2020年10月10日

上手なトリックを見たので

Twitterのスレッドレベルの文字数なので、
最後まで読むと面白いよ。
https://mobile.twitter.com/kura_ake_tako/status/1314150450359230466

ネタバレ解説は次。


つまり、
「今までいた世界が反転した世界で、
最終的にたどり着けた世界が本当の世界だった」
というオチだ。

非常にうまい叙述トリックだ。
(前提となるものを隠している)


叙述トリックは、壮大なものでなくてもいい。
こうした小さなストーリーでも可能。

そして、この小さなストーリーに対して、
壮大な叙述トリックなので、
相対的に大きなトリックに見えるわけだ。
(もしこれを二時間のストーリーにしたら面白くない。
もっと別のオチが必要になるだろう。
叙述もバレちゃうしね。
ギリギリ、世にも奇妙な物語で行ける程度か?)


「鏡を使って通り抜けられる」ネタと、
「左右の反転世界だった」ネタは、
よく使われるネタである。
これ自体は珍しくない。

しかし「いろんな反転世界へ行き、
戻れなくなる」という展開が新しいので、
その先を読める構造になっている。

「元へ戻れておしまい」だと詰まらないので、
叙述トリックという大ネタを仕込んだのだろう。


おそらく、
これは頭から考えて作ったと思う。

「叙述トリックをやるために何か考えよう」と、
逆から作ったわけではないと予測する。

「実は今までいたと思ってた世界が嘘で、
嘘だと思っていた世界が本当だった」
というパターンのオチ自体はよくあるから、
これをやるために、
「鏡で色々な反転世界へ行き、戻れなくなる」
を逆算で思いつくのはかなり高難度だと思う。

あるいは、
反転世界までアイデアとして出来ていて放置していたが、
ある日オチを思いついて完成に導いたのかもしれない。


このように、
「どうやったらこれが書けるか?」
を分析することは、
とても勉強になる。
「0からどうやって自分は思いつき、完成させるか」
を考えるために、
「どこが芽だったのか?」を考えることはとても有効だ。


しかし、では入れ替わった「私」はどこへ行ったのだろう?
その不気味な感じが現代の怪談のようで、
その破綻すら短編的におもしろい。


テクニック的なことを記しておくと、
「鏡でワープできる」と最初にミスリードを仕込んでいること、
学校にワープして先生に怒られたことや、
足首を捻ってしまったことを描くことで、
「鏡でワープ」を強烈に印象付けていることに注目しよう。
これが分量が少なく、
絵を想像できるものがない、
設定だけの一文だったら、
ラストのどんでんも効かない。

おそらくだけど、ラストまで書いた上で、
冒頭をもっと印象的にするべきだと考えたのだと思われる。
階段の踊り場や、カーブミラーなんて特殊なものを入れ込んで、
先生に怒られたことや足首を痛めたという、
具体的な絵を印象的にしたのも、
あとで調整した要素だと考えられる。

こういったものが上がりから読み取れるかは、
経験が必要だと思う。

「やってる奴だけが、やってる奴のことを理解できる」
みたいなやつだ。


ということで、
短編でもここまで行けるのは、少し衝撃だった。
短編賞があれば受賞レベルだろう。
参考にされたい。
posted by おおおかとしひこ at 14:45| Comment(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。