2020年11月30日

ラストカットはヒキかヨリか

職務分離的には監督が決めることだけど、
これくらいは脚本家が考えるべきことかも知れない。

なぜなら、テーマに直結するからだ。


ヒキは、状況。
ヨリは、気持ち。

つまり、
ラストカットは、
その物語が状況で終わるのか、
気持ちで終わるのかを意味している。


ヒキは、後ろ姿で終わる場合と、
主人公がいなくて終わる場合と、
主人公が正面で見えている場合があるだろう。


ヒキの後ろ姿で終わる場合は、
その場から去ってゆく、
次の場所へ向かう(たとえば次の戦いへ。バックドラフトなど)
全てが終わった後の状況を見守る、
その状況に絶望したエンド(猿の惑星など)、
など、
未来、過去、現在、どちらに矢印が向いているかで、
テーマが決まると思う。

ヒキで主人公がいない時は、
主人公がなし得た状況の変化を示して、
それがテーマであることが多い。
(少林サッカーは、少林拳の普及が目的だったので、
それが普及したエンドである)

そこに主人公が正面でいるかどうかは、
どちらでもいいかも知れない。
主人公がいるほうが、ドヤ顔が強いかも知れない。
主人公がいない場合は、死亡を匂わせたエンドかもしれない。
(世界に平和がもたらされたが、
主人公は帰還しなかった。でも私(ヒロインとか)は、
まだ生きていると信じている、とか)

いない場合は、無私の尊さなんかも入ってくる。
宗教じみれば、殉死の死体や墓にみんなが集まってくる、
みたいなこともあるだろう。(デスノートとか)


ヨリで終わる場合は、
主人公のヨリで終わる場合と、
モノで終わる場合がある。

主人公のヨリで終わるならば、
その表情が全てを語るだろう。
ストーリーのビフォーアフターを、
顔が一番豊かに語ると思う。
結果が顔に出ているからだ。
代表的なのはロッキーだろう。
彼のなし得たことすべてが、その顔でわかる。

再会がテーマなら、その再会した二人の切り返しで終わる物語もある。
(パッと思い出したのは、オールユーニードキルかな)
切り返したヨリは2カットに割るのであまりいい手ではないが、
表情が一番良くわかるメリットもある。

ソファーに二人を座らせれば二人の表情を正面から抑えられるので、
ラブストーリーではソファーで座っておしまい、というのも良くある。
(アパートの鍵貸しますとか)
こういう場合はミドルショットで終わるだろう。
二人の関係性も表情も同時にわかっておしまいになる。


モノのヨリで終わる場合は、
それがテーマの象徴になる。
プロジェクトXなんかは発明品の話が多かったため、
「今でもそれは日本人に愛用されている」
とモノのヨリで終わり、その発明の偉大さを示して終わるよね。
理論物理学者の話ならば、発見した数式で終わるかも知れないね。



どう終わるかは、
ストーリー次第だ。
そして、何が一番大事かだ。

そのストーリーで何が一番大事なのかは、
あなたが決めるべきだ。
それがテーマだからだ。

もちろん、監督の方が映像センスがあるから、
あなたの大事にしたテーマを、
より印象付けられるラストカットを、
創作することができるかも知れない。
どちらがよりそのストーリーのテーマを示しているかは、
客観的に議論した方がいいと思う。


ヒキで終わるのか、
ヨリで終わるのかは、
主人公がなし得たこと、その結果を示す。
それがテーマである。
あなたのテーマはヒキで示すべきか?
ヨリで示すべきか?

とことん考えよう。
ラストシーンを複数書いて脚本上で試すことは、
誰もがよくやることである。



ちなみにドラマ「風魔の小次郎」は、
小次郎のヨリで終わる。「暖かい風」=主人公で、
主人公の変化や新しい忍びとしての希望で終わっている。
(まだまだ続くんじゃの意味も込めているが)

映画「いけちゃんとぼく」は、
いけちゃんが本当に消えた、ヒキの空舞台(何も人物が映っていない背景のこと)だ。
さよなら=成長という、喜びと別れを暗示したわけだ。


好きな映画、名作のラストカットだけを集めてみよう。
ヒキか?ヨリか?
テーマはなにか?
ヒキならヨリに、ヨリならヒキにすると、
どう変わる?
暗示するテーマはどう変わってしまう?
そういう勉強をしてみるといいぞ。
posted by おおおかとしひこ at 00:14| Comment(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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