2020年11月15日

75P分のリライトを4時間半でこなす

昨日トランス状態でやり切る。
アナログならではの、
デジタルじゃ多分できない分量。


僕はいつも、書き終えたデジタル原稿を印刷して、
その紙に書き込んでいく、
もっともアナログな方法を使う。
デカイクリップで留めている。
それをめくっては直し、
めくっては直していく。

で、アドリブで直していくのではなく、
何日もかけて直す方針を整理してある。
白紙にアットランダムに直すべきところを書き出しておき、
それを10枚以上書いておく。
直すときは一切見ない。
頭の中で「理想の直された形のイメージ」を作り替えてから、
実際の原稿に向かう。

そうでないと、部分に気を取られ、
部分同士の矛盾を来すことがよくあるからだ。


こうしたことはデジタルでやると近視眼になり、
全体の直しがしにくいように思う。

作業的に何が違うのか考えると、
「手でめくる」があるからだと言う結論に至った。


目的のサーチだけだったら、
デジタルの検索が速い?

そうではない。
実は目的のところをサーチするために、
ペラペラめくりながらざっくり原稿を斜め読みしていて、
それが速読的になるのが、
アナログのいいところなのだ。

つまり、一回書いた原稿だからこそ、
ざっくりした構成を、
引いた目で見ながら理解できるのだ。

目的のところの前後を行ったり来たりすることで、
目的近辺の詳しい構成を、
斜め読みで再確認することができる。

これ、なぜかデジタルでは出来ない。
マウスホイールだと出来ない。
ページ単位でめくらず、
間の無駄なアニメーション表示(半分ずつ表示されてるとか)が、
多いからのような気がする。
(PgUp、PgDnは、「今見ている画面範囲単位での移動」であり、
僕らが使いたい「原稿の1ページ単位の移動」ではないのだ。
こんなに使いづらいキーねえぞ)


アナログだとページを手でめくるから、
「何枚めくった」というのが体感で測定されている。
それが「1ページあたりどれくらいの進行ができるか」
という車幅感覚に一役買う。

デジタルエディタだと、
「これくらい書くと1分」の感覚が全然育たないんだよな。
アナログの方が、物理制約があるぶん、
感覚がつきやすい。

デジタルゲームやVRのレースゲームで、
車幅感覚が身に付きにくいことと似ていると思う。


あと人間の指はとても敏感だ。
慣れてくると、
「摘んだ紙の枚数」を感覚で知ることができる。
「これくらいのつまみ加減」という感覚で、
10分、15分、30分くらいは、
アバウト分かるようになってくるから面白いものだ。
ザクッと摘んで、
全体の構成に対する個々の分量が、
目分量(手分量か)でわかるようになってくる。

これはデジタルエディタの、
マウスホイールの感覚よりずいぶん豊かな感覚だ。


逆に、こうした手の感覚が発達してないボンクラは、
デジタルエディタで書こうがアナログで書こうが、
「おなじ」とのたまうと思う。
デジタルがアナログを代替できるなんていうやつほど、
音痴だったりして、もともとのアナログの感覚が弱かったりする。

ちなみに3Dプリントの話だけど、
0.2mm差あたりまでは、
指で触れば一発でわかるよ。
その程度には人間の指は分解能がある。


紙を摘んだ分量の感覚や、
めくる時の速読や紙を持っている感じは、
それだけ情報を豊かに伝えてくる。

だから、
「全体のこの辺でこういうエピソードをやってて良いか?」
という、全体文脈から部分を見やすい。

つまり、全体を見た構成のリライトと、
ミクロの部分を見た砂被りのセリフのリライトが、
アナログだと同時にできる。

デジタルにはこれは出来ない。
イチとゼロの世界なので、
「今この場面を直す」か、
「全体でここがどこに当たるか」しかできなくて、
「同時にそれを把握しながら直していく」は、
やはりアナログの芸当だと思った。


まさかオープニングから一気に第二ピンチポイントまで、
リライト出来るとは思わなかった。
アナログ万歳。
デジタルならば、精々第一ターニングポイントまでで息切れしただろうな。

紙ならば4時間半集中して視線を外さないことはぼくは出来るが、
タブレットを4時間半見続けると目が無理になるだろう。


結局テーブルに紙を広げるのが一番強い。
この感覚がデジタルで行けるのならやるけど、
左手で紙の厚み(今何分か、全体構成内での役割)を感じながら、
右手で直す、なんて芸当は、
どんなキーボードとマウスやポインティングデバイスやエディタでも、
出来なさそうだ。
いくらタブレットや複数モニタや自作キーボードやトラックボールを使っても、
「現物がここにあり、それを触りながらやる」
感覚には勝てないんだなあ。

詳しくなればなるほど、
アナログの有利さに気づいていく。
オンライン会議とほんとの会議くらい違う。

デジタルはコストの安い代替品でしかない。
デジタルでしかやれないことはデジタルが強いが、
アナログでやれることはアナログでやったほうが100:1くらい強い。
posted by おおおかとしひこ at 09:13| Comment(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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