めんめんつさんが、
「手書きに挫折してタイピングが得意になった人」代表?として、
色々語っていておもしろい。
https://menmentsu.hateblo.jp/entry/2021/01/09/181146
論点は大体予想通りで、
それはつまり手書きに挫折する人は一定数いて、
タイピングが得意な人で手書きも得意な人ってあんまりいないよなあ、
なんて思っていたので、
うーん大体そういうことだよなあ。
せっかくなのでひとつひとつ検証してみる。
1 自分の字が汚く、萎える。
走るのが遅い人はランナーになれないのと同じかもしれない。
手書きが嫌な人はまずここでつまづくと思う。
ぼくが薬指や小指が動かなくてブラインドタッチにコンプレックスを持ったことと、
裏返しだなあ。
それでも僕がタイピングをやってるのは、
必要に迫られて。
手書きがどうしても必要な場面は現代にはほぼないけど、
データでよこせという場面はたくさんあるから。
僕は嫌々タイピングをやっていて、
それが改良の動機。
僕が最初ワープロに触れたとき、
「誰でもきれいな字や漢字が書けるから、
みんな偉そうになるのではないか」って思ったんだけど、
活字で語れるSNSが、果たして貴重な意見ばかりかというとそうでもなく、
ゴミを大量生産しているのもタイピングの罪のほうだろう。
書く経験のない人間に書く能力を与えてしまった感があるなあ。
手書きしかなかったら、
一々書くの面倒なこともするっとネットに流されるからね。
まあ表現は自由なんですが、「表現は自由」ということすら知らない人が、
相手を非難しまくっているのはよく見る。
で、そもそも「綺麗な字じゃなきゃ」ってのがおかしい。
読めりゃいいんだよ。それより内容だろ。
綺麗かどうか言える人のほうが、内容に対して言える人より多いから、
コンプレックスは増幅されるんだよなあ。
「おもろいやないか、字汚いけど」
って褒めるオッサンになりたい。
2 手書きは遅い
行書を教えてくれた国語の先生に感謝している。
板書もそういう崩し方をしてて、「書き順ってのは崩し方のためにあるんだ」
って教えてくれた。
楷書しか教えない学校教育は、書道で行書とか教えればいいのにね。
その後大学でさらに崩しまくっている教授の字とか見て、
「自分流でいいんだ」って思ったのが、
僕が「自分の字」を見いだせたきっかけかも知れない。
(うちの大学は変人の巣窟で、
画数を減らすために簡体字で板書する教授がいた)
僕の字は、他人に読める限界を超えているくらいの暗号だが、
900という常人の3倍の速度は捨てがたい。
漢直だし。
続け字だと、〇画という数え方になるんじゃなくて、
「ペンを動かす距離」(単位はセンチ?)になってくるんだよなあ。
たとえば「米」は一画でぐねぐねするだけだし。
清書には使わない、まず脳から出すことを目的とする手書きは、
みんなやったほうがいいと思う。
マインドマップとか、ほぼ日手帳とか、そういう道具だよね。
汚くていいんだ、ってわかったら、
早く書くこと、楽に書くこと、
という実戦を意識し始めるかもしれない。
3 間違えてはいけないから集中できない
清書に手書きを使うのは手紙のときだけかなあ。
手紙もめっきり書かなくなったけどね。
僕の原稿は中性ボールペンで、間違えたら二重線やぐちゃぐちゃで消す。
綺麗さではなく内容のみの文なので。
あとで見返せなくなるからそれをタイピングで清書する、
という手法にたどり着いた。
僕は国語と英語の成績がずば抜けていて、
物理が次によくて数学がそれに次ぐSF科学好きで、
社会が最低だったんだよね。
文系に進むか理系に進むかのときに、
社会がどうしてもだめだったので理系に行った珍しいタイプ。
関係のないことの暗記がどうしてもできない。
いまだに人の顔と名前は覚えられないし。
専門は人工知能で、プログラミングもやるけど、
「人の中の概念をどうモデル化するか」みたいなことをやってた。
理系と文系の間をつなぐような感じ。心理学も得意です。
同時に漫画と映画をやっていて、そっちへ就職して、
理系のことは仕事では使っていない。
で、ずっと一番だった国語に戻ってきているのかもしれない。
薙刀式をつくったのは、
「俺が使えるまともな道具をよこせ」で、
「ないならつくるわ」というクリエーター精神だった。
研究者的な興味もあったしね。そのふたつはちかいと思う。
HHKBや親指シフトが絶賛される理由がわからない。
僕の要求はもっと上。
もっと長時間高速で試行錯誤できる道具がほしい。
4 幼少からキーボードを触ってた
中学からPC-8001でBASICは触ってはいた。
日本語入力を触ったのは研究室配属から。
今はなきSunワークステーションだ。
日本語はwnnで、emacsとTeXか。
でもサイトメソッド。
会社入ってからはMacのマジックキーボード一筋で、
ずっとサイトメソッド。画像や動画の処理しかしてないしなあ。
40過ぎて小説書こうとして、
「オイ、キーボードなんて使えねえ道具だぞ」
って思った。
たぶん楽器と同じくらいつらい。
5 姿勢がつらい
実は手書きをするには一番姿勢がだいじで、
手書きが下手な人は例外なく姿勢が悪いんだよね。
机面が胃の高さにあるくらいが最適で、
あとはまっすぐ座ればいいだけなんだけど、
ほとんどの学校の椅子と机は個人にあっていない。
一回体ができたらどんな机でも大丈夫になるんだけどなあ。
逆に、まだ僕はベストの打鍵姿勢がわからない。
これだけ試行錯誤してもどこかが痛くなる。
手書きだったら連続8時間は大丈夫な自信はあるが、
タイピングだと2時間持つかなあ。
6 文章力が求められないキャリア
求められる仕事に就いたのは幸せかもしれないなあ。
理系でない社会って、
「真実を簡潔に示したもの」が読めないんだよね。
文字数を減らすとそっけないとか言われる。
数学的なシンプルな美しさがわからないことが多い。
真実だけが世の中にあり、理解はそれを組み合わせること、
みたいな能動的理解が分からないみたい。
これは理系以外の社会に出てはじめてわかったこと。
だからいつも文章を書くときは、
理系を対象にしないように心掛けている。
タイピングが得意な人は、手書きで脱落した確率が高いと思う。
手書きが得意な人は、タイピングが効率悪すぎると思っているはず。
つまり、両者は互いのことを理解していない。
僕は、タイピングを手書きに近づけたい。
そのとき、
「手書きが苦手だったがタイピングが得意な人」も満足させたいんだよなあ。
2021年01月11日
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