「中心的な言葉は、打ちやすい運指に」は、新配列の原則だ。
「中心的な」の基準には、統計的によく出る、文法や意味の中心、
「打ちやすい」には、アルペジオ、左右交互などがある。
以下の4配列を中心に、
「アルペジオで打ちやすい、中心的な二連接」を抽出してみた。
取り上げる配列は、
薙刀式、新下駄、飛鳥、親指シフトだ。
取り上げの理由は僕自身がある程度理解していて、
指の動作と言葉の関係について慣れているものに限った。
とはいえ、練度は100:2:2:1くらいなので、
薙刀式以外の配列には漏れや誤解があるかもしれないので、
あらかじめ断っておく。
アルペジオの定義は、
「片手の異なる指二本で、打ちやすい連接」
とする。
親指は除く四指限定で考える。
(qwertyでMNを右親指で取ったりするので、
親指との組み合わせも考えるべきだが、
取り上げる4配列は親指を無視できたので)
原則は、人差し指>中指>薬指>小指
(小指<薬指の人もいる)の順で動きやすいから、
人差し指中指のアルペジオが最強なことに異論はないだろう。
人によるが、
「人差し指と他の指のアルペジオ」
「隣の指のアルペジオ」
「隣り合ってない指のアルペジオ」
の順で打ちやすい傾向がある。
また、外側→内側の指の順の方が打ちやすい傾向がある。
(人差し指中指の二本は、その限りでないとは思う)
同段のアルペジオは、どの指からどの指へも繋ぎやすい。
中段(ホーム段)が最も繋ぎやすい。
また上段は、短い人差し指と小指が届きにくいため、
上段同士のアルペジオより下段同士のアルペジオがいい説がある。
(薙刀式の右手部はそれを採用している)
異なる段のアルペジオは、
「短い指と、長い指の一つ上の段」が繋ぎやすい。
右手でいうと、JIO;の絡むもの、それを下段に下ろしたもの。
また、中指>薬指だから、ILのアルペジオもたまにある。
また、一段飛ばしの上段下段を使う配列もある。
MIなどは全然打ちやすいしね。
このあたりは理論的なアルペジオだけど、
実際のところ、
全て理論的に動くまで鍛えている人は、ごく少ないと考える。
極論すればピアニストは、
どの指のアルペジオも等しく動かすまで訓練するが、
そのような訓練をする物書きはいないし、
物書きが訓練する筋合いはないと思う。
配列作者も同様で、
ピアニストほど動く指の持ち主はいないし、
「多くの人の平均的な手の力」に配列を合わせるべきだと考える。
(前提となっている手の力には、わりと差があるように思えるが)
その結果、
多くの場合で右手のアルペジオが左手より多く、
頻度もバリエーションも豊富だ。
薙刀式はとくに左手小指薬指、右手小指を、
アルペジオからも打鍵頻度からも大幅に減らしている。
飛鳥は右手偏重、中段偏重の考え方で、
ほとんどの連接はホームキーの組み合わせに集中しているのが特徴だ。
新下駄は逐次シフトであるものの、
「シフトキーを絡めたアルペジオ」を利用して、
多くの連接を打ちやすく感じさせる工夫がある。
親指シフトは前世紀のレガシーとして取り上げたが、
なんともひどいものであった。
「言葉がぬるぬる繋がる」は、配列の理想だ。
歴史的には、左右交互打鍵が当初は良いとされた。
片手の連打は指がもつれると単純に考えられたのだろう。
だがアルペジオ打鍵の発見によって、
左右交互よりも速くて楽な二連接(三連接、四連接)を、
積極的に使った方が、
「ぬるぬる繋がる」感覚になると考えられる。
(もちろん、同指連打、同指段越えの悪運指を避けることと、
両立させなければならないが)
では、4配列について詳しく見ていこう。
各配列は、「どのぬるぬる連接を、どの指のアルペジオで行うか」?
つまり、言葉と指の連動の感覚について。
まずは勝手知ったる薙刀式から。
右のアルペジオがメインで、左は軽めになっている。
特徴的なのは右手下段が比較的濃いところか。
(追記:゛゜からのアルペジオが抜けていたので追加。傾向は変わらないと思います)
新下駄のアルペジオは、左右対称的なのが特徴だ。
とくに中段メインのアルペジオで、
FJ、DK、EIあたりを終点にするものがとても多い。
この整理された動線に比べると、薙刀式はカオスの動線に見えてしまうくらい。
飛鳥は、中段だけが動線がやたら濃い。
右手偏重がはなはだしい。
小指伸ばしまで使って5キーをホーム段扱いしている感がある。
中段が背骨のように、FJやDKに収束するような軌跡から、
なんとなく魚の骨のような感じが強い。
これらの新配列の整理されたアルペジオに対して、
親指シフトのアルペジオはいかにも動線がめためたである。
とくにQAT;あたりの端のキーをよく使っていることがわかる。
これは動線的によいとは言えない。
歴史的にも左右交互をメインにしていただろうから、
これらのアルペジオは狙いというよりは、
偶然生まれたデブリのようなものではないか。
それに対応している言葉を眺めても、
あえてこれを選んだとは言えないものが多い。
だが日本語の中心となる、なれ、あれ、これ、かれ、けれなどが、
Tへ収束するアルペジオなのは、看過しづらい欠点であると僕は思う。
これらを一覧できる表をつくった。
歴史順で見たほうが分かりやすかったので、そのように並べた。
親指シフトのアルペジオは偶然生まれたものにすぎず、
言葉と指の動線の対応を見ても、
狙ってそうしたものとはいいがたいランダムさがある。
僕が親指シフトに否定的なのは、
一文字あたりの出現率しか見てなくて作っていて、
こうした指の動線について詰められていないからだ。
これを批判する立場として生まれた飛鳥は、
動線とはこのようなものである、ということが図に強く表れている。
中段中心で最小の動きをすること、
FJDKEIへ収束する動きと相まって、魚の骨のような形になることが、
とくによくわかる。
また、右手偏重なことも、対応する言葉を抽出するとよくわかる。
新下駄は飛鳥に比べて、実に左右対称だ。
逆にいうと、左手の負荷が重いのでは?
僕がまさに左手がしんどくて新下駄を扱えなかったので、
「多くの人の手の力」を、新下駄は高く見積もっているのかもしれない。
飛鳥や新下駄を挫折した僕がつくった薙刀式は、
左手の負荷を大幅に減らしていることがよくわかる。
一方右手は飛鳥や新下駄なみに遜色はない。
また、飛鳥や新下駄の、
「中段中心で、上下段はその支線に過ぎない」
という動線に対して、
薙刀式の動線は、もっと広範囲で複雑な種類を持っていることがわかる。
上下段の同段アルペジオも使うし、
一段飛ばしでのアルペジオもつかっていることがよくわかる。
新下駄、飛鳥は使う場所は限定的だが、
薙刀式は狭い範囲をフルに使う配列だということが分かりやすい。
また、「短い指の下から長い指の上へ」という流れもつかっていて、
EIDKに収束するものも多くみられて、
全体に山形に見えるのも薙刀式の特異的な特徴だといえようか。
(薙刀式を使った人で、たまに「れ」の/位置が押しにくいという意見を見る。
この表を見てもわかる通り、アルペジオに積極的に使っているからね。
手の構えから違うのかもしれない)
ぬるぬるつながる言葉と、
ぬるぬるつながる運指の対応は、
二連接を示したので各自チェックされたい。
こういう言葉をこういう動きで打つ配列なんだなあ、
なんてことがイメージしやすいかと思う。
配列とは動きのことにも関わらず、
配列表だけだと動きがイメージしにくい。
この表で、そういったことが少しでもイメージできるようになると、幸いだ。
あとは自分の言葉の感覚と、
指の感覚次第で、
合う配列が決まるのではないだろうか。
2020年12月27日
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