2021年02月15日

二転三転の面白さ(「9人の翻訳家」評)

予告で見て気になってたフランス映画。
ミステリー。

世界的ベストセラーの完結編が出る。
世界各国同時翻訳を目指して、
流出を避ける為に地下シェルターに閉じ込められた、
9カ国の翻訳家。
だが三日目、最初の10ページがネットに流出。
大金を払わないと次も流出させると脅迫がある。
犯人はこの中にいるはず。

密室スリラーの変形、このシチュエーションが抜群に面白い。
ネタバレなしで。


まあ当然色んな事情を抱えた、
曲者揃いの9人の翻訳家なわけですよ。
そのキャラ分けが見事。

中盤、事件の二転三転が抜群。

しかも「二ヶ月後」の時間軸を同時進行させて、
犯人が捕まったあとの時間を進行させ、
しばらくその顔を伏せてるのが面白い。

これによって緊張が保たれるのが実にうまい。

そしてミッドポイント、
そのさらに過去の時間軸で…

実にモダンな構成の、
頭脳戦の逆転スリラーとでもいうべきか。
デスゲームとはジャンルが異なるものの、
密室を使ったそのジャンルに近いかな。

これを自分で書くことを考えたら、
かなりの手腕が必要だろう。
前半のミスリードが実に見事。

で、テーマは文学を愛することとは、
みたいなことにきちんと落としてきて、
ベストセラーってなんだろう、
みたいなことに持ってくる巧みさがある。



この最初のシチュエーションはなんと実話らしい。
9人翻訳家がいたかどうかは不明だが、
この面白げなシチュエーションを借りてきてからの、
「流出と脅迫の犯人探し」を思いついてから、
ここまでの見事なシーソーゲームを、
構築できる?

その剛腕ぶりの教材にぴったりの秀作。


だけど、ラスト近辺、悪役を悪く描きすぎたかな。
その辺が評価の割れるところだろう。
posted by おおおかとしひこ at 01:22| Comment(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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