2020年11月26日

風呂敷を広げる覚悟、畳む覚悟

第一ターニングポイント、第二ターニングポイントは、
作者にとってこうではないか、
と最近考えている。


三幕構成論の肝は、
全体を3ブロックにわけること、
それが30分、60分、30分であること、
一幕と二幕の終わりに、
第一ターニングポイントと第二ターニングポイントがあることだ。

それぞれは、
・大きなターニングポイントで強力に次への推進力になる
・それまでをまとめる役割
・センタークエスチョン(それが解決すればこの話は終わりである)を提示する
であることが要求される。

第一ターニングポイントは、
センタークエスチョンを提示し、
セットアップから事件解決へ乗り出すことを事実上宣言し、
これからの展開部に引き継がれ、
第二ターニングポイントは、
センタークエスチョンは、
あと一つのことを解決すればおしまいであるように、
いろいろなことが集約されて、
クライマックスへ引き継がれるようになる。

これらは俯瞰的に見た第一、第二ターニングポイントの役割であった。


で、主人公から見た場合、
第一ターニングポイントは、
「あとには引き返せない、
問題解決の言い出しっぺの決意」の部分で、
第二ターニングポイントは、
「もっとも危険で、もっとも大きなあとひとつの冒険」を意識する部分であることが、
とても多いと思う。


一方、ストーリーを設計する作者にとってはどうか、
というのが本題だ。


ストーリー論において、
第一ターニングポイント、第二ターニングポイントを、
わかっているつもりであっても、
そうしたものを思いつけるかどうかは、
作者次第である。
そして、
思いついたように思っていても、
いざ自分の書いた原稿を読み返しても、
なんだかぼんやりしていて、
エッジの立ったターニングポイントになっていないことは、
とてもよくあることだ。

ということで、
「どうやったら第一第二ターニングポイントをうまく思いつけるか?」ということが、
大事になってくる。

で、
第一ターニングポイントを、
「風呂敷を広げる覚悟」、
第二ターニングポイントを、
「風呂敷を畳む覚悟」
と考えると、
全体に対するそのふたつの役目が俯瞰しやすいのではないか、
と思った次第だ。


第一ターニングポイントのほうが簡単だ。
これから起こる大冒険を予感させ、
二幕へ興味や興奮を渡せばよいからだ。
この時点でテーマを考える必要はない。
もちろんプロット(つもり)としては存在するが、
作中で触れる必要はないだろう。
この時点では、
一幕で描かれた、主人公の渇きや欠損などが、
テーマの逆であることが提示されていて、
おそらくはこの冒険に乗り出すことが、
主人公の内面の問題を解決することになるだろうことが、
予感されていれば良いと思う。
だからこの時点でのテーマは、
「話の与件からすれば、おそらくこうだろう」
という予想の形をとっているに過ぎない。
だから、
「ここから風呂敷を広げるぞ。
その為には、どういう期待を与えるのがおもしろそうだろう?」
と考えれば、
大体はいけるのではないかと思う。


一方、
第二ターニングポイントはとても難しい。

なぜなら、あと一つに焦点は絞られたはいいが、
「それが解決したら、どうなるのか?」が、
見えていないと面白くないからである。
つまり、出口である。
問題が解決したら、平和になるとすれば、
テーマは平和や争いと関係した何かだろう。
問題が解決したら、恋が成就するならば、
テーマは心の内面の何かだろう。
「これを解決したことで、一体どのようなことが言えるのか?」
を、作者は決めなければならず、
それは書く前から大体は決まっていたことだと思う。
(決めずに書くと迷走して困ることになるぞ。
「ファイアパンチ」のようにだ)

しかし、実際に執筆すると、
計画とは微妙にずれたり、
計画では想像もしなかったレベルで細かいディテールが出てくることで、
計画のような大まかなテーマに落すことよりも、
もっと細かいテーマを再構築するべきだということに気づくと思う。

その覚悟を、作者はしなければならないということだ。

あとたった一つの大冒険に絞られた、
それはこれまでの中で、
もっとも危険に満ちて、
しかも達成が容易ではない何かだ、
そしてそれさえ達成できれば、
最初からもめてきたこのことが、決着がつくであろう、
そうしたポイントだけでなく、
「これを解決したことで、最終的にこのようなことが示されなければならない」
という作者のチェックポイントでもあるよ、
というのが本題だ。


そうなっていない第二ターニングポイントは、
とてもぼんやりしたものになるだろう。
というか、
テーマにきちんと落とすには、
第二ターニングポイントの前振りが、
とても重要だということだ。
第二ターニングポイントからクライマックスの結部までが、
テーマを定着させるパートだと思う。
そういう風に考えると、
「さあ、風呂敷をこのように畳むぞ」
と作者に見えていない限り、
第二ターニングポイントは、
きちんとは書けないと僕は思うわけだ。


第一ターニングポイントで、
風呂敷を広げる。
こういうものが広がります、
こういう世界です、
ここに放り込まれて、主人公たちは冒険します、
そういうものがあればよい。
第二ターニングポイントで、
その広げた風呂敷は、
回収へと転じる。
これまで広げてきたことは、
畳む準備に入りました。
ご利用ありがとうございました、当機は間もなく着陸準備に入ります、
のような感じだ。

その為には、
どうすればいいかを考え、
キレのいいスパッとしたターニングポイントに、
仕上げていくといいだろう。

畳むことを考えると、
あれもやらなきゃ、これも触っておかないと、
なんてことを考えてしまい、
ごちゃごちゃしたものになってしまうので、
代表的なこれだけはやっておかないといけないこと、
一つだけを触っておくとよい。
そうすることで、シーンは強くなり、
その象徴が記憶に残り、
それのクリアこそがセンタークエスチョンで、
テーマであると、
整理されるだろう。


ターニングポイントはすなわち整理だ。
あなたは、
どう自分のストーリーを整理するか、
決めなければならない。
posted by おおおかとしひこ at 02:56| Comment(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。