言葉は、簡単な言葉から難しい言葉まで並んでいる。
言ったり書いたりするのが簡単な言葉は、意味も簡単な言葉で、
言ったり書くのが難しい言葉は、意味も難しい。
つまり、発語と意味の難易度は比例している。
(すべてではなく概ねの傾向だろうが)
タイピングもそうあるべきだと考える。
僕が薙刀式のJ位置「あ」にこだわるのは、
そのことを示している。
最も意味の簡単な感嘆詞は、
最も簡単に打てるべきだと。
これがqwertyなら左小指という最弱指だから、
僕は一生qwertyを否定する。
同様に、文を構成する記号としての句読点や感嘆符やカギカッコなども、
簡単に打てるべきだと考える。
薙刀式ではいずれも人差し指中指だ。(編集モード含む)
qwertyというか109キーボードの「」の位置はダメだと思う。
右小指を使いすぎる。
僕が脚本や小説など、たまたま「」の多いタイプの文章を書くから、
特にその苦痛を感じたのだが、
そもそも実質キーボードでしか書けない文章で、
「」で右小指を壊す理由などない。
逆に言うと、脚本や小説は、
実質キーボードでしか書けないくせに、
キーボードで書く効率は非常に悪い。
これが僕の配列やキーボードに対する不満と情熱の根源だ。
で、文字配列に戻ると、
小学生で習うような基本語は、
基本的な運指で打てるべきだと思うわけだ。
基本語はなにか、基本的な運指はなにかには、
おそらく異論があり、一律の定義をすることは難しいので、
まずは、「あいさつ」の言葉の、
各配列の運指をチェックしてみたい。
というのも、
新下駄で「こんにちは」の運指が思ったより良くなかったからだ。
「ち」T位置のせいかもと思った。
「ち」は頻度的にはマイナーなカナだから、
表面とシフト面とどちらにするか迷うラインだ。
また、「にち」の連接はまあまああるものの、
「ちは」の連接はあまりない。そのせいもあるだろう。
そもそも文章中で「こんにちは」が出ることもほとんどないから、
「キーボードで文章を打つ」に限って言えば、
新下駄がこんにちはを打ちづらいことは、
合理で考えればデメリットではない。
重箱の隅をつついているわけではなくて、
「統計的合理が、発語装置として適しているか?」
という大きな話かもしれない。
「言葉の基本が運指の基本になるべき」
と僕は考えるけれど、
「文章でよく出る言葉が運指の基本になるべき」
と考える配列もある。
どちらかだけが排他的に正しいとも思えないし、
使う人にもよって真理は変わるかもしれない。
で、
「言葉の基本だけど、
書き言葉の統計ではあまり出ない言葉」として、
「あいさつ」はいい例だなと思ったので、
各配列での運指を調べてみた。
おはよう
おはようございます
こんにちは
こんばんは
さようなら
またね
またあした
おやすみ
おやすみなさい
いただきます
ごちそうさまでした
こんなあたりかな。
重要な連接がたくさん入っている。
以下、
【】をセンター連続シフト、()を同時、
【】を左シフト、《》を右シフトで示す。
薙刀式
おはよう 【N】C【I】L
おはようございます 【N】C【I】L(VJ)(FU)K【F】O
こんにちは V,【DG】C
こんばんは V,(CJ),C
さようなら 【UI】KM.
またね 【F】N【W】
またあした 【F】NJRN
おやすみ 【NH】O【B】
おやすみなさい 【NH】O【B】M【U】K
いただきます KN(FN)W【F】O
ごちそうさまでした (VJ)【H】BL【UF】(EJ)RN
シフトが多用される代わりに、中央に集めた指を多用する。
薬指はわずかで、小指は一度もない。
シフトキーや濁音同時キー(FJ)を除けば、
動線のつながりはいいと思う。
また、「お」や「ます」のような丁寧語にシフトを使うのは、
感覚的に理解できる。
丁寧に言う時に時間がかかることと、比例している。
新下駄
おはよう (DL)E(DI)J
おはようございます (DL)E(DI)J(WK)(XL)KXZ
こんにちは IFWTE
こんばんは IFUFE
さようなら (SL)(DI)J;(SJ)
またね XM(DM)
またあした XM(DJ)LM
おやすみ (DL)(SO)Z(DO)
おやすみなさい (DL)(SO)Z(DO);(SL)K
いただきます KM(SM)CXZ
ごちそうさまでした (WK)T(S;)J(SL)X,ML
部分で見るとつながりがいいけど、
一語で駆け抜けようとすると、
どこか詰まりそうな運指がある感じ。
ゆっくり打てばいけるけど、繋がりはいいはずだから、
つい一気に繋げてしまいたくなり、
余計つんのめるのかも知れない。
「おやすみ」が特に僕は苦手だなあ。
SDに加えて右薬指となると、ちょっと制御しきれない。
「おやすみ」という気軽感とだいぶ乖離がある。
「さようなら」も一つ一つの連接は素晴らしいんだけど、
一気に打つとどこかミスりそう。
でも「きます」「でした」の一気感とかすごいよね。
「理屈ではあってるはずなのだが、現実に適用すると齟齬が出る」
みたいな、数学や物理学の現実への適応っぽい感じかな。
「ただし摩擦はないものとする」というけれど、現実には摩擦あるし、
みたいなこと?
理学と工学の違いみたいな。
だから理想通りに指が動かせる人が、新下駄マスターかもしれない。
飛鳥
おはよう 《S》O【I】D
おはようございます 《S》O【I】D《@V》K【LK】
こんにちは 《L》JCXO
こんばんは 《L》J【F】JO
さようなら /【I】D《DF》
またね 【L】;【X】
またあした 【L】;【S】S;
おやすみ 《S》【NK】《C》
おやすみなさい 《S》【NK】《CD》/K
いただきます K;《A》A【LK】
ごちそうさまでした @X【;】D/【L;】S;
飛鳥は新下駄に対して、
理論的なトップスピードは遅く想定されているように感じる。
左右シフトがパラパラと出るとどうしても遅くなる。
しかし「そこは手間だけど動線は繋がっているから打ちやすい」
みたいなことが飛鳥の魅力に思えてくる。
また、シフトが絡むとは言え同指同鍵がちょいちょいある。
同鍵連打のほうが異指より楽と考える速度帯での運用ではないか、
と思ってしまう。
かえであすかの動画ではそれくらいの速度に見えた。
あれ以上に速い自由文での動画がないため、そのへんは真偽不明。
ステ吉さんの新下駄動画が出たことで、
比較研究も出来ると思う。
飛鳥は中段率が異常に高く(7割くらい)、
単打率が低い(5割台)。
それはつまり親指の使用率が高く、
なんでもかんでも親指を叩いたり抑えたりしながら、
中段を打っていく配列、
と言う風に捉えることができる。
その傾向もこのあいさつことばで出た感じだ。
それが「楽」か「速い」かは、好みが出るのでは?
親指シフト
おはよう 《J》H《Y》A
おはようございます 《J》H《Y》A《R》《T》L《O》C
こんにちは R;《U》UH
こんばんは R;【H】;H
さようなら T《Y》A【D】Y
またね 《O》E,
またあした 《O》E《S》SE
おやすみ 《J》【V】C《H》
おやすみなさい 《J》【V】C《H》【D】YL
いただきます LE《E》K《O》C
ごちそうさまでした 《R》UMAY《O》《D》SE
わりとひどいと思った。
同指連続も跳躍もそこそこある。
設計されている想定速度はかなり遅めなのではないか?
「親指シフトが速かった伝説の人たち」は、
みんなローマ字に行ってしまって、そこでも速く居続けてるのではないかな。
取り残された人たちが、
「JISカナよりはマシ(速い)」
「qwertyローマ字よりはマシ(楽)」
と言っている価値が、いまの親指シフトのアイデンティティーではないか?
月
(シフトのDKをわかりやすくするため、
これ以外を小文字表記する)
おはよう DjaKgj
おはようございます DjaKgjwlbliDhz
こんにちは wuc@a
こんばんは wualua
さようなら bKgjvKd
またね DhgD,
またあした DhgKfeg
おやすみ DjDozDi
おやすみなさい DjDozDivbi
いただきます iggI;Dhz
ごちそうさまでした wl@qjbDhrleg
拡張ローマ字みたいな打鍵列となった。
DKと濁音で、
無理矢理左右交互打鍵が爆増している感じ。
何も考えずに打てる人は一気打ち出来るかもしれないが、
僕はどっかで左右交互が多すぎて詰まりそうだなと感じた。
部分のつながりはいいのだが、
一気に通すともつれる感じがある。
なんとなくだけど、
理論上速いから鍛えれば速くなる系が、
新下駄、月、
そこまで速くなくていいから、
発語と打鍵の感覚を一致させようとしている系が、
薙刀式、飛鳥と、
大きく二つの系統の特徴が出た感じがする。
前者の配字根拠が統計(月のもとの新JISは教科書文体の統計)、
後者が人の手の感覚、
ということと、強い相関があると思われる。
親指シフトはざっくり統計で、
あとは人の手の感覚のはずだが、
試行期間が足りてなく、練りが全然甘いと思う。
これを一生使うつもりでつくってないし、作者が使い続けてないことで、
優秀でないことは明白だ。
親指によるシフト方式を思いついた時点で、
喜んでしまった止まりな感じがする。
あと設計の手法としては、機械計算系があるな。
評価関数や手法によってもばらつきがあるだろうが、
代表的なのは何かあったかしら…今花しか思いつかなかった…
2020年12月14日
この記事へのコメント
コメントを書く