ツカミは難しい。
驚かせたり、刺激を与えることはツカミでやるべきことだけど、
本質ではない。
ツカミでやるべきことは、
「ストーリー全体に興味を持ってもらうこと」だからだ。
ツカミが刺激に満ちて、うおおおってなっても、
その後が面白いとは限らない。
その後楽しむものはストーリー、
すなわち事件と解決のラインであって、
刺激ではないからである。
つまり、ツカミというのは、
刺激を与えつつも、ストーリーの入り口として機能していないといけない。
刺激に興味が行くのではなく、
ストーリーの行く末に興味を持たせないと、
ツカミの機能としては不合格なわけだ。
ところで、
ツカミには順目と逆目がある。
順目のツカミとは、
「こうなるだろうな」と思わせて、
そうなったことで興味を掴む方法。
逆目とは、
「こうなるだろうな」と思わせて、
逆のことが起こることで興味を掴む方法だ。
順目のツカミの場合、
「予想通りにことが運ぶと、人は快感になる」
ということを思い出すとよいだろう。
「なんだ、予想通りじゃんか」ではなく、
「おっ。思ってた通りだ。俺の予想が当たったぞ」
にすることである。
「こうだろうな」と思うことがその通りになるだけで、
人は快感を感じる。
料理がちゃんと出来上がる快感と同じだろう。
しかしコツがあるとすると、
100%予想通りになってしまってはよくないということだ。
90%当たっているのだが、10%は当たっていなかった、
という塩梅にするのが良いと思う。
あるいは、
「それは解決したが、それが解決したことで、
事態はよりややこしく、大きな規模になった」
となるのがベストだ。
予想は当たって、展開したのだが、
そのことによってより大きなドミノになっている、
というのが順目である。
素直にそれを書けるようになったら一人前だと思う。
逆目は、予想を裏切ることでおもしろがらせる。
「これは予想がつかないぞ」という面白さだ。
一見順目よりも簡単なように思えるが、
こっちの方がより難しい。
なぜなら、
「予想を裏切ったその結果が、予想を下回ってつまらないこと」
がよくあるからだ。
逆張りをしていたら、面白い結論がなくなってしまった、
というのは最近の逆張り漫画にはよくあることだと思う。
逆張り自体は面白さのエッセンスではあるが、
逆張りした結果、ほんとうの結論が全然面白くないので、
ネタが割れた時点で最低につまらなくなってしまうことが、
稀によくあると思う。
ということは、逆目でおもしろくするには、
相当どんでん返しがうまくないと出来ないという事だ。
逆目で楽しませておいて、
しかも全貌が明らかになったときに、
「上手に騙されたなあ」と感心する者でない限り、
逆目を選ぶのは悪手だということだ。
ツカミの刺激を大きくしようとして、
逆目から入りたくなる気持ちはわかるが、
だからといって、その後が面白くなる保証はどこにもない。
だったら、はじめから、素直に順目でつかんだほうが、
その後の展開がしやすくならない?って僕は思う。
順目で展開する実力がないから、
逆目の逆張りで何かやったような気になっている、
というのが最も危険だと思う。
逆張りがアイデンティティーになってしまって、
続きがどんどんつまらなくなっていくだけのストーリーは、
稀によく見るよね。
逆目の方が実力がいる。
順目の方が、そもそも基礎力がいる。
両方出来るように実力を蓄えておくと、
それにようやく刺激を足して、
真の面白いツカミになることだろう。
2021年01月10日
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