2020年10月18日

なぜニュースに取り上げられるようなやり方しかないのか

メディアミックスと角川春樹がバブルの頃にやって、
すでに四半世紀が過ぎたか。
かつての宣伝の仕方は、メディアをいくら買うかで決まった。


出稿量こそが宣伝だった。
それに比例して客が来た。

不景気でしばらくになるが、
宣伝費が底をついている。
だから自前で宣伝しなくても、
「ニュースに取りあげられること」が宣伝の代わりとなる、
という考え方が出来てきた。

つまり、ニュースが宣伝だ。
かつてはPR会社を通じてニュースを買っていたりした
(ステマ)が、その金ももうない。
だから、自然発生的なニュースに頼らざるを得ない。


だが、ニュースは所詮ニュースだ。
数秒数十秒、紙面でもわずかで言えることしか言えない。

しかもセンセーショナルでないと意味がないから、
わかりやすくセンセーショナルでないと取りあげない。

だから、
人気芸能人が過激な役とか、
人気原作を実写化とか、
人気バンドが音楽を担当とか、
人気なんとかと人気なんとかのコラボしか、
ニュースに取り上げられない。

コロナには陰謀があった、その陰謀を追うとか、
大統領選挙で行われた不正とか、
仮にセンセーショナルな内容を考えて、
話題を狙ったとしても、
実のところニュースは取り上げない。

ニュースバリューは、内容と関係ないところに発生する。

内容を取り上げたら特定の商品の宣伝になってしまうからだ。

(よほど社会に役に立つ発明ならば報道の価値はあるが、
物語の役に立ち方は、新商品のそれではない)



ということで、
内容と関係ないところが企画だと思われ、
「(既知の)〇〇と〇〇が××する」
が企画だと軽く信じられている世の中になった。

それは既知のものの組み合わせで、
既視感しかないぞといっても、
通用しない。

既視感があることは安心感であり、
それはニュースバリューがあることだからだ。

ニュースとは、「既知の何かに何かが起こったこと」でしかなく、
「未知の何か」は未知としてニュースで取り上げづらいのだ。



何が間違っているのか?

ニュースで取り上げてもらうことで宣伝されようという、
スケベ心、よこしまな心である。



本来、
このような新しいシチュエーション、
このような新しい動機、
このような新しいタイプの仕掛け、
などの、
物語そのものでの宣伝をするべきだ。
(かつての映画の予告編はそれに満ち満ちていた)

それをする力がなくなったから、
ニュースで取り上げてもらうガワだけが企画になってしまったのだ。

だから映像による娯楽、
内容でドキドキして次が楽しみになるもの、
終わったら本当に満足するもの、
つまり映画やドラマやCMは、
もう死んだのかもしれない。



主演が誰、〇〇な役、
なんてニュースだけを垂れ流すニュースがわるい、
それにしか反応しない民度がわるい、
というのは簡単だが、
じゃあどうすればニュースの質を上げ、民度を上げられるのかは、
実際のところよくわからない。


物語というのは最後までみてはじめて価値があるものであり、
見る前に価値をネタバラシすることが出来ないという、
原理的に致命的な欠陥を抱えている。

「これから見る物語が名作である」という保証は、
そのブランドでしか事前に測ることができない。
(予告編はその保証をしようとしていたが、
嘘予告編なんていくらでも作れるからね)


かくして、
内容などどうでもいい、
ニュースバリューがあるだけの企画が、
現場で「これはニュースに取りあげられるぞ」
なんてほくそ笑まれながら、
制作へ進んでいく。

現場で、「こんなんじゃ面白くもなんともないから、考えなおし」
なんて声を聞いたのは、
十年くらい前かもしれない。


最近、
しょうもない企画作業をやって、
内容よりもニュースに取り上げられるかばかり気にして、
肝心の内容がすごくつまらなくなっていく体験をした。

幸い自分の企画ではなく、
同僚の企画がそのように変形していったのだが、
なんというつまらなさよと嘆いても、
「これはニュースに取り上げられるぞ!」しか鼻息を出さない人々に、
説教しても始まらないので、
放っておいた。
ああ、出会う人を間違えたとそっ閉じするしかない。


金がない→客が入らない→宣伝できない
→タダで宣伝されるやつ→内容がない
→ブランド低下→客が入らない

のループが、回っている。
金は回っているのかしら。
回っているのなら、経済は回るのだろうか。
まあいずれ死ぬよねこれ。



それと、面白いストーリーというのは、
ほぼ関係がない。
面白いストーリーを書き給え。
それだけで売れるやつをだ。
posted by おおおかとしひこ at 00:23| Comment(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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