職務分離的には監督が決めることだけど、
これくらいは脚本家が考えるべきことかも知れない。
なぜなら、テーマに直結するからだ。
ヒキは、状況。
ヨリは、気持ち。
つまり、
ラストカットは、
その物語が状況で終わるのか、
気持ちで終わるのかを意味している。
ヒキは、後ろ姿で終わる場合と、
主人公がいなくて終わる場合と、
主人公が正面で見えている場合があるだろう。
ヒキの後ろ姿で終わる場合は、
その場から去ってゆく、
次の場所へ向かう(たとえば次の戦いへ。バックドラフトなど)
全てが終わった後の状況を見守る、
その状況に絶望したエンド(猿の惑星など)、
など、
未来、過去、現在、どちらに矢印が向いているかで、
テーマが決まると思う。
ヒキで主人公がいない時は、
主人公がなし得た状況の変化を示して、
それがテーマであることが多い。
(少林サッカーは、少林拳の普及が目的だったので、
それが普及したエンドである)
そこに主人公が正面でいるかどうかは、
どちらでもいいかも知れない。
主人公がいるほうが、ドヤ顔が強いかも知れない。
主人公がいない場合は、死亡を匂わせたエンドかもしれない。
(世界に平和がもたらされたが、
主人公は帰還しなかった。でも私(ヒロインとか)は、
まだ生きていると信じている、とか)
いない場合は、無私の尊さなんかも入ってくる。
宗教じみれば、殉死の死体や墓にみんなが集まってくる、
みたいなこともあるだろう。(デスノートとか)
ヨリで終わる場合は、
主人公のヨリで終わる場合と、
モノで終わる場合がある。
主人公のヨリで終わるならば、
その表情が全てを語るだろう。
ストーリーのビフォーアフターを、
顔が一番豊かに語ると思う。
結果が顔に出ているからだ。
代表的なのはロッキーだろう。
彼のなし得たことすべてが、その顔でわかる。
再会がテーマなら、その再会した二人の切り返しで終わる物語もある。
(パッと思い出したのは、オールユーニードキルかな)
切り返したヨリは2カットに割るのであまりいい手ではないが、
表情が一番良くわかるメリットもある。
ソファーに二人を座らせれば二人の表情を正面から抑えられるので、
ラブストーリーではソファーで座っておしまい、というのも良くある。
(アパートの鍵貸しますとか)
こういう場合はミドルショットで終わるだろう。
二人の関係性も表情も同時にわかっておしまいになる。
モノのヨリで終わる場合は、
それがテーマの象徴になる。
プロジェクトXなんかは発明品の話が多かったため、
「今でもそれは日本人に愛用されている」
とモノのヨリで終わり、その発明の偉大さを示して終わるよね。
理論物理学者の話ならば、発見した数式で終わるかも知れないね。
どう終わるかは、
ストーリー次第だ。
そして、何が一番大事かだ。
そのストーリーで何が一番大事なのかは、
あなたが決めるべきだ。
それがテーマだからだ。
もちろん、監督の方が映像センスがあるから、
あなたの大事にしたテーマを、
より印象付けられるラストカットを、
創作することができるかも知れない。
どちらがよりそのストーリーのテーマを示しているかは、
客観的に議論した方がいいと思う。
ヒキで終わるのか、
ヨリで終わるのかは、
主人公がなし得たこと、その結果を示す。
それがテーマである。
あなたのテーマはヒキで示すべきか?
ヨリで示すべきか?
とことん考えよう。
ラストシーンを複数書いて脚本上で試すことは、
誰もがよくやることである。
ちなみにドラマ「風魔の小次郎」は、
小次郎のヨリで終わる。「暖かい風」=主人公で、
主人公の変化や新しい忍びとしての希望で終わっている。
(まだまだ続くんじゃの意味も込めているが)
映画「いけちゃんとぼく」は、
いけちゃんが本当に消えた、ヒキの空舞台(何も人物が映っていない背景のこと)だ。
さよなら=成長という、喜びと別れを暗示したわけだ。
好きな映画、名作のラストカットだけを集めてみよう。
ヒキか?ヨリか?
テーマはなにか?
ヒキならヨリに、ヨリならヒキにすると、
どう変わる?
暗示するテーマはどう変わってしまう?
そういう勉強をしてみるといいぞ。
2020年11月30日
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