2020年12月10日

いくつのパターンを考えられるか

これはプロになるうえでとても大事なことだ。
たった一つのパターンしか考えられないのは、
あまりにも芸がない。


ひとつのものをつくっていくときすら、
アイデアが湧いてこないのはしんどい。
一個しか出ず、
ほかのパターンを考えられないとしたら、
それに固執して、
ストーリーは柔軟性を失うだろう。

色んな場合を考え、
こういうパターンもある、
こういう変化球も考えられる、
本命はこのあたりがいいか、
いや、こういうこともあるぞ、
なんてパターンを考えられれば考えられるほど、
気づいていなかった可能性にたどり着けることになる。
あるものは面白くても、
その先を考えたら破綻している、
ということはよくあるので、
そのときに他の選択肢に渡れない人は、
つまりはそこで死ぬ運命にあるということだ。

テヅカチャートは、
まさにそのような、
パターンを出す訓練である。
5パターンくらい常に考える癖がつくだろう。

これはこうかもしれないが、
こういうパターンもあり得る、
と気づいたとき、
突破口がそこになるかもしれないのだ。
(あるいは、キープだけしておいて、
困ったらそこに戻って来る、という選択肢もある)


で。

プロというのは、それだけではない。

複数の人たち、
プロデューサーやスポンサーとストーリーを作っていくときもある。
プロになればわかるが、
理不尽な直しなど、日常茶飯事である。

それは複数の人でやる仕事共通の悩みだと言える。
自分はこれがベストだと思って出しているのに、
ほんとうにあっさりと、
全然違う理由で却下になり、
無理難題を押し付けられることは、
日常茶飯事である。

このとき、
腐らずに、別のパターンを考えられるかは、
プロの素質として大事なことだ。

コツとしては、
アイデアを詳細まで考えないことである。

詳細まで考えてしまうと、
それを捨てるのがもったいなくなる。
つまり、
もったいなくなるまで、
アイデアは育ててはいけない。

アイデアは、捨てるほどあるようにしなければならない。
そうすると、何個でも捨てるほど生むことが可能になる。
たった一つの珠玉を磨いていくと、
捨てるようなアイデアを採用しづらくなる。
質が違うからね。

アイデアは、捨てるほど作れるべきだ。
そうすると、
理不尽な直しのときに、
同じレベルでアイデアを組みなおせる。

磨いて磨いて、大事に温めたものは、
一回傷ついたら、
割れた玉子のように終わりである。

そうではなく、ばんばん生んで、
いくつか孵化すればいいや、
くらいに構えるべきだ。
そうでないと、
一個だけアイデアを出して、
ダメだったので潰れていった人、
としてしか、
プロの現場では記憶されないだろう。

あるいは、一個はよかったが、
次が続かなかった人として、
記憶されるだろう。

プロは、毎日ブロイラーのようにアイデアを生めなければならない。


その為には、
アイデアを捨てる練習、
アイデアを何パターンも出す練習を、
常に出来ていないといけない。

数学的厳密的な証明ではないから、
アイデアは、何パターンも存在することができる。

その可能性を常に信じ、
常に別解を考えられるような柔軟性が、
プロには必要である。

二回目、三回目のアイデアが、
一回目に出したアイデアより弱い人がいる。
そういう人は、
他のプロ、
二回目、三回目も面白いアイデアを出す人に、
駆逐されていくだろう。


理不尽なことはいくつもある。
色々ここに書きたいが、あまりにもありすぎて、
もう忘れてしまった。
一々覚えていたら発狂するような、馬鹿な理不尽が沢山あるからね。
(いつか引退したら、そういう本を書くよと言っていた某プランナーは、
それを匿名で暴露するのだろうか)


アイデアを認められることが承認欲求になっている人はやばい。
それを却下されたら、自身を失い、
廃人になってしまう。
それを承認欲求にするべきではない。
「こんな理不尽でも、
動じなくて、アイデアを常に出せる」
というタフさをアイデンティティーにしていこう。
そうすれば、承認欲求は、ベストのアイデア一つではなくなるはずだ。

ベストのアイデアが最高ならば、
それはいつか取って置き、
どこかに再利用すればよい。
それがいつか最高の作品になったら、
ざまあ見ろ、と笑えばいいさ。
最高の作品にならないのなら、
それは所詮その文脈限定の、小さいアイデアだったのだろう。

もっと大きな方向をみろ。
もっと広い世界をみろ。
色んなパターンのアイデアを出すコツである。

プロほど、色んなことを知ってるぞ。
プロほど、古今東西の作品を把握しているぞ。
プロほど、映画以外の色んな娯楽を知っているぞ。
今ここにある、小さな針の穴を通すアイデアなんて意味がない。
もっと広い文脈での、
ナイスアイデアを、何パターンも思いつくのさ。
posted by おおおかとしひこ at 00:33| Comment(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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