2020年10月28日

登場人物の表記

脚本では独特な方法があるので、書いておく。


その登場人物の名前を観客が知るのは、
どのような方法だろう。

音声と文字がある。
映画では圧倒的に音声だ。
誰かの呼びかけで使われることが一番多いのでは。

だから耳で聞いた記憶が重要だ。

文字表記はどうか。
手紙や書類、ラインの文章、名札くらいでしか現れない。
むしろこうしたものは避けたほうがいいくらいだ。
「○○って誰だっけ?」と混乱を招きがちだ。
音で聞いてたのに、文字で書くとその漢字?というやつも良くあるよね。
「たけし」が武なのか岳二なのか剛士なのか猛志なのかで、
「えっと誰?」感が変わってきてしまう。

小説や漫画では、音声がないからこそ、
文字情報が「名が体を表す」になりがち。
東堂さんは大抵頭のいい先輩で、
伊集院はお嬢様だろう。
現実には存在しない名前も、小説や漫画ならではのキャラの立て方だろう。
花京院やそもそも荒木飛呂彦も、
架空の名前の面白さだ。

これはあくまで、対観客で意識すること。
凝った名前を映画ではつけてもダメだ。
音で聞いてパッとわかるべきだ。
混同を避けるのも当然だろう。


で、本題。
脚本表記上のテクニックがある。


一文字、二文字、三文字の名前を使い分けることだ。

谷、原、森、杏、舞などの個性的な一文字。
高橋、田中、陽子、などの一般的な二文字。
佐々木、長谷川、美代子、恭一郎、などのちょっと特殊な三文字。
あるいは、わざとひらがな表記、カタカナ表記の名前にするのも区別がつきやすい。
ジュン、もも、などなど。

メイ、ユウ、トウマ、など、全員カタカナ系のは、記号的中二的でかっこいいが、
脚本表記上はとても区別しづらいのでおすすめしない。


で、文字数が効果的なのは、実はセリフの部分。
脚本表記では、カギカッコの前は三文字で揃える習慣がある。
(四文字以上はそのあとにカギカッコ)
その表記をスペースを用いてこう書くと、区別がつきやすい。

高 橋「」
 森 「」
長谷川「」
も も「」
マジュニア「」

などのようにだ。

こう書くと、
高橋 「」
田中 「」
神谷 「」
土井 「」
のようなものより、ずいぶんと誰の発言かビジュアルでわかりやすい。

ほんの小さなテクニックだけど、
結構効くので、知らない人は覚えておこう。
僕ははじめてそういう原稿を見たとき、目から鱗だった。


実は2ページ目の登場人物表を見るだけで、
そういうことに目端が効いてるかすぐにわかる。
姓、名で登場人物名を書くよりも、
本編の表記で書いてしまうほうが、印象がわかりやすいと僕は思う。


あと、色や数字は、その作品内に一人、
と決めとくと印象的だよ。

赤井を一人混ぜるのは良いが、ほかに青田、緑川なんかが登場するとわかりにくくなる。
七尾を一人混ぜると目立つけど、康二と三郎と四方田を入れるとわかりにくい。

季節もそうか。
夏川を一人混ぜると目立つが、秋山と冬彦をまぜるともう分からなくなる。

あくまで目安だけど、
大事なテクニックだね。



ネーミングはその作品の顔のようなもの。
本質にはまったく関係ないガワなのだが、
全員がそのガワを通じて作品を見る、大事な入り口だ。

ちなみに僕が今書いてる話では、
三文字かつ数字入りの十文字さんが、
色々活躍する。

鬼滅の登場人物名は凝りすぎてて覚えづらいよな。作者名もこじれてる。
posted by おおおかとしひこ at 21:01| Comment(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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