2020年12月28日

心の中は映画にならない

何回忠告してもし過ぎることはないと思う。

あなたが思っていることを言葉にしてみなさい。
それは映画にならない。
Twitterで呟いている独り言たち。
それも映画にならない。

なぜならそれは、頭の中の出来事だからだ。


記憶に埋もれたことを思い出して色々震えること。
それも映画にならない。
何かのコツを見出して、楽しくなること。
それも映画にならない。
あの人があの時言ったことはこういうことだったのではと考えること。
それも映画にならない。
明日を夢見て、自分の夢を叶えようとすること。
それも映画にならない。
後悔。
それも映画にならない。
解けない数式を考えたり、新しい発見をすること。
それも映画にならない。
知らなかった雑学を知ってへえーと思うこと。
それも映画にならない。

すべては、舞台が脳の中だからである。


三人称表現では、
脳の中は見えない。

代わりに見えることは、
人が、何かをする動作と、
人が、誰かに何かを言うことだけだ。

人は、いきなり自分の脳の中の世界を、人に話さない。
話すには何かしらの理由や目的がなければ、だ。

ただのお喋りやトークショーは映画にならない。

映画とは永遠に変化する時間軸をあつかう。
お喋り前と後で、世界の変わらないものは、映画にならない。

喋り終えたあとで、世界がガラリと変わって見えるならば、
それは映画になる。
ただし、見た人全員が、世界がガラリと変わって見えなければならない。

あなたが考えた新しい思想を映画にしたがるだろうが、
それは、全員をそのように(自然に)思わせることが出来るまで、
映画にしたことにはならない。
あなたの思想をただ書き下すだけでは、映画にはならない。
E=mc2と真実を書いたとしても、
全員が光電効果を理解しているわけではないからだ。


映画とは、
人がする行動と、
人が他人に話すことの、
たった二つの種類の言語で記述された、
問題とその解決のことである。

「脳内のまるまる何か」は、
その映画言語に入っていない。

仮に、あなたの脳内の何か、
あるいは誰かの面白い脳内の何かを映画にしたいなら、
映画言語に変換しなければならない。

つまり、
脳内を一切見せないのに、
言動でその脳内の面白さが120%伝わるものであるべきだ。

そしてそんなものは言動だけでは推測できないため、
脳内のことは映画にならない。


ではなぜ映画が芸術なのか?

とある言動によって、
問題を解決するそのやり方が、
人類に新しい考え方を示唆するからである。

それまで描かれていなかった問題、
それまで描かれていなかった解決、
それまで描かれていなかった、言動の価値。
つまりはテーマがそれらから読み取れる
(≠明示的に説明される)からである。

そのテーマに価値があるから芸術なのだ。

もちろん第七芸術なので、
映像の美しさや音楽の美しさや芝居やダンスの美しさも、
映画の芸術性のひとつであるが、
映画にしかない芸術性とは、
「テーマを、
人の言動によって、
問題と解決で示すこと」
の見事さではないかと、
僕は考えている。

演劇と異なるのは、その現実性だ。
架空の舞台と架空の衣装ではなく、
ほんとうの場所でやることで、
ファンタジーでないシビアさが求められるということだ。

テーマを言動で示すのは、ひょっとしたら演劇の方が簡単かもしれない。

映画は、写実性のある絵で説得しなければならないからね。
絵画性のある絵で説得はできないのだ。


つまり、
我々の道具は、
人物、写実的舞台、行動、言葉、
事件、解決、
だけである。

脳内の考え方、独り言は、この中に入っていない。

あなたの脳内で考えた面白いアイデアは、
上の道具を組み合わせて具体化できるか?
できるなら映画になる。
できないなら映画にならない。



例外を一つ。
ファンタジー的に、
脳内世界を冒険する話とか、
脳内世界のものが外界に溢れ出して始末をつける話とかは、
映画になるだろうか?

それらが上の道具を用いて描かれれば可能だ。
しかし登場人物(味方も敵も)は、
どうせ「元自分の別人格」であるから、
物語の型が、どうやっても「分裂人格の統合過程」
を描かざるを得ず、他者が出てこないパターンになり、
「狭い話」「似たような同じ話」にしかならないことに気づかれたい。
つまり、ワンパターンなのだ。
これも、映画にならないよ。
posted by おおおかとしひこ at 00:12| Comment(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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