昨日トランス状態でやり切る。
アナログならではの、
デジタルじゃ多分できない分量。
僕はいつも、書き終えたデジタル原稿を印刷して、
その紙に書き込んでいく、
もっともアナログな方法を使う。
デカイクリップで留めている。
それをめくっては直し、
めくっては直していく。
で、アドリブで直していくのではなく、
何日もかけて直す方針を整理してある。
白紙にアットランダムに直すべきところを書き出しておき、
それを10枚以上書いておく。
直すときは一切見ない。
頭の中で「理想の直された形のイメージ」を作り替えてから、
実際の原稿に向かう。
そうでないと、部分に気を取られ、
部分同士の矛盾を来すことがよくあるからだ。
こうしたことはデジタルでやると近視眼になり、
全体の直しがしにくいように思う。
作業的に何が違うのか考えると、
「手でめくる」があるからだと言う結論に至った。
目的のサーチだけだったら、
デジタルの検索が速い?
そうではない。
実は目的のところをサーチするために、
ペラペラめくりながらざっくり原稿を斜め読みしていて、
それが速読的になるのが、
アナログのいいところなのだ。
つまり、一回書いた原稿だからこそ、
ざっくりした構成を、
引いた目で見ながら理解できるのだ。
目的のところの前後を行ったり来たりすることで、
目的近辺の詳しい構成を、
斜め読みで再確認することができる。
これ、なぜかデジタルでは出来ない。
マウスホイールだと出来ない。
ページ単位でめくらず、
間の無駄なアニメーション表示(半分ずつ表示されてるとか)が、
多いからのような気がする。
(PgUp、PgDnは、「今見ている画面範囲単位での移動」であり、
僕らが使いたい「原稿の1ページ単位の移動」ではないのだ。
こんなに使いづらいキーねえぞ)
アナログだとページを手でめくるから、
「何枚めくった」というのが体感で測定されている。
それが「1ページあたりどれくらいの進行ができるか」
という車幅感覚に一役買う。
デジタルエディタだと、
「これくらい書くと1分」の感覚が全然育たないんだよな。
アナログの方が、物理制約があるぶん、
感覚がつきやすい。
デジタルゲームやVRのレースゲームで、
車幅感覚が身に付きにくいことと似ていると思う。
あと人間の指はとても敏感だ。
慣れてくると、
「摘んだ紙の枚数」を感覚で知ることができる。
「これくらいのつまみ加減」という感覚で、
10分、15分、30分くらいは、
アバウト分かるようになってくるから面白いものだ。
ザクッと摘んで、
全体の構成に対する個々の分量が、
目分量(手分量か)でわかるようになってくる。
これはデジタルエディタの、
マウスホイールの感覚よりずいぶん豊かな感覚だ。
逆に、こうした手の感覚が発達してないボンクラは、
デジタルエディタで書こうがアナログで書こうが、
「おなじ」とのたまうと思う。
デジタルがアナログを代替できるなんていうやつほど、
音痴だったりして、もともとのアナログの感覚が弱かったりする。
ちなみに3Dプリントの話だけど、
0.2mm差あたりまでは、
指で触れば一発でわかるよ。
その程度には人間の指は分解能がある。
紙を摘んだ分量の感覚や、
めくる時の速読や紙を持っている感じは、
それだけ情報を豊かに伝えてくる。
だから、
「全体のこの辺でこういうエピソードをやってて良いか?」
という、全体文脈から部分を見やすい。
つまり、全体を見た構成のリライトと、
ミクロの部分を見た砂被りのセリフのリライトが、
アナログだと同時にできる。
デジタルにはこれは出来ない。
イチとゼロの世界なので、
「今この場面を直す」か、
「全体でここがどこに当たるか」しかできなくて、
「同時にそれを把握しながら直していく」は、
やはりアナログの芸当だと思った。
まさかオープニングから一気に第二ピンチポイントまで、
リライト出来るとは思わなかった。
アナログ万歳。
デジタルならば、精々第一ターニングポイントまでで息切れしただろうな。
紙ならば4時間半集中して視線を外さないことはぼくは出来るが、
タブレットを4時間半見続けると目が無理になるだろう。
結局テーブルに紙を広げるのが一番強い。
この感覚がデジタルで行けるのならやるけど、
左手で紙の厚み(今何分か、全体構成内での役割)を感じながら、
右手で直す、なんて芸当は、
どんなキーボードとマウスやポインティングデバイスやエディタでも、
出来なさそうだ。
いくらタブレットや複数モニタや自作キーボードやトラックボールを使っても、
「現物がここにあり、それを触りながらやる」
感覚には勝てないんだなあ。
詳しくなればなるほど、
アナログの有利さに気づいていく。
オンライン会議とほんとの会議くらい違う。
デジタルはコストの安い代替品でしかない。
デジタルでしかやれないことはデジタルが強いが、
アナログでやれることはアナログでやったほうが100:1くらい強い。
2020年11月15日
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