2021年02月20日

【自キ】半田付けなんて怖くない

本当に怖いのはそのあとのキーマップファームウェアなのだが、
最近はVIAやRemapの登場で、かえうちほどではないにしても、
GUIが充実し始めてきている。

半田付けが怖いのは、
200度以上の高熱で、
一体何をやってるのか、
何をやったら正解で、
何をやったら間違いか、理解し難いことではないか?


目的は、
金属端子と金属端子を結びつけることだ。

これ、極論すると、金属端子同時を捻って接触してもいいんだよね。
電線と電線を捻って結合させてもいいんだよ。電線がついてないだけで。
金属端子同士を接触させて、
セロテープで貼り付けてもいいんだぜ。
針金でくっつけてもいい。
要は、電子が金属を流れさえすればいいんだよ。

だけど接触点が点だと、電気抵抗が大きくなる。
細い水道管を通すのをイメージするといい。
だから面で接触させるのがいい。
水道管は太い方が通りやすいから、
上手に面で接触させられればいいということはわかる。

実際、空中配線キーボードだと、
半田付けをせず、ワイヤーを直接スイッチに結線している作例もある。
回路図を理解して、
その通りに結線すれば、
(VやAは計算済みだから何も考えなくても)回路は動くのだ。

極論すれば半田付けはぜひ必要なわけではない。
結線すればいいだけ。


じゃあ半田付けは何のためにやるの?

僕は、強度と振動対策だけだと思う。
(詳しい人いたらご指摘ください)

金属端子同士を金属で橋渡しして一体型の金属にすれば、
強い上に電子も流れるよね、
(しかも点じゃなくて面だから電気抵抗も少ないよね)
ということだと僕は理解している。

半田付けが怖い人は、
銅線を捩ってマスキングテープでつけてもいいんだぜ。
ホッチキスで止めても動くかも知れない。

ただカバンの中に入れて持ち運べば、
数日でポロッと取れる危険があるよ、
というだけのこと。

銅線で繋げてエポキシやレジンで固めたっていいはずだ。
(透明レジンで固めた外人のキーボードは見た)
キーボードとしての使用程度なら熱を持つことはないから、
排熱はほとんど考えなくていい。
絶縁だけ出来てればOKだろう。


まずこの理解がないと、
「半田はなんのために?」
が分からないと思った。


で、半田付けの本題に入るけど、
半田付けは溶接じゃない。
金属端子の融点は半田よりもっと全然高い。
半田の融点は金属類の中で恐ろしく低い。

半田の材料は、融点の低いスズ鉛合金(ブリキの表面素材)だが、
183℃で液体金属になる。
ちなみに鉄の融点は1500℃だ。

触れば火傷するとはいえ、
半田がいかに机の上で扱いやすい素材か分かると思う。

半田付けの作業中には、
パーツが熱せられて200度くらいになるけど、
パーツが溶けることは全然ないんだよね。
(ハンダゴテをずっと当ててたらいろいろ溶けることもあるだろうが)

半田付けは、
パーツの金属端子同士を、
それよりは融点の低いスズ鉛合金で固めてくっつけて、
電線代わりにしようぜ、ってことなのだ。

で、じゃあ、
スズ鉛合金の性質をしっかり分かっていれば、
どうするのが正解で、何が間違いかわかるはず。

・融点は183℃。(スズ単体だと231℃。ちなみにタバコは800度だそう)
 温度調整ハンダゴテで200℃ちょいに設定しとけば、安定して溶ける。
 温度調整機能がついてないと、温度計のついてない天ぷら油と同じ。
 どうなるかは分からないので初心者にはお勧めしない。というか使いたくない。

・気体は有毒なので大量に吸わないこと。換気をよくしよう。

・白い煙があがるのは、金属じゃなくてほぼマツヤニ。
 マツヤニ(フラックス)が半田には練り込まれている。
 これがあると液体金属の表面張力が強くなり、球になりやすい。
 全部気化してしまうと表面張力が失われ、半田が尖りやすくなる。
 (つまり半田は、スズと鉛とフラックスの三つの成分の練り込まれたもの)
 追いフラックスする(フラックスを塗る)と、
 ハンダしやすい状態に戻るぞ。
 つまり、白い煙が上がり始める前に半田作業を素早く終わらせるのがコツ。
 でも初心者はススっと出来ないから、
 あたふたしてる間にマツヤニが全部蒸発してしまい、
 ヘンテコな半田(イモ半田)になってしまう。
 こういうときは一旦冷やして、追いフラックスをして表面張力を復活させ、
 パーツごと再加熱すると滑らかな半田付けになる。

・ハンダゴテの温度が高すぎると、マツヤニがすぐ蒸発しやすい。
 沸騰するような温度はよくない。300℃くらいなら早くなるのでは?
 と思ってしまうが、マツヤニの沸騰は避けよう。

・ふたつの金属端子と半田の温度を同じにすると、液体金属は水のように行き渡る。
 表面張力が存在するマツヤニが豊富な状態では、
 液体金属であるところの半田は、水のような振る舞いをする。
 つまり、隙間にすっと沁みる挙動をする。
 これが正解の半田付け。
 これは、金属端子が同じ温度であればあるほど、そういう挙動になる。
 「まず半田付けする二つの金属端子を、ハンダゴテで温めてから」
 というのはそうしたことだ。
 (二つの金属端子を同時に加熱したいので、
 うまく両方にコテ先を同面積当てると合理的。
 経験的に、コテ先を接触させてから熱が行き渡るのに、1秒から3秒かかる)
 半田の融点以上に先に温めておくと、
 金属と金属の間に液体金属が表面張力を保ったまま、
 橋渡しの形になってくれる。

・半田付けは、酸化皮膜をつくること。
 橋渡しになった状態で3秒以上キープすると、半田と金属端子の間に、
 酸化皮膜が作られるらしい。(肉眼では分からない)
 これがあることで、電気が通りやすくなるそうだ。
 ただの、金属端子→スズ鉛→金属端子ではなく、
 金属端子→酸化皮膜→スズ鉛→酸化皮膜→金属端子
 が、綺麗な完成状態。

・フラックスが十分な状態では、半田は濡れたような色だ。
 フラックスが足りない状態では、半田は乾いた色になる。それで見分ける。
 もたついて半田が乾くことはよくあることなので、
 落ち着いてコテを離し、追いフラックスすれば濡れは復活する。

・追いフラックスしすぎて過多になることもあるので、
 半田付けが終わったらフラックス除去用のアルコールで拭うこと。
 フラックスから腐食がはじまりやすいらしい。
 (僕の高々数年の半田歴では未確認)

・そもそもパーツの固定は、手でやると200℃を指に受けるぞ。
 最低でもピンセットで固定(でもツルッといくことが多いよね)、
 できればマスキングテープで仮止めしてからのほうがいい。
 小さな部品だから、コテ先を当てたらズッて移動することもあるので。
 何かの弾みに何かにくっついちゃうこともあるから、
 マスキングテープ仮止めの手間は失敗を避ける賢人の杖だ。

・半田吸い取り線は半田付けに比べて非常に難しい。
 なので、少量の半田付けを心がけ、足りない時に追い半田するくらいがちょうど良い。

・それでもミスしたので半田を剥がしたいとか、量の多い半田を減らしたいとかのときに、
 半田吸い取り線は使われる。
 吸い取り線自体をコテで熱して、半田も熱して、
 線の網の中に毛細管現象で液体金属を吸い取るのが半田吸い取り線。
 ちょいフラックスを塗ると毛細管現象が起きやすい気がする。
 吸い取り線をうまく熱するのは、丸いコテ先よりも面のコテ先が向いてる。
 ので、丸い尖ったタイプのコテ先はお勧めしない。
 僕は熱しすぎて、基盤の中の銅線を溶かして断線させてしまった。
 (断線してないところを直結させることで故障回避した)


・成功した半田付けとは、
 パーツの金属端子と金属端子が、隙間なく半田で結合されていること
 加熱が十分で酸化皮膜が作られていること(肉眼では確認できない)
 半田が乾いたり尖ってないこと、濡れてて表面張力が効いてること
 だ。


これらの原理がわかれば、
半田付けは怖くない。

ファームウェアのプログラミングのほうが、
作業時間は長くて難しい。環境構築からやらないといけないし。

物理は意外となんとかなる。見て分かるからね。



用意する道具:

○温度調整機能付きハンダゴテ(コテ先は尖ってなくて、面で熱することが出来るタイプ。
 おすすめは円柱を斜めに切ったようなやつ。そこに半田も乗せやすいし)
○半田(鉛入りが初心者には良い)、細さは1mm以下がキーボード部品には良い
○コテ台(200℃以上になるものを置く場所大事)

○コテ先クリーナー(金属タワシみたいなやつ)
○フラックス、フラックス用アルコール
○綿棒(アルコール除去用)

○半田吸い取り線
○使いやすいピンセット(数千円出した方がいい)
○マスキングテープ(1キーより大きい部品はないので、細めのやつ)

作業台には、

○部品入れの小皿(ネジとか転がって落としやすいので)
○机上ゴミ箱(マスキングテープ、綿棒などを捨てやすいもの)
○大きめのカッターマット(耐熱の何か。机を台無しにしてもOKなら不要)

あたりがあれば問題ない。
小さいパーツが見えにくいときもあるので、
ルーペも使えるぞ。(両手フリーになるアーム付きがお勧め)

あとダイオードをつけるときに、
ラジオペンチがないとリード線を切るのが難しいだろう。


「大人はいい道具を揃えて、
技術を金でカバーする」のが賢いやり方だ。
ざっくり一万円あれば揃う。

秋葉原遊舎工房の工作室では、
一時間500円で作業場と全道具を借りられるし、
他人の半田付けを肉眼で見れるのでお勧め。
初めての人にもスタッフが教えてくれるし。
(ただし今はコロナ対策で工作室はやってない。
緊急事態宣言が明けたら開く情報は聞いた)

YouTubeには半田付け動画結構あるので、
それでイメージトレーニングするのも悪くないぞ。


上級者になれば、一箇所5秒で半田付けは終わる。

でも初心者は30秒とか1分とか5分かかってしまう。
失敗は成功の母だ。
「慣れたら簡単」というのが僕の感想だね。

最初は4キーしかないmeishi2がお勧め。
失敗しても安いものだ。
(2500円くらい。自作キーボードなら1万円が台無しになる)
posted by おおおかとしひこ at 16:00| Comment(0) | カタナ式 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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