2020年10月17日

【自キ】涅槃イエローのレシピ

現状最高のキースイッチができた。

始動は軽く、底打ちが重くてぶつかりがない非リニア性能、
(ここまではふかふか銀軸で実現していたが、さらに良くなった)
軸の直進性がすごく安定していて、
なおかつ静音。

名前をつけないと認識しづらいので、
「涅槃イエロー Nirvana Yellow」と命名。

以下レシピ。


高級スイッチの結論は、60g前後のバネだと考えられる。
Tealios、Cream、Inkシリーズ、Durockなどなど。
それはチェリーのビンテージブラックが理想系なのかもしれない。
一度触ったが、なんとも言えない高級感があってよかった。
だけど、
僕の書く長い文章に、60g前後は重すぎる。
ざっくりだけど、30g前後(15g〜35gの変荷重で運用している)がいい。

だけど、これくらい軽いバネだと、
底打ちの反発が大きく、指が痛くなる問題があった。
清音軸のゴムクッションでも足りず、
そもそもグネ感が好きじゃない。

そこで、ボトムハウジングにクッション的な改造を施す。
始動はリニアの軽いバネ、
底打ちをバネ以外のクッションを用い、非リニアの底打ちにするイメージ。


これまでのベーススイッチはKailh Speed Silverだった。
スピードスイッチでアクチュエーション、トラベリングともに短く、
パンタグラフとは言わないもののそこに肉薄している。
これにシリコンシートを入れ込むことで改造していた。
全体に柔らかい感じのハウジングで、底打ちも嫌じゃないのがよかった。

しかし欠点があり、軸のぐらつきがひどいこと。
これを軸の直進性重視にアッパーコンパチにできないか試行錯誤し、
以下のようなレシピを得た。


【ベースになるスイッチ】

Gateron Ink Yellow。

・スピードスイッチでトラベリングディスタンスが少ない
・そもそもステムの直進性が高いInkシリーズ(スイッチフィルム入れるけど)
・キーキャップのぐらつきが少ないBOX軸
・POMステムで滑らか(もちろんルブるけど)

がその選定理由。

ただし欠点があり、
・ハウジングが硬質で跳ね返り感がキツく、音もキツイ
 (それがもともとの爽快感にもつながるのだが)
ため、これを静音化、マイルド化していくことがメインになる。

目的は、底打ちの衝撃を0にし、
田んぼの中に足の指を入れるような感触にすること。


【材料】

Gateron Ink Yellow
EVAシート2mm厚(ハンズで入手。200円くらい。色はスイッチに合わせて黄色)
銀色のダクトテープ(ダイソーに売っていた、Nikkan製。100円)
マスキングテープ(ハンズで入手。これも100円程度)
0.4mm厚の透明シリコンシート(モノタロウで通販。硬度はジェルっぽい感じ。数千円くらい)

ルブKrytox GPL 205G0
バネルブKrytox GPL 105
DESフィルム

プログレッシブスプリング72P
Kailh choc用バネ30g、25g、20g

※入手先が書いてないものはすべて遊舎工房で入手

【工具】
ピンセット、カッターマット、カッター、定規
チャック袋(バネルブ用)
爪楊枝(テープを貼る時に使える)
マイクロアプリケーター(ルブ用)


【レシピ】

0. スイッチを開ける。
 (ピンセット2本挿し、テコで開けられるよ)

1. EVAシートを2mm立方に切る。
 ボトムハウジングの中の、ステムの軸が入る穴の底へ突っ込む。
 これだけで底打ちがスンって柔らかくなる。
 リニアの底打ちは、指に衝撃がある。
 これを、始動をリニア的に、底打ちをまろやかに0に吸収することが目的。
 ただ、バネを軽くするとこれでも硬く感じることがわかった。

 この状態で、さらにシリコンシート0.4mm厚を1.5mm角に切り、
 EVAの上にさらに穴に入れると、
 底打ちのゴムっぽい硬さがとれ、柔らかくなることが判明。
 この2mmという数字を0.3mm単位で変えると、柔らかさと硬さのバランスを変えられる。
 そもそも正確に切ることが難しいので、色々試されたい。


2. ダクトテープを短冊状(長さ5mm巾2.5mm)に切る。
 ボトムハウジングの中の底面(ステムが下に接触するところ)に貼る。
 ステム穴の左右二箇所。
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 銀色のダクトテープを貼る箇所。
 ステム穴の中に黄色のEVAが仕込まれていることがわかる。
 EVAがメイン衝撃を吸収するが、稀に強い力で底打ちしたときに、
 硬いハウジングで音鳴りがすることをダクトテープが防ぐ。

3. トップハウジングの、ステムの両肩が上面に接触する部分にダクトテープを貼る。
 短冊状で、5mm×1mm程度がよい。
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 写真だと向かって右が理想。
 左は端がステム通過空間にはみ出てるので、摩擦抵抗になるためやり直し。
 キーがオンになり、戻ったときにぶつかり音が鳴る部分を静音化できる。

(10/28追記:
これをダクトテープではなく、ゴム状に固まるタイルの目地材でやると、
劇的に改善することがわかった。
http://oookaworks.seesaa.net/article/478119119.html?1603851574
を参照)


4. ルブ。
 ボトムハウジング: ステムとの左右接触溝、ダクトテープ含む底面、ステム穴の中
 トップハウジング: ステムが触れる内側側面4面すべて
 ステム: トップハウジングに接触する側面4面

 なお、ルブ後にテープは貼れない(ヌルヌルなので)ため、
 テープ類を貼り直すなら油をすべて拭ってからになるぞ。

 ボトムハウジングのルブはいつものやつだが、
 トップハウジングとステムの側面ルブは僕のオリジナル。
 撫で打ちをするとき、横方向に弾き、パチンと側面同士がぶつかり鳴ることを防ぐ。
 突き刺し派はいらないかも知れない。

5. バネの基本は、プログレッシブ72P(始動35gくらい、底打ち70gくらい)。
 これによって底打ちがまろやかになる。
 EVAがさらにダンパーになり、さらに強い時はダクトテープで吸収。

 とくに中指は強い力を持つのでこのバネが良い。
 ちなみに僕の変荷重セッティングは以下。

 ○○●◎◎ ◎◎●○○
 ○○●◎◎ ◎◎●○○
 △○●◎◎ ◎◎●○△
     △ △
 ●プログレッシブ72P
 ◎リニア30g、○リニア25g、△リニア20g

 バネ鳴りを防ぐために、バネルブもしておこう。

6. DESフィルムを仕込んでスイッチを閉める。
 トップハウジングとボトムハウジングの噛み合いを良くしてぐらつきを防ぐ。
 上下逆で作業するとやりやすいよ。

7. スイッチの底が触れる、PCB側にダクトテープを貼る。
 いわゆるバンドエイドMODのダクトテープ版。
 粘りがあるので、底打ちがマイルドになり、かつぐらつかず安定する。
715E7200-FE22-4EB1-AC86-6E463698C8EB.jpeg

 5ピンを避けるようにこうして貼っている。
 もっと器用に切れば広い面積を貼れると思う。


8. キーキャップのステムの、十字穴の中にマステを貼る作業。
 キーキャップ側の軸の底面積程度に小さくマステを切って貼り、
 ステムに一度挿す。十字穴の側面にマステが貼れればOK。
 キツイステム穴ならいいけど、3Dプリントだと安定しないので、
 これでユル穴がしっくりくる。まだ緩いならもう一枚マステ追加。



Kailh Speed Silver×シリコンシートよりも、
軸の安定性が凄いのでこちらがオススメ。
ただしコストも手間も跳ね上がる。
(1スイッチ30分はかかるかな)

しかし、軽自動車とベンツのハンドリングくらい変わります。
安定性が違う。


さらにイエロースイッチは色がドギツイので、
見た目への影響が強いので扱いが難しい。
DESフィルムを挟むことで黒枠が入り、
さらに凶悪なビジュアルになるため、
見た目に気を使う人は悩ましい改造法です…

スピードスイッチかつPOMかつBOXが他にも出れば、
それもこのレシピで改造できるはず。



ちなみにこんな感じです。黄色とグレーがやや強烈…
写真じゃクッションの具合はわからないので参考までに。
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(追記)
清音スイッチとの比較動画撮ってみました。
結論からいうと、Gateron Ink Silent Black、Helios v1より静かでした。
http://oookaworks.seesaa.net/article/478149374.html
posted by おおおかとしひこ at 15:27| Comment(0) | カタナ式 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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