2020年12月27日

【薙刀式】4配列のアルペジオ研究

「中心的な言葉は、打ちやすい運指に」は、新配列の原則だ。

「中心的な」の基準には、統計的によく出る、文法や意味の中心、
「打ちやすい」には、アルペジオ、左右交互などがある。

以下の4配列を中心に、
「アルペジオで打ちやすい、中心的な二連接」を抽出してみた。


取り上げる配列は、
薙刀式、新下駄、飛鳥、親指シフトだ。

取り上げの理由は僕自身がある程度理解していて、
指の動作と言葉の関係について慣れているものに限った。

とはいえ、練度は100:2:2:1くらいなので、
薙刀式以外の配列には漏れや誤解があるかもしれないので、
あらかじめ断っておく。


アルペジオの定義は、
「片手の異なる指二本で、打ちやすい連接」
とする。

親指は除く四指限定で考える。
(qwertyでMNを右親指で取ったりするので、
親指との組み合わせも考えるべきだが、
取り上げる4配列は親指を無視できたので)

原則は、人差し指>中指>薬指>小指
(小指<薬指の人もいる)の順で動きやすいから、
人差し指中指のアルペジオが最強なことに異論はないだろう。

人によるが、
「人差し指と他の指のアルペジオ」
「隣の指のアルペジオ」
「隣り合ってない指のアルペジオ」
の順で打ちやすい傾向がある。
また、外側→内側の指の順の方が打ちやすい傾向がある。
(人差し指中指の二本は、その限りでないとは思う)

同段のアルペジオは、どの指からどの指へも繋ぎやすい。
中段(ホーム段)が最も繋ぎやすい。
また上段は、短い人差し指と小指が届きにくいため、
上段同士のアルペジオより下段同士のアルペジオがいい説がある。
(薙刀式の右手部はそれを採用している)

異なる段のアルペジオは、
「短い指と、長い指の一つ上の段」が繋ぎやすい。
右手でいうと、JIO;の絡むもの、それを下段に下ろしたもの。
また、中指>薬指だから、ILのアルペジオもたまにある。
また、一段飛ばしの上段下段を使う配列もある。
MIなどは全然打ちやすいしね。


このあたりは理論的なアルペジオだけど、
実際のところ、
全て理論的に動くまで鍛えている人は、ごく少ないと考える。

極論すればピアニストは、
どの指のアルペジオも等しく動かすまで訓練するが、
そのような訓練をする物書きはいないし、
物書きが訓練する筋合いはないと思う。

配列作者も同様で、
ピアニストほど動く指の持ち主はいないし、
「多くの人の平均的な手の力」に配列を合わせるべきだと考える。
(前提となっている手の力には、わりと差があるように思えるが)

その結果、
多くの場合で右手のアルペジオが左手より多く、
頻度もバリエーションも豊富だ。


薙刀式はとくに左手小指薬指、右手小指を、
アルペジオからも打鍵頻度からも大幅に減らしている。

飛鳥は右手偏重、中段偏重の考え方で、
ほとんどの連接はホームキーの組み合わせに集中しているのが特徴だ。

新下駄は逐次シフトであるものの、
「シフトキーを絡めたアルペジオ」を利用して、
多くの連接を打ちやすく感じさせる工夫がある。

親指シフトは前世紀のレガシーとして取り上げたが、
なんともひどいものであった。


「言葉がぬるぬる繋がる」は、配列の理想だ。

歴史的には、左右交互打鍵が当初は良いとされた。
片手の連打は指がもつれると単純に考えられたのだろう。
だがアルペジオ打鍵の発見によって、
左右交互よりも速くて楽な二連接(三連接、四連接)を、
積極的に使った方が、
「ぬるぬる繋がる」感覚になると考えられる。
(もちろん、同指連打、同指段越えの悪運指を避けることと、
両立させなければならないが)


では、4配列について詳しく見ていこう。

各配列は、「どのぬるぬる連接を、どの指のアルペジオで行うか」?
つまり、言葉と指の連動の感覚について。

薙刀式アルペジオ2.jpg

まずは勝手知ったる薙刀式から。
右のアルペジオがメインで、左は軽めになっている。
特徴的なのは右手下段が比較的濃いところか。
(追記:゛゜からのアルペジオが抜けていたので追加。傾向は変わらないと思います)

新下駄アルペジオ.jpg

新下駄のアルペジオは、左右対称的なのが特徴だ。
とくに中段メインのアルペジオで、
FJ、DK、EIあたりを終点にするものがとても多い。
この整理された動線に比べると、薙刀式はカオスの動線に見えてしまうくらい。

飛鳥アルペジオ.jpg

飛鳥は、中段だけが動線がやたら濃い。
右手偏重がはなはだしい。
小指伸ばしまで使って5キーをホーム段扱いしている感がある。
中段が背骨のように、FJやDKに収束するような軌跡から、
なんとなく魚の骨のような感じが強い。

親指シフトアルペジオ.jpg

これらの新配列の整理されたアルペジオに対して、
親指シフトのアルペジオはいかにも動線がめためたである。
とくにQAT;あたりの端のキーをよく使っていることがわかる。
これは動線的によいとは言えない。
歴史的にも左右交互をメインにしていただろうから、
これらのアルペジオは狙いというよりは、
偶然生まれたデブリのようなものではないか。
それに対応している言葉を眺めても、
あえてこれを選んだとは言えないものが多い。
だが日本語の中心となる、なれ、あれ、これ、かれ、けれなどが、
Tへ収束するアルペジオなのは、看過しづらい欠点であると僕は思う。


これらを一覧できる表をつくった。
歴史順で見たほうが分かりやすかったので、そのように並べた。
4配列のアルペジオ2.jpg

親指シフトのアルペジオは偶然生まれたものにすぎず、
言葉と指の動線の対応を見ても、
狙ってそうしたものとはいいがたいランダムさがある。
僕が親指シフトに否定的なのは、
一文字あたりの出現率しか見てなくて作っていて、
こうした指の動線について詰められていないからだ。

これを批判する立場として生まれた飛鳥は、
動線とはこのようなものである、ということが図に強く表れている。
中段中心で最小の動きをすること、
FJDKEIへ収束する動きと相まって、魚の骨のような形になることが、
とくによくわかる。
また、右手偏重なことも、対応する言葉を抽出するとよくわかる。

新下駄は飛鳥に比べて、実に左右対称だ。
逆にいうと、左手の負荷が重いのでは?
僕がまさに左手がしんどくて新下駄を扱えなかったので、
「多くの人の手の力」を、新下駄は高く見積もっているのかもしれない。

飛鳥や新下駄を挫折した僕がつくった薙刀式は、
左手の負荷を大幅に減らしていることがよくわかる。
一方右手は飛鳥や新下駄なみに遜色はない。
また、飛鳥や新下駄の、
「中段中心で、上下段はその支線に過ぎない」
という動線に対して、
薙刀式の動線は、もっと広範囲で複雑な種類を持っていることがわかる。
上下段の同段アルペジオも使うし、
一段飛ばしでのアルペジオもつかっていることがよくわかる。
新下駄、飛鳥は使う場所は限定的だが、
薙刀式は狭い範囲をフルに使う配列だということが分かりやすい。

また、「短い指の下から長い指の上へ」という流れもつかっていて、
EIDKに収束するものも多くみられて、
全体に山形に見えるのも薙刀式の特異的な特徴だといえようか。

(薙刀式を使った人で、たまに「れ」の/位置が押しにくいという意見を見る。
この表を見てもわかる通り、アルペジオに積極的に使っているからね。
手の構えから違うのかもしれない)


ぬるぬるつながる言葉と、
ぬるぬるつながる運指の対応は、
二連接を示したので各自チェックされたい。
こういう言葉をこういう動きで打つ配列なんだなあ、
なんてことがイメージしやすいかと思う。

配列とは動きのことにも関わらず、
配列表だけだと動きがイメージしにくい。
この表で、そういったことが少しでもイメージできるようになると、幸いだ。


あとは自分の言葉の感覚と、
指の感覚次第で、
合う配列が決まるのではないだろうか。
posted by おおおかとしひこ at 19:37| Comment(0) | カタナ式 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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