2021年01月18日

自動詞を他動詞に変更するレッスン

映画とはアクションである。
アクションとは動詞である。
シナリオとは、物語を動詞の組みで書いたものだ。

ところで、動詞には自動詞と他動詞がある。


目的語があるのが他動詞。ないのが自動詞。
シナリオの初心者は、
自動詞で書きがちだ。

自動詞はストーリーにならないことを覚えておこう。

走る、立つ、さわぐ、思う、決断する

などは一見シナリオでよく見るアクションではあるが、
自動詞である。
これはストーリーではない。

ストーリーとは、
目的語を持つ動詞で記述される。

Aを殴る、Aに向かって宣言する、Aを説得する、
ドアを開ける、椅子を引く、Aに向けて出発する

などである。

なぜ目的語が必要か?
ストーリーとは、
「ある目的のために行動すること」だからだ。
目的のない行動はストーリーではないのだ。

「散歩していたらUFOに出会い、逃げた」
はストーリーであるが、
前段の「散歩する」は動詞であるがストーリーではない。
ストーリーの導入でしかなく、本体ではない。
本体は「UFOから逃げる」だろう。

他動詞は目的語を持つ。
この目的語は必ずしもストーリーの目的とは一致しないが、
ストーリーの目的と繋がった動詞であることは、
見ている人間なら理解できる。


シナリオから自動詞を削除すれば、
全部他動詞になっていいシナリオになるだろうか?
そうとは限らないだろう。

もっと根本的な部分、
あなたが自動詞と他動詞を使えるのか?
ということと関係していると思う。

ということで本題のレッスン。



「走る」を例にする。

「走る」は自動詞だ。
これを他動詞にしてみよう。

そもそも、「走る」ストーリーはあるか?
最も簡単なアクションだから、
どこの映画にも出てくる。
しかし走るのは手段であり、目的ではない。

メロスは走りたくて走ったわけではなく、
約束を果たすために走ったわけだ。
つまり走るのはなにかを達成するための手段である。

「走り出したくなるバイク」や「走り出したくなるシューズ」は、
CMでありそうだけど、
これは衝動であってストーリーではない。
ある目的を達成するために走るのではなく、
走ることが目的化しているからね。

だから、走るストーリーは存在しない。


これを他動詞に変えてみる。
動詞を変形してみよう。

「走らされるストーリー」はありそうだ。
何かの目的のために、誰かに無理やり走らされる話。
走れメロスも、走らせられたストーリーだ。

「走らせるストーリー」もありそうだ。
「死せる孔明、生ける仲達を走らす」故事もある。
策略に嵌めさえすればいいのだから、
いくらでもバリエーションは作れるだろう。

「一緒に走るストーリー」もありそう。
何のために、走ることが何を意味するか、で内容は変わってきそうだ。

「Aに向かって走るストーリー」もある。
Aはなんだろう。解放だろうか。明日か。
ほとんどの走る場面は目的地がある。
走るのは手段であり目的ではない。
目的の達成のために走るという手段を取るだけで、
飛行機が使えるなら飛行機かもしれないわけだ。


このように、
目的語を持たない自動詞を、
無理矢理他動詞に置き換えることによって、
全く別のストーリーが浮き上がることがわかる。

自動詞「思う」を、
他動詞「Aを思わせられる」にすると、
急に思想統制の話になって面白そうだね。


自動詞は、誰にも迷惑がかからない。
他動詞は、目的語に迷惑をかける行為だ。
変形したり、切り刻んだり、台無しにしてしまう可能性のある動詞である。

その迷惑をかけてまでも、
やるべき動機や必要があるわけだ。



自動詞は自分しかいない。一人称だ。
他動詞は他人かモノがある、三人称である。

自動詞を使うな。
使うなら、無理矢理多動詞にしてみると、
発見があるぞ。
posted by おおおかとしひこ at 00:26| Comment(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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