2021年01月03日

難しかったら飛ばせ

テストでも、解けない問題は先に飛ばして全部を一通りやるじゃない?
そうしないと全体が底上げされないからさ。

ストーリーもそうやって作ってみる手もあるぞ。


ストーリーを書いていく上で、
最もよくある局面は、
「ここからどうやればいいか分からなくて、止まる」である。

「全部で10万字書くから、
100日で書くとして1日1000字ペースでやればよい」
なんて計算はなんの意味もない。

書けるところは一日一万字くらい書けるし、
書けない時は一週間ずっと一文字も書けなかったりする。

それは書いたことのある人だけが知る感覚で、
「ペース配分をしよう」なんてアドバイスする人は、
やったことがない人だと僕は思っている。

川は等速度では流れていない。

流れは急なところもあるし、
穏やかなところもある。
ある地点のその川の全ての水すら、
同じ速度では流れていない。
表面は速いし、底はゆっくりだ。
表面より速く流れている底もある。
岩の手前は遅いし、合流点は速いし、
窪地では渦を巻いている。

執筆もそれと同じである。

結果的に等速度で流れている、
外から見た川を最終的にはつくるのだが、
実情はそうではない。

創作に工数管理なんて意味がない。
管理ができるのは分かっていることだけで、
創作とは分かってないことをすることだ。


だから、
今流れが急激に悪く、
全く前に進めず、
にっちもさっちも行かなくて、
それで書くのを辞めてしまうくらいならば、
テストのように飛ばして次へ行けばいいのだ。

次のシーン、次のブロック、
次の章、なんでもいいので、
次へ飛ばしてしまえ。

「このシーン(ブロックetc)飛ばします」と大きく書いて次の白紙へ行け。

ただし次は、
「○○の危機を辛くも切り抜けた一行は、」
ぐらいから書き始めるのがコツで、
とにかく書けなかったところを、
すでに書いたようなふりをすることが大事だ。

そうして、
虫食いの状態でいいから、
「おしまい」まで書いてしまうのだ。

少なくとも、
「書けなくて前に進めないから、
辛くて(飽きて)辞めてしまう」はなくなる。
あとは虫食いの穴を埋めればいい。


プロットに問題があるなら直す。
後々使う伏線をここで引くならばそうする。

虫食いの便利なところは、
普通に前から書くだけだと、「前からの情報」しかないところだが、
「後ろからの情報」もあることだ。
「こう入って、こう出る」の両方があるわけだ。

虫食いの入れ子もできるよ。
虫食い穴を細分化して、
書けるところだけ書いてしまえばいい。

紙で書いてる時はこれが便利で、
部屋の床や壁に全部原稿を並べて、
虫食いのところだけ蛍光ペンで目立つようにしておく。

全体でどれだけ穴が空いてるか視覚化しておき、
あとどれだけ埋めれば終わるかを自覚すればいい。
引いて見ることができるぞ。
これはデジタル作業ではやりづらいやつだね。
アナログの強みはこういうところにある。

で、コツコツやればそのうち穴は埋まる。

もちろん出来は悪い。
前から順番に書いた方がいいものが出来るのは明らかだ。

しかし完結しないことに比べれば、
ヨレヨレだとしても最後まで繋がった方が、
一億倍偉いのだ。

繋がりさえすればこっちのものだ。
また一から頭から書き直すのである。
そうすれば、もっといい原稿になるだろう。

リライトの時にも詰まる所があるだろう。
だったら飛ばしたっていいんだぜ。
そのうち前に戻って書き直したくなるなら、
戻ってもいいんだぜ。


一文字一文字順番に書き、
ラストまでそうしなければならないルールはない。

「一文字一文字再生されてラストまで体験されるもの」が、
出来上がってさえいればそれでいいんだぞ。



なにせ、出来上がれば反省会が出来るのだ。
「なぜ俺はあそこで詰まったのか?」を、
俯瞰して分析できる。
必ず理由がある。
「○○だったから」がいくつか見つかる。
それは自分の弱点だろう。
じゃあ、弱点を避ける話を作ってもいいし、
弱点を鍛える習作をしてもいいと思う。

出来上がらなかったら、
そんなことすら出来ないから、
出来ないのループにしかならない。

反省会のないところに成長なんてない。
さっさと飛ばしてガンガン埋めていけ。
そういうやり方だってあるんだ。


紙なら思いつける。
紙と自分と紙の外の空間がある。
無限空間のデジタル原稿を見ていては、
永久に思いつかない方法だろう。
posted by おおおかとしひこ at 11:12| Comment(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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