僕は物語に救ってもらった。
映画や漫画がなかったら、
(少しの小説がなかったら)
もっとしょうもない人間になって、
世界に絶望していたかもしれない。
それは過去にあった物語である。
今、未来に向けて、物語は世界を救えるだろうか?
邦画の実情を見れば見るほど、
そんな物語を作ろうとしているとは思えない。
僕は映画は大好きだが、邦画は好きじゃない。
自分の作りたい物語を作ろうとおもったら、
ハリウッドにわたるか、漫画を描くか、アニメの監督になるしかなさそうだ。
邦画だけが物語の出口ではない、
というのは、21世紀の特徴かもしれない。
昔ほど外国にわたるのは難しいことではないかも、というムードにはなった。
ネットの発達で、なんとかなるような気がしてくる。
僕が今考えているのは、
「物語」がもはや邦画や日本のテレビドラマを見限っているのではないか、
ということ。
今、日本人の作る最先端の物語は、
ツイッターにあるように思う。
とはいえ、ツイッターは短く、
物語の体をなしているとは言えない。
セガサターンやプレステが出たあたりでは、
物語は全部ゲームに移行してしまうのではないか、
とおもえる時代があったけど、
結局ゲームに物語そのものがなることはなかった。
物語は物語で、
その時代の最先端の出口を探しているのかもしれない。
ネットフリックスは、
映画やドラマの次の進化系と一瞬思えたが、
その複雑さや重さから、
完全に代替するものになるわけではなさそうだ。
あくまで変種でしかない感じだ。
コロナの物理的な状況で、
映画館は危機に瀕している。
しかしその前から、
「わざわざ時間を取って、出かけないとみれない」
は、映画のビハインドだと思われていた。
(待てば配信やレンタルに落ちてくるし、というのもある。
だから「ブーム」で興行を乗り切るというのが、
最近の興行の方法論だ)
物語は娯楽である。
映画という形態にしかないものではない。
でもいまだに映画が、物語の形態の最上級にいいものだという信念は僕はゆらがない。
小説よりも演劇よりも、
アニメよりも漫画よりも、
ドラマよりも、
「特別な二時間」の密度は高いと思っている。
その密度に達しているものを、
邦画が作らなくなりつつあるだけだと思っている。
それは、作り手の怠慢もあるし、
映画がそれだけのことを供給する前に、
みんなが他の、
もっと簡単にアクセスできる物語を消費しているからかもしれない。
昨年末の、無人島漂着日記は、
映画にはできない型式の物語で、
絵本でぎりぎり到達できる型式で、
ゲームやツイッターと相性がいい物語だと思った。
これが無料で提供されているときに、
邦画がイケメンとモデルの少女漫画とか、
やってる場合じゃねえだろ、
と僕は思う。
物語はなぜ人を救えるのだろうか?
まったく違う世界に人を飛ばすからだ。
この世と関係ない世界で、
「もう一度生きなおす」ことをしてくれるからだ。
もう駄目だとおもえるこの世界のこの人生とは、
まったく関係ない世界とストーリーを体験することで、
一端この世をリセットしてくれるからだ。
ハッピーエンドであることが望ましい。
新しい生まれ変わりの世界で、
ハッピーエンドにすることができたなら、
頑張れるヒントや勇気をもらったことで、
またこの世に舞い戻っても、
なんとかなるだろうと思えるからだ。
物語とは、一種の幽体離脱である。
別の人生を通した、精神治療である。
まったく別の人生で成功することで、
今の人生でうまくやっていくことを想像することである。
それだけの価値がある物語でないと、
僕はストーリーとは認めない。
そして、そんなものは邦画からはとんと出てきていない。
ゲームや、ネットフリックスや、ハリウッドや、
アニメからは出てきているかもしれない。
ドラマにも少しそんなものがあるかもしれないが、
僕は見ていない。
物語は世界を救うことができる。
僕は救われた。
同じように、誰かを救うことができれば、
それがマイナーで少ししか見られないよりも、
沢山の人に見られるようになれば、
世界を救うことができると思うよ。
物理で世界を救うのではなく、
心や希望で世界を救う。
それが物語の役目だと思っている。
コロナのせいで、
2020は散々な年だった。
これからも暗いニュースは増えるだろう。
オリンピックをやれる余裕はもうない。
日本が傾くかもしれないね。
生活の基盤や基本的なシステムすら変わりそうだ。
在宅勤務が本格的になっている人もいるだろうし。
どんな暗いときにも、
日の出を想像することはできる。
物語だけが、
それを可能にすると思う。
そして物語とは、
まったく別の世界のまったく違う冒険なのに、
この世に戻って来たときに、
この世に希望を見出せるものをいうと思う。
そういうものをこれからも書いていきたい。
みなさんも、そういうほんものの物語を、
書いてください。
若いときに知りたかったことを、
これからも書いていこうと思います。
2021年、がんばっていきましょう。
2020年12月31日
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