おなじキーボードという言葉を使うとはいえ、
文字を書くキーボードと、ピアノは全然違う。
しかし同じところもある。
そうした議論をしてみよう。
超絶技巧と脱力奏法
https://www.cherry-piano.com/pages/3359479/page_201911061049
がとても面白かったので。
そもそもキーボード(この表記をするときは文字を書く道具とする)と、
ピアノは、たくさん違うところがある。
キーボードはオンとオフだけ考えればいいが、
ピアノは打った音の強さが音色に必要。
キーボードは決まったキーは決まった指で押すから、
「指の担当キー」が一対一に決まっている(例外あり)が、
ピアノはホームポジションから離れ、
指の担当鍵も、鍵の担当指も決まっていない。
ピアノは道具、打鍵姿勢が常に同じだが、
キーボードは規格が決まっていない。
OSやキーボードによって違うし、モバイル環境では机と椅子は常に違う。
一般的な机はピアノより高いため、
殆どのキーボードは前腕が水平にならず斜め上げ気味になる。
(前腕を水平にするならば、椅子にものすごく浅く座る腰に悪い姿勢になる)
ピアノは手首を浮かし、前腕は水平に、指先を突き刺すように打つ。
キーボードはその突き刺し派と、撫で打ち派がいて、
手首を付ける付けないの派閥にも分かれる。
ピアノは長くても二時間か。
キーボードは下手したら八時間だなあ。
打ちっぱなしのピアノに比べて、
キーボードは休み休み、考えながら打つ。
ピアノは決まった楽譜を事前に何度も練習してから弾くが、
キーボードは毎回違う文章をアドリブで打つためにある。
ピアノは手元を見るんだろうか?
上記事に貼り付けられた動画は暗譜して弾いてるから、
見るべきは手元なのかもしれない。
それともブラインドタッチが基本なのかしら。
キーボードはブラインドタッチである。
手元を見てたら作業効率が倍以上落ちる。
指遣いも、姿勢も、継続時間も全く異なる両者に、
共通点があるのかな?
上の記事の論点を議論したい。
【ピアニストは遅筋が発達している】
これは目から鱗。
速筋を使わずに、遅筋で弾いてるんだ。
つまりマラソンランナーの走り方で、短距離走ではないんだ。
タイパーはしばしば無呼吸のスプリントだろう。
いや、トップレベルだと遅筋で打っているのだろうか?
ライターはどうだろう。
ストップアンドゴーばかりやっていて、
遅筋を使い続けているわけではない。
散歩する筋肉に近いのだろうか?
データオペレーターは遅筋が発達しているかも知れないなあ。
鍛えられているわけでもないくせに、
大量の文を書かないといけない作家が、
一番ひ弱で手を壊しやすいかもしれない。
【指の脱力】
ピアニストは、底つきですぐ指を引き、
抑え続けるのにアマチュアの1/3の力しか使わない。
ギリギリまで無駄な力を使わないそうだ。
キーボードのモデファイヤ、
あるいはロールオーバーの時の抑え続けている力は、
押下圧ギリギリだろうか?
それともその3倍力を入れてしまっているか?
そのへんは個人でコントロールも出来るし、
キースイッチ改造でギリギリの力にすることも可能だろう。
キーボードはピアノ基準の55gに調整されてきたが、
自作系で軽いバネも追求され始めた。
軽い、たとえば15-30gの手の使い方は、
まだ模索されきっていない。
【ピアニストの使わない指は脱力している】
打鍵する指に力が入っても、
打鍵しない指には力が入っていない状態になるらしい。
アマチュアは打鍵しない指にも力が入ってしまい、
ピーンとなるそうだ。
(そうすると正確性があがるため。
逆にピアニストは正確性を上げるために他の指の補助を使わない)
キーボードでは、使わない右小指を伸ばしたまま打つやり方がある。
バランサーというかスタビライザーというか、
尻尾のような役割というか。
ピアニストはそれをせず指単独でやる方針なのだな。
だから疲れないのかもねえ。
【腕を下ろす時に、伸ばす筋肉でなく、縮める筋肉を抜くことで落とす】
これもすごい。脱力は腕にまで渡るわけだ。
これは手首を浮かしたまま腕全体で打つからだろう。
キーボードも、指先の筋肉だけで打ってると思われがちだが、
実際には前腕、肘、上腕、肩、背中と、
色んな筋肉を使っている。
ただし抜くことで打っているようには思えない。
今度意識してみよう。
手首をつけた状態でも可能なのかは分からない。
【体幹近くの筋肉をよく使う】
これはすべての運動で言われてることだ。
指先より腕、腕より肩の筋肉をよく使うそうだ。
キーボードでも、慣れてくると前腕や上腕、肩のほうが疲れるものだ。
また、正確性をあげようとする練習だと、
体幹から使われるムチのようなしなる動きが身につかないらしい。
ムチのようにしなるがゆえに、その勢いでミスタイプする
(手が滑ってしまうような感覚)はよくあるから、
タイピングでは痛し痒しかもしれないなあ。
【反力を逃すために指を丸め、立てる】
突き刺し派の根拠がこれだろう。
なるほど55g前後の押下圧ではそれが最適解かも知れない。
しかし撫で打ちは、軽い押下圧のときに役立つと思う。
反力を逃す必要もなく、ただ横へスライドしていく感じ。
【事前に音を想起することでタッチを柔らかくしている】
ブラインドタッチでは常にそうだ。
逆に想起しないと叩く指が硬く強くなりがちだそう。
タイピングでも、事前打鍵組み立てができればスムーズだが、
アドリブで打っていくと乱打で強い打鍵だらけになりがちだよね。
ここは共通点が多い。
【独立した4本指、親指の別の使い方】
指の独立はピアニスト特有のもので、
キーボードを打つ人は憧れだ。
指の分解は子供の頃にやらないと無理で、
大人になってからは神経の出来上がりの問題で完璧には無理だそう。
ピアニストは裕福な家庭にしか育たないというわけだ。
キーボードの配列設計では、
独立して動きづらい指、
弱い指の頻度を下げ、
負荷を平均化させる方法が用いられる。
それがどれくらいが妥当なのかは主観による所も大きいが、
薙刀式のような人差し指5割中指3割という極端なものもある。
ピアニストの親指の使い方は、
他の4本指と違い、
他の4本を伸ばしながら、もしくは縮めながら使うそうだ。
このへんは親指シフトがいうところの、
同手シフトの根拠かもしれない。
この影響下にあるキーボード配列では、
親指をシフトキーに使うことが多い。
自作キーボードでは、
親指クラスタにモデファイヤや機能キーを置くことが多く、
直感的にそれは分かっている感じだ。
【独立指はリズムのため】
ピアニストが独立した指を鍛えるのは、
楽譜通りに弾くためである。
一方、キーボードではリズム通りに打つ必要はない。
(メトロノームでリズム通りに鍛える練習法もある)
むしろ、作業リズムに合う打ち方が出来るキーボードや、配列が求められる。
1モーラ1アクションの配列は、
発語のリズムに合う配列だと言える。
(下駄配列、新下駄配列、蜂蜜小梅、あまのあすか配列、薙刀式。
拗音、外来音をのぞき、濁音半濁音に関してならば、
親指シフト、飛鳥配列、小梅配列、TRONかな配列、その他親指シフト系列)
ただし等速度で打つわけでなく、
文章には密度差がある。
また、キーからキーへの連接は、
打ちやすく高速なアルペジオを含む良運指と、
繋ぎづらい悪運指があり、
連接そのものにも密度差がある。
飛鳥配列は語尾は加速しやすい指の並びにしていたり、
新下駄は頻度の高いものは打ちやすいアルペジオにしていたり、
薙刀式は日本語のつなぎに使う言葉にアルペジオがあるようにしたりしている。
月配列では、よく出る音は1打、あまり出ない音は2打にすることで、
総打鍵数を減らして効率を高めようとするが、
リズムに関してはバラバラになるだろう。
qwertyが最も酷く、リズムはバラバラだといえる。
JISカナは全てのカナが単打、
濁音半濁音は2打、小書きはシフトで2打と統一されているが、
それは字面のリズムでしかなく、
文章のリズムではないため、やはりバラバラである。
後発のカナ配列ほど、
文章のリズムと打鍵のリズムが合うように作られている傾向にあると思う。
そして後発の配列ほど、
指が独立していない前提、
全ての指が等価でない前提で、
作られている。
もしピアニストが本当に8本指が等価に独立しているならば、
qwertyで左小指を痛めることはないのかな?
薙刀式で人差し指だけ疲れた、ってなるのだろうか?
ピアニストの意見を聞いてみたい。
見た目も動作も大体同じもの扱いされる、
キーボードとピアノは、
ずいぶん似て非なるもののようだ。
だけどキーボード側がピアニストの打鍵法を参考にできるかも知れないね。
逆にピアニストのブラインドタッチや、
配列や自作キーボードに関する意見は聞いてみたい。
(たぶん重なりは限りなく0だろうが)
ピアニストだからといってブラインドタッチが即出来るわけではなく、
別の訓練が必要だという話は聞いたことがある。
共通の要素がほとんどないという話も。
2020年11月04日
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