どっちやねん!
こういうのを悪いデザインという。
じゃあどうすればいいのか考えよう。
混乱の原因は、
「矢印を二つの意味で使っていること」にある。
紫の矢印は、手で裂く方向の意味で、
白の矢印は、ここに始動点がありますよの意味だろう。
白の矢印のところのつまみを持ち、
紫の矢印の方向に引っ張るのが正解なのだろうが、
ぱっと見それを理解するのは困難だ。
理由は上に述べたとおりで、
同じ記号(矢印)を、
運動方向と注目点の異なる意味で使っているからだ。
そしてそれは表現者の恣意的な選択で、
逆に取られることを想像しきれていないわけだ。
想像するに、
最初は紫の矢印だけがあったのだろう。
しかし左に注目して、ツマミが見つからないというトラブルがあり、
ツマミの位置を明示しては?
という改善要求が出たのだと考える。
そこまでの問題意識は良いとしても、
具体策に問題があったわけだ。
この具体に問題があることは気づいていたと考えられる。
紫の矢印の根元にスリットのスピード感を足して運動を暗示したり、
紫より目立つであろう白を先に見ることで、
視線の順番をコントロールしようとしたことである。
だが、姑息なる愚人の付け焼き刃であった。
頭の悪い改善策は、
「出来るだけ前のを利用して今回を乗り切ろう」
が特徴だ。
今回は前の矢印を利用して、
新しい矢印を追加すればいいのでは?
と考えてしまったわけだ。
それが異なる意味の矢印だということに気づかない、
想像力がなかったことが敗因だ。
図像デザインなら防止法がある。
簡単な絵を描いてみるのだ。
それで事前に気づけないならば、
主観的な「この矢印はこの意味だ」の恣意性を、
客観的に見れていないということで、
その程度の判断力の人間は、
表現のプロになる資格がない。
さて、ではどのような表現が正解だったろう?
シンキングタイム。
以下僕の解。勿論別解もあり得ると思う。
右端にナカアキのマルを描く。その中心に裂けるツマミの部分があるようにする。
そこから左へ矢印をひっぱる。
ただし矢印の先はマルよりかなり小さめにする。
また、終点は左端ではなく、真ん中付近で止めておく。
矢印が注目点に見えてしまうなら、
細長い三角形でもいいと思う。
裂けた最終形を想像しやすいかも知れない。
達成すべきことはふたつ。
第一にツマミに目をいかせること。
第二にそこから左へ裂く動作を誘導すること。
これらが文字を使わずに図像だけで表現できて、
ようやくデザインになると思う。
デザインは、多くの人が誤解しているような、
カッコいい形をつくることではない。
デザインの目的を100%達成させること、
ノイズの発生を0にすることが、
デザインの根本である。
もしそれでも伝わらないなら言葉で説明すればいい。
(右のツマミを引っ張り、左に引くと裂けます)
まあそしたらデザインの敗北なんだけどね。
別解をひとつ。
印刷面を裏にする。
左にツマミがあり、右へ裂くようになる。
(日本人の多くは右利きだから違和感があるかもだが)
ツマミの部分に「ここから」、
右に矢印と「裂く」と文字で表現する。
文字を読む方向と運動方向を合わせた別解。
美大のデザイン科の課題としてもいいかも知れない問題だった。
なぜこれを脚本論で取り上げたのか?
リライトの時に、
「今ある何かを再利用してなんとかならないか」と、
白い矢印を足してしまうようなことを、
あなたはやってないか?
と自覚するためだ。
初見の人に、誤解のノイズが0で、
労力少なく伝わる方法は何か?
を常に考えるのだ。
あなたが楽をする方法を考えるのではない。
大岡さんのアイデアのように文字ではなくデザインで分かりやすくするのはすごく難しいですね。
日頃パワーポイントの作成にも四苦八苦しているので、
非常に参考になりました。
視覚デザインは文字を使ったら負け、というのは基本ですね。笑
だったら最初から文字で説明をつけときゃいいだけなので。
視覚デザインは、文字よりも速く、本質的な情報を伝えることができます。
身の回りのデザインがなぜその形になってるのか、
ただカッコいいセンスではなくて、機能しているデザイン、
というものを探すのも面白いですよ。
(分かりやすいのはピクトグラムやアイコンですかね。
文字を使っていないものを探すと面白いです)
で、映画は視覚的なので、これを使って表現するわけです。
主に監督の仕事ですが。
悪役が悪そうな格好で悪そうな場所にいることすら視覚デザインですね。
脚本で可能なのは、行動で色んなことを示すことです。