2021年02月21日

語り手の動機

普段は登場人物の動機の話をしているが、
もっとメタで大枠の話をしてみる。

巷に溢れる色んな話を、その語り手は何故語りたいのか?
そしてあなたは、何故その話を語りたいのか?


とりあえず自分の動機について、
いくつか書き出してみるといいと思う。

ハリウッド映画ならば、
「一攫千金」は動機になるかも知れないが、
日本の市場ではそうもいかなそうだ。
一攫一金程度にはなるが、
千金ほどは稼げないのが実情だと思う。

日本映画協会の最低脚本料は300万。
年一本じゃ専業が無理になる。
ちょっと非現実的だ。
二次利用でいえば、
劇場の興行収入がどんなに良くても1円も入らない。
DVDや放送配信でようやく著作権料が入る。
それは、取引額の1.75%だ。
ちなみに小説や漫画では、30〜10%だ。そりゃみんな小説行くわ。

5000円のDVDで87.5円。
10万部は大ヒットで、普通1万部出ない。
1万出たとして87万。いやあ渋いね。

大ヒットしない限り、こりゃバイトしながらだよな。

小説なら10%としても1000円で100円。
同じく1万部で100万円。これもバイトしながらだな。



では、
語り手のモチベーションはなんだろう?
何故あなたはその物語を語りたいのか?

「俺はすごいと思われたいから」
というのが0でないことは認めることだろう。
承認欲求、あるいはもっと上の「尊敬されたい」
みたいなことか。

これ自体は否定しない。
芸術を志そうとするやつは、芯にこれがないとやってられない。

ダメなのは、
「いいかどうか分からないけど、いいと言われたい」
という微妙な承認欲求だね。

せめて「お口に合うかどうか分かりませんが」
であるべきだ。
こっちは面白いと思ってんだ、判断してくれ、
というくらいの気概がないものは、
人を引き摺り込んで影響を与えるだけの引力がないと思う。



僕はそれよりも、
「こんなに面白い話があるんだよ。
みんな聞いてよ」
が一番だと思うのだ。

「面白い」の内容はなんでもいい。
価値がある、爆笑、号泣、興味深く知的である、
人類に反省を促すほど、トリックが面白い、胸キュン、
などなどだろう。

それは何か?ってことだ。

「世界を変えるほどの凄い思想があり、
その普及として物語を書く」のは大抵間違いだ。
それは思想家や宗教家の仕事だ。
思想の押し付けは物語的ではない。
物語形式でない、新書でも書きたまえ。

そうではなくて、
「この場面のこのセリフがいいんだよ」とか、
「ここの行動が最高なんだ」とか、
「こんなに泣けるんだ」とか、
観客と一緒にファンになるような、
そういう動機がいいと思う。

つまり、
「僕はこれが大好きなんだけど、
君もこれを好き?」が、
一番動機になるべきだ。

小説や漫画を誰かに貸す感覚だと思う。

その時の動機は、
「この作者はえらくてすごい」
「この思想に感化されるべきである」
ではなくて、
「この場面の良さを一緒に語りたい」
だと思うのだ。

「すげえいい話があるんだよ。聞く?」
と、あなたと話は分離させているべきだ。


なぜなら、そうなっていない限り、
客観性などないからである。

客観的にいいものだからといって、必ずしも覇権を取るわけではない。

しかしいいものはみんな欲しがっている。
その時に、主観的にいいものを勧めても押し付けだ。
客観的にいいものを勧めるべきだろう。

世の中はあなたの勧めるものになんの興味もないし、
あなた自身にもなんの興味もない。
ただ、その話が面白いかどうかにしか興味がない。

興味を持ってくれればいい方で、
大抵は「忙しいので」と接触を断るのが普通だ。

嘘だと思うなら、
渋谷であなたの脚本を読んでくれる人を探せばいいのだ。
誰も立ち止まらないことを一日続ければ現実はわかるだろう。


人が興味を持ってくれ、
しかも満足する話とはどのようなもの?

「こんないい話があるんだぜ」と、
ニヤニヤしながら教えてくれる人だけ、
その話を聞く賭けをするだろう。

なんなら、あなたが語り手でなくてもいいんだ。
別の人が同じ話を語ってもいいんだ。
そんな時でも面白い話がほんとうの話だ。


なぜあなたはその話を語りたいのか?
書き続ける動機は何か?

まずあなたの脳の中から「外に出してくれ」
という声に従ってあなたは書くだろう。
しかしそれだけではただの吐瀉物である。

それがめちゃくちゃいいというのなら、
そのファンと一緒に何回でもそれを楽しめるようなものを作り、
あなたはその伝導者に過ぎないと思うことだ。




あ、ドラマ風魔の小次郎は、
何回でも全力でお勧めできますよ。
僕は10話(告白)が最高に好きです。
5、6(贋作、霧の中)はいいよね。7(青春す)も最高だし、
1、2のまるで原作にありそうな滑り出し(殆どオリジナルなのに)もいい。
あ、12と13の最終回前後編、11(燃やせ命の炎)もか。
9(投了するか?)もニクイよなあ。
3(竜魔不知火戦)、4(白羽陣)、8(サイキック対決)も、
捨てがたいシーンいっぱいあるよね。
とにかく全部だな。笑

ちなみに映画いけちゃんとぼくは後半がお勧め!
第二ターニングポイント、ヨシオがみんなの長所を割り振るところがいいです。
隣町へ一人で冒険するところからは完全オリジナルで面白いよ。
前半は揉め事の傷跡が残ってるので話半分でよろしく!
posted by おおおかとしひこ at 00:11| Comment(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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