まだ見てなかった、ミッシングリンクを埋めている。
僕が大学生だった90年代初頭、
映画好きはみんなこのポスターを貼ってた。
僕はいまいちピンと来なかったので、通り過ぎていた映画。
(フランスなら断然ジュリエット・ビノシュ派だったので)
まあ見なくて良かった。
こんなんに影響されたら人生曲がるわ。
ベティの造形は素晴らしい。
モデル出身で初主演となる、ベアトリス・ダルが堪らない。
スタイル抜群で、おしゃれで、わがままでファムファタール。
水原希子にちょっと似てる。
違いは演技力かね。
そしてストーリーは完全にご都合主義で、
しかもメアリースーだ。
「すげえわがままで振り回されるいい女と、
セックスして暮らしていくストーリー」
としか言いようがない。
岡崎京子の漫画を思い出す。
家は燃やすわ強盗するわやりたい放題で、
書いてた小説を女が勝手に読んで、
「天才」って感動してタイプして出版社に送ってくれる。
この、「自分の書いた作品をものすごく集中して読んでくれる美人」は、
物書きの夢の一つだろう。
その願望を余すことなく描いている。
学生時代にこんな願望丸出しの映画を見てしまったら、
その後ずっとこれに憧れて生きていっただろう。
あるいは熱病のように浮かれて、すぐに忘れるか。
そう、若さとは熱病のようだ。
おっさんになって思うのは、
「若い頃にこんなただれた生活をしてみたかったなあ」
ということだろうか。
いや、リアリティがなさすぎてねえ。
そう、この映画とは、
リアリティなぞほっといて、
願望をいかに美しく描くかに全力を振っている、
おそるべき若い映画だ。
フランス人の絵画のような絵作りはたまらなく美しい。
その後の○○に影響を与えたな、というシーンが盛りだくさんで、
これは真似したくなるものでいっぱいだ。
ラストシーン、一人で孤独に描き続ける姿、
イマジナリーベティと会話する孤独な男こそ、
作家の本性である。
それこそが主題のような気がしなくもない。
ベティが狂っていく以降は漫画みたいで、
殺したあとも何もお咎めなしで、
自殺するのかと思いきや飯食いやがって、
という、
もはやオールご都合主義で、
やっちゃいけないこと全部やってる映画だとすら言える。
ただ、ベティはかわいい。
それと引き換えに、
妄想に浸れる作品とでも言えようか。
80年代のフランスラノベといっても過言ではない。
ラノベはこれくらいオシャレに作れば、
見れるものになるという例かも知れない。
こういう熱病は大学生までに済ませておかないと、
こじれた大人になってしまうのかもしれないね。
こじれた大人たちは、この映画を見ることをお勧めする。
まるで鏡を見るように、痛々しい。
2021年01月20日
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