「任意の文章で指の軌道が最小になる」
が、配列のひとつの目標だと思う。
これまではキーボードは平面だったが、
3Dを考えると、それだけではない変数が入ってくる。
僕は3D型のキーキャップで、
指の動線を最小に近づける研究をしているわけだ。
何が最小の条件かは、
色んな見方があると思う。
随分前に平面版で「指の運動距離を計算する」アルゴリズムで、
「ホームポジションに構えた前提で、
中段は移動距離0、
上段下段を打った時は一回一回ホームポジションに戻るものとする」
という条件で計算してるものがあって、
随分荒い近似だなあと思った記憶がある。
そんな奴おらんやろ。
たとえばqwertyローマ字で「ou」を打つ時、
そんなことはしないと思う。
ホームポジションKLに最初いたら上段でアルペジオしたあとは、
上段に指を残すと思う。
次に右手が中段を打つまで上段位置キープではないかな。
あるいは、ちょっと考えようかというときに、
中段位置にリセットするくらいじゃないか。
ハウスに帰ってくる感じ。
薙刀式動画を見てわかったことは、
自分の思考の単位では、
「指は前に打った位置をキープしている」、
思考の単位が終わり次の思考単位が始まる間、
つまり考えている間は、
「ホーム位置に待機する」
を繰り返していることだった。
うまく打鍵速度=思考速度の関係が続けば、
極論すればホームポジションに一度も戻らず、
「前に打った場所で指待機」が延々続くのではないか、
という仮説を立てている。
(両者の速度は常に揺れているので、
そんなにばっちり合い続けることはなさそうだけど)
もっとも、中指が上段を打ち、
そのあと薬指が下段を打つならば、
手の形は下段を打つ形になって、
中指は中段当たりに下がって待機、
みたいに、手の動きもそれに加わって来るだろう、
と予想している。
で、ようやく本題。
これは平面での仮説だ。
3Dだとどうか?
手は平面キーボードのように動かない。
複数の関節で動くから指は複雑で立体的な曲線を描く。
(指だけでなく、手首、肘、肩も使っている)
だからそれに合わせた形になるべきだ、
というのが3Dの考え方の基本だろう。
自然で楽な曲線を探すことが、
3Dキーボードのエンドゲームだ。
で、平面の時と同様、
「指は最後に打った場所に留まる傾向がある」
ということに気づく。
留まる時間は秒単位よりも短いかも知れない。
思考の単位内で、同じ指が二回使われたり、
先の例のように手自体の移動で指先が前の位置から離れることもある。
たとえば薙刀式で、
「あるわけがない」を打つときのことを考える。
【】をセンターシフト、()を同時打鍵として、
JI【L】S(FJ)MK
の運指だけど、
右中指を考えると、
上段のIを打った後、中段ホームには戻らず、
「ない」のMKを打つまでは上段に留まっているんだよね。
直後のLを打つ時に下がるかと思うけど、
やや下がるだけでKの上には来ない。
「伸ばした指をもう一度縮めることこそエネルギーの無駄」と、
我が肉体は考えているようだ。
だから、
「次動くまではその位置キープ」が原則になっているのだと考えられる。
こんなことに気づいたのは、
3Dキーキャップで、たまに指がキーキャップにぶつかることがあるからだ。
指はエネルギーを最小にするために、
なるべく低空を移動しようとする(撫で打ち)。
この時に指の低い曲線移動に対して、
キーキャップの作る3D曲面があっていないと、
ぶつかるぞ、ということに気づく。
で、
「前にいた指の位置から次の位置を結んだ最小軌道」
を指が行きたがっていることに気づいたわけだ。
じゃあ「前にいた指の位置」はどこだろう、
と観察を始めたのだ。
キーキャップの3D曲面は、
ただ指を置くための曲面だけでなく、
運動に適した曲面でなければならない。
「適した」に、どのような条件が必要かはまだ分かっていない。
・最小軌道で指がぶつからないという禁則条件
・次のキーへ渡る時に始動しやすい角度
・前のキーから渡ってきた時に押しやすい角度
あたりは直感的にわかるが、
あとは経験でやっていくしかない。
たとえば人差し指伸ばし位置を打つ時は、
手全体が動く。
この動きにも3D曲面は合っているべきだろう。
タテの動きだけではないわけだ。
今日、遊舎工房でHHKBのTypeSを試打してきた。
レイアウトが変わって、
結線して火を入れた状態でメモ帳に打てる環境になってたので、
思う存分打ってみたのだ。素晴らしいぜ遊舎工房。
もちろんローマ字なので、
僕は薙刀式の運指のまま謎の暗号を書くブラインドタッチをしてきたのだが、
その時わかったことは、
「3Dキーキャップで慣れた最小の軌道だと、
指がキーキャップにぶつかる」
ということだった。
中指薬指下段から中段に動かす時が特に目立った。
撫で打ちのフォームだからかなと思い、
突き刺し系の打ち方に変えてみたら、
ぶつかりは起こらない。
なるほど、この辺に、
僕がHHKBにあまり魅力を感じなくなった理由がありそう。
僕の自然なフォームでは無理がある曲面で、
無理矢理慣れてないフォームを強制させられるんだな。
まことに人間の指の運動は奥が深い。
なお、HHKBの位置や手の置き方や、
チルトスタンドを変えても当たり方は異なった。
椅子は高さを変えられるやつだったのかな。
そこまで試していないけど。
あ、両手のハノ字の関係変えて試してないや。
まあ、すでにHHKBは最高のキーボードの座にはないのでねえ。
(キータッチはまだベスト何位かにはいるが)
論理配列は、指の手間や動き方を最小にしていく。
3D物理配列は、指の運動軌跡を最小にしていく。
両者の融合が、真のエンドゲームではないかと思う。
手書きでは僕はほぼその領域に来ているが、
キーボードはまだそこまで来ていない。
もっと繋げられるはずだ。
2021年02月14日
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