で頑張るしか…
Posted by おおおかとしひこ at 2020年10月04日 21:51
>大岡さん

プリントの際も色々工夫が必要なのですね。大岡さんの成果を安価に、しかも普段使用されていないないレイアウトにまで提供していただき感謝しかないです。
Posted by とおりすがり at 2020年10月06日 01:28
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