2021年02月01日

キャラクタービジネスの誤り

キャラクタービジネスは旨味がある。
何せ絵は歳を取らない。
リアルな役者は10年も経てばビジュアルも立ち位置も変わってしまう。
ガンダムは40年持ってるし、
ウルトラマンやゴジラはもっとだ。
ビジネスをやる側から見たら、優秀な稼ぎ手である。

だがしかし、そのキャラクターをどのように見るか、
そのブランドを見誤るとそのビジネスは即死する。


どうやら、件のソシャゲはラブライブじゃないかと思う。
アイマスとかガルパンとか、
ついでに坂道グループも含めて、
あの手のものの区別がつかないので、
そのどれがどうという議論はできないのだが、
共通するのは、
キャラクタービジネスであることだ。

(三次元のアイドルが歳食ったら卒業するのは、
キャラクターを維持できなくなるからだね。
その点二次元アイドルは長期的な稼ぎ手である)


キャラクタービジネスは、
「人気キャラのABC…を集めて売ろう」
と定義しよう。

既に人気のあるABC…に乗っかる商売である。
つまり、「人気を出す」には関与しない。
すでに人気のあるABC…を「買ってくる」商売だ。

だから、
ABCが、「何故人気があるか」を、
分析してないことが多い。

線がかわいいから、人気声優が声を当ててるから、
ビジュアルや色が、
などの、「そのキャラの見た目」しか見てないことが、
非常に多い。

これは、ブランドではない。

しょうもないブランド信仰は、
「既に確立されたブランドを、ははーっと受け入れる」
という無思考である。
しょうもないブランド商売は、
これを拡散し続けることで儲ける。


なぜそれは人気か?
キャラクターとは何か?

間違ったキャラクターの捉え方は、Beである。
「それがそういう状態」で捉える。

しかしそれでは何故そのキャラクターが人気なのか、
全く意味不明だろう。

たとえばタモリの人気は、
「オールバックのグラサンで博識の人」
だからではない。

キャラクターは何故人気が出るのか。
Doが描かれるからだ。
つまり、キャラクターが輝くのは、
ストーリーの中で、である。

こういう状況で、こういうことをする(した)という過去が、
そのキャラクターの本質になる。

タモリは、グラサンかけてるから人気なのではなく、
「何十年もいいともで司会をし続けた、面白トークの人」
「でありながら、タモリ倶楽部などのマイナー実験番組を貫いた、
裏表の深い人」
だから人気なのだ。

つまりキャラクターはBeではなく、Doだ。
Didだと言っても良い。
タモリは単なるDid、つまり過去の人ではなく、
ブラタモリなどでDoを続けている。
だからキャラクターとして人気なのだ。

繰り返すが、Be、「オールバックでグラサン」が人気なのではない。

同様にガンダムも、
「トリコロールでツノが生えてる」から人気なのではなく、
「宇宙に進出した人類が、
これまでの無理解による争いを凌駕する、
新しい理解力を得た可能性の物語」
の象徴だから人気なのだ。
(僕はファースト原理主義者なので、Z以降はここでは無視)


キャラクターとは、BeでなくDo(Did)である。
ブランドもそうだ。
僕が理解するファッションブランドはシャネルくらいだけど、
シャネルは黒と白のBeがカッコいいのではなく、
「働く女が、女だからと馬鹿にされないようなハイファッションを用意する」
というそのDoが素晴らしいのだ。
よく、ブランドとはストーリーだ、
と言われるが、こういうことだ。

どういう状況に対して何をしてきたか、
今どういう状況に対して何をするか、
というDo、Didがその本体であり、
Beが大事なのではない。

たとえブサイクであっても、DoやDidが素晴らしければイケメンなのだ。
イケメンとはBeのことではない。DoやDidのことである。



誤ったキャラクタービジネスは、
このブランディングを履き違える。

この、Didを継承できず、Beだけでビジネスをしてしまう。
次にするべきDoが、かつてのDidと一貫していない。
だからブランドをぶち壊す。


以前僕が激怒した、ブランドを壊した例は、
新橋の怪獣酒場だ。

入り口にデカイジャミラが、ローマの真実の口のように置かれていて、
「怪獣でない人は噛みません」といって手を入れるイベントがある。
ジャミラはそういうキャラじゃないがまあいいか、
と思って中へ入り、ふと振り返ると、
そのジャミラを雑巾で拭いてる店員を見て驚いた。
「溶けるやろ!」と、ジャミラを好きなら思ってしまうからだ。
(ジャミラは元ソ連の宇宙飛行士。
宇宙の事故で放射線の強い乾いた星に不時着、
そのため皮膚が乾き切った異常怪獣になった。
地球にやっと帰ってきたら、水を浴びせられて溶けて絶命するという、
悲劇の怪獣である。
そのジャミラを水拭きするとはどういうことやねん!
お前、ジャミラの誤解されたままの哀しみを、
ここでも繰り返すのか!
いや、知らんだけやろ!
ついでにコップのフチ子でジャミラがあって、
そんな命がけのグッズ買えるか!この無知!
と激怒した)



このように、
ブランド、つまりDidやDoを知らずに、
Beだけでビジネスをすると、
簡単にキャラクターは崩壊する。

そしてその瞬間、
キャラクタービジネスは信用がなくなるわけだ。



キャラクタービジネスをする人は、
そのブランドを深く知らないし、
なんならそのブランドが好きでもない、
ただの右から左への商人ですらある可能性がある。

なぜ100ワニが炎上したのか?
「ごく普通のワニが最後にちょっとだけいいとこ見せて死んだけど、
でもごく普通の日常ってよかったよね」
というブランドに対して、
「生き返りましたー!みんな俺のグッズ買って!てへへー!」
って帰ってきたところにある。
ブランドを全否定して、
真逆のキャラクターを持ってきたところが、
このビジネスの誤りである。
(映画、たのしみですね!)

もし100ワニのキャラクターを分かっていれば、
天使の姿のワニがフレームになった写真立て
(ここにあなたの今の、かけがえのないしょうもない写真を飾ってね)
とかが商品になるべきだったろう。



さて、もとに戻ると、
ラブライブなのかアイマスなのかは分からないが、
おそらくはそのキャラクターの、Beではなく、
Did、歴史に反したのだと思われる。

このようなDidをしてきたキャラクターに対して、
このDoまたはBeはねえだろ、
というようなことが起きてるのだろう。

キャラクタービジネスするやつは、
その辺のところを分かってるやつと、分かってないやつがいる。
今回の件はハズレだったようだ。
そういうのは、潰していけ。


僕は漫画「風魔の小次郎」の大ファンであるが、
パチンコにしたやつを許していない。
なんも分かってない奴が、
エフェクトバトルの聖剣戦争やってんじゃねえよ。



もし抗議をするならば、
「○○はAのところが良かったのに、
今回はBという酷い出来で残念です。
僕はAの続きが見たいのに」
というフォーマットにしとかないと、
「Bはダメか、じゃCにしよう」と対応されるぞ。
posted by おおおかとしひこ at 14:25| Comment(8) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
初めてコメント致します。

炎上しているのは正にラブライブのソシャゲで、余りにも的確な指摘に溜飲が下がる思いです。
記事本文でご指摘の通り著しく初期設定に反するキャラの行動に加え、倫理観の欠如した作品にそぐわない内容(明確なイジメや他国の政治を揶揄するかのような描写)が際立つ上、1章ごとに矛盾が生まれるなど最早脚本と言っていいのか?の破綻ぶりで読んでいて感覚が変になりそうでした。
どうも、版権を借りているゲーム運営元がブランドに乗っかり新しいことをしようとして大失敗した可能性が高いようです。

これから運営の企業各社に改善要求をするつもりですが、参考になる記事を載せて下さりーファンとして厚く御礼申し上げます。
Posted by 名無しのラブライバー at 2021年02月01日 23:02
名無しのラブライバーさんコメントありがとうございます。

詳しく分からない状態でエスパーしてみたのですが、
大体素人がやる失敗のパターンの範囲に入ってたようですね。
これを乗り越えてプロに成長していくのですが、
いきなり大作?を任せる任命側にも責任があるでしょう。

とくに本線じゃなくてスピンオフとかでは、
メインスタッフの手が足りない→別会社に振る
→なんかデカイ仕事が来たけどよくわかってない
→よーしこの枠組みを活かして、俺たちなりの○○やったろ
→大失敗
という例はよく見ます。典型的なのれん拡大の失敗ですね。
ブランドが守れなかった例です。
Posted by おおおかとしひこ at 2021年02月02日 11:12
これはつらい(笑)。
ちょっと身に覚えがなくなもない事例なので(笑)。

→なんかデカイ仕事が来たけどよくわかってない

※この間が問題では?

→よーしこの枠組みを活かして、俺たちなりの○○やったろ

よくわかるまでの研究時間がたぶん足りなかったのでは、と推察します。
オリジナルが膨大なコンテンツ量なので、脚本の担当者が把握する時間を与えられなかったか。

または把握できてもオリジナルのよさを理解して抽出する能力がなかったか。

後者の場合なら担当者の問題ですが、前者なら座組というか仕事の振り方にも問題があるのでは?

メインスタッフの手が足りない

別会社に振る

別会社がさらに外部のライターにふる

ライター、「来週くらいから書いてよ」といわれあわてて調べながら書く。
よくわからないので(別会社の人も実はよくわかっていない)、結果「俺たちなりの○○」をやってみようという流れになる。

みたいなパターンはよくあると思います。

こういう場合はライターとしてはどう処すればいいんでしょうね?(笑)
Posted by ふじ at 2021年02月02日 13:28
>ふじさん

実のところ、「ここはそういうヤバい現場かも」
と気づくのは初手では大変難しいと思います。

僕は初回打ち合わせで、なるべく沢山のことを聞きます。
二時間じゃ足りないかな。
その人の上のレイヤーのことも聞きます。
このビジネスはどこを目指しているのかというゴールイメージも。
で、答えられないとか、初めての人に上手に説明できない現場は、
たいていヤバいです。
その初手でなるべく気付けるようにしています。
あいつらは振るだけで痛くも痒くもなく、身を削るのはこっちなので。

ちゃんとした現場なら、彼らも身を削ります。
疑問に思うことがあれば上のレイヤーをつつき、
問題があれば抗議もしてくれる。
膨大なコンテンツを勉強する時間がほんとうに必要なら、資料を揃えて、一ヶ月はくれるでしょう。

そうなってないのは、たいてい突貫の現場です。
事故が起きないわけがない。
土木工事なら人が死にますが、ライティング現場で死ぬのは僕らですね。
最悪鬱自殺コース。(野沢尚の例もあります)

ということで、
「初手でこの現場はどうか、直接会って長い話をする
(コロナで今は難しく、だから爆死案件は増えてると予想)」、
「どうもヤバいなと思ったら、手綱を離して、
上から依頼されたことだけをクリアして仕事として仕上げる(諦める)」
がいいんじゃないでしょうか。
その人から仕事を二度ともらう必要はないと僕は考えます。
まともな現場を探しましょう。


その作品のファンであった場合は大変な悲しみがあるため、
命をかけてまで良くしようとしてしまうので、
命と仕事のバランスを取るのが大変になりますがね。
若いうちは命をかけてしまいがちです。


オリンピックがいい例でした。
結局は中抜きして現場が死ぬということが、
今の日本のビジネスの縮図。
(もちろん典型的でない、頑張ってる現場もあるでしょうが、
それは報じられないので把握できない…)
その悪しき枠組みに乗っからないことです。
Posted by おおおかとしひこ at 2021年02月02日 13:47
フリーランスだと「断る」「逃げる」「お茶をにごす」のは割と容易ですが(後から注文をもらわなくてもいいという覚悟さえ決めれば)、企業内だと難しい立場の場合も多いでしょうね。
「断る」「逃げる」「お茶をにごす」などのオプションのある立場に自分を置くのって重要だなあ、としみじみ思います。
Posted by ふじ at 2021年02月02日 14:28
>ふじさん

僕は社内にも二度と仕事をしない人はたくさんいますよ。
小さい会社だとトゲトゲするでしょうが、
そこそこ大きい会社なので会うこともないのはメリットです。
「あいつ断らねえぜ」になると、
ヤリマンと見られるでしょうね。
どんどんエスカレートします。
Posted by おおおかとしひこ at 2021年02月02日 14:42
大岡先生、はじめまして。
件のゲームについての論考を読みましたが、あまりにも的確な理解に驚きました。
まったく前提知識が無いと思われるのに、これほど問題点を的確に把握できることに脱帽するばかりです。
確かに、あのシナリオの問題点の多くは、キャラが何故そんなことを言い出すのかわからないということに尽きます。
「私は他人に自分の考えを押し付けていた。私は反省した(笑)私が安心するために規定人数の二倍集めろ」
記念すべき第一話のオチがこれ。一体、何を反省したのでしょう?
全編にわたってこのノリが繰り返されるので、感情移入も何もあったものではない。
リライトの件にしても、シナリオを書き直した節があるのですが、悪い意味で確定の未来と不確定な未来の予想や期待がずれているんです。
簡単に言うと、主人公たちは監視委員なる生徒会の一部に練習等の妨害を受けていたのですが、
なんと最新話では妨害は形だけで、その理由は元々のファンだからということになっています。
要は、妨害といえる妨害もなかったといいたいらしいのですが、じゃあ今までの話は何だったんだ…?
もうめちゃくちゃです…
まさに、見たい場面を繋げても、ストーリーにはならないというところで、
同じ話の中では「は…?何考えてるの?」となり、話をまたぐと過去が改変されている。
我々は下書きを見せられているのかと疑いたくもなります。

上記のようなモヤモヤがあったのですが、先生の論考でそれが晴れた気がします。
問題点を解説していただき、ありがとうございました。

追伸:ジャミラの件には笑いました。
雑巾はまあ、拭かないわけにもいかないだろうから仕方がないとしても、コップのフチ子は酷い。
風魔の小次郎にしても心中お察しします…
自分が関わったのならなおさらでしょう。
個人的には車田作品ならB'TXが好きなのですが、こういうことがあると展開が止まっていることは悪いことなのか考えさせられます。
Posted by コジマ at 2021年02月03日 00:04
コジマさんコメントありがとうございます。

件のスレを見てもさっぱり話が見えないので、
「よくあるダメなシナリオの典型」だなとエスパーしただけです。

監視委員会なるものが悪役なら、
それを倒す(追放する、悪事を白日の元に晒すなど?)話になるはずですが、
この書き込みを見る限りそうもなってなさそう。

脚本の専門用語に、センタークエスチョンというものがあります。
「その質問が最初の方で提示され、
それがイエスとラストになることを期待して見る」もののことです。
「○○はアイドルとしてデビューできるのか?」
「ライブは成功するのか?」
「悪役は倒せるのか?」
「仲直りできるのか?」
「アイドルとして一人前になれるのか?」
などがあり得そうです。
観客はそれがイエスとなるのかノーとなるのか、
感情移入しながら、ハラハラしながら、イエスとなって欲しいけど、
ノーだったらどうしよう、などとヤキモキしてみるのがストーリーというものです。
おそらく、そんなものすらないような、基礎のない脚本ではないかと想像します。


ひとつだけ脚本家に同情するとすると、
脚本家が本来やろうとしていたこと(面白いとは限らない)と、
運営サイドがやろうとしていたことのずれが大きく、
増築改築していった結果、
ウィンチェスターハウスみたいな辻褄のあってないシナリオになったのかも知れません。
それかクスリやってるかのどちらかでしょう。


ちなみに車田正美は瞳の描き方が変わってから生理的に無理で、
BTXもサイレントナイトもリンかけ2もちゃんと見てません…
Posted by おおおかとしひこ at 2021年02月03日 01:10
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