2021年01月10日

ツカミは順目か逆目か

ツカミは難しい。
驚かせたり、刺激を与えることはツカミでやるべきことだけど、
本質ではない。
ツカミでやるべきことは、
「ストーリー全体に興味を持ってもらうこと」だからだ。


ツカミが刺激に満ちて、うおおおってなっても、
その後が面白いとは限らない。
その後楽しむものはストーリー、
すなわち事件と解決のラインであって、
刺激ではないからである。

つまり、ツカミというのは、
刺激を与えつつも、ストーリーの入り口として機能していないといけない。
刺激に興味が行くのではなく、
ストーリーの行く末に興味を持たせないと、
ツカミの機能としては不合格なわけだ。


ところで、
ツカミには順目と逆目がある。

順目のツカミとは、
「こうなるだろうな」と思わせて、
そうなったことで興味を掴む方法。
逆目とは、
「こうなるだろうな」と思わせて、
逆のことが起こることで興味を掴む方法だ。

順目のツカミの場合、
「予想通りにことが運ぶと、人は快感になる」
ということを思い出すとよいだろう。
「なんだ、予想通りじゃんか」ではなく、
「おっ。思ってた通りだ。俺の予想が当たったぞ」
にすることである。
「こうだろうな」と思うことがその通りになるだけで、
人は快感を感じる。
料理がちゃんと出来上がる快感と同じだろう。

しかしコツがあるとすると、
100%予想通りになってしまってはよくないということだ。
90%当たっているのだが、10%は当たっていなかった、
という塩梅にするのが良いと思う。
あるいは、
「それは解決したが、それが解決したことで、
事態はよりややこしく、大きな規模になった」
となるのがベストだ。
予想は当たって、展開したのだが、
そのことによってより大きなドミノになっている、
というのが順目である。

素直にそれを書けるようになったら一人前だと思う。


逆目は、予想を裏切ることでおもしろがらせる。
「これは予想がつかないぞ」という面白さだ。
一見順目よりも簡単なように思えるが、
こっちの方がより難しい。
なぜなら、
「予想を裏切ったその結果が、予想を下回ってつまらないこと」
がよくあるからだ。

逆張りをしていたら、面白い結論がなくなってしまった、
というのは最近の逆張り漫画にはよくあることだと思う。
逆張り自体は面白さのエッセンスではあるが、
逆張りした結果、ほんとうの結論が全然面白くないので、
ネタが割れた時点で最低につまらなくなってしまうことが、
稀によくあると思う。

ということは、逆目でおもしろくするには、
相当どんでん返しがうまくないと出来ないという事だ。
逆目で楽しませておいて、
しかも全貌が明らかになったときに、
「上手に騙されたなあ」と感心する者でない限り、
逆目を選ぶのは悪手だということだ。


ツカミの刺激を大きくしようとして、
逆目から入りたくなる気持ちはわかるが、
だからといって、その後が面白くなる保証はどこにもない。
だったら、はじめから、素直に順目でつかんだほうが、
その後の展開がしやすくならない?って僕は思う。


順目で展開する実力がないから、
逆目の逆張りで何かやったような気になっている、
というのが最も危険だと思う。
逆張りがアイデンティティーになってしまって、
続きがどんどんつまらなくなっていくだけのストーリーは、
稀によく見るよね。


逆目の方が実力がいる。
順目の方が、そもそも基礎力がいる。
両方出来るように実力を蓄えておくと、
それにようやく刺激を足して、
真の面白いツカミになることだろう。
posted by おおおかとしひこ at 00:12| Comment(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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