2021年02月27日

終わった後から始める

何も、
「起こる前からはじめ、起こる瞬間を書き、
終わった後まで書く」
ことだけが正義ではない。

「終わった後から始める」のは、
感情のピークをそちらに持ってくる方法だ。




会社員が重役室に呼ばれる。
(省略して、自席に戻ったところから再開)
「どうだった?」
「リストラだってさ…」

これは、「覆らない決定にショックを受けている」
という感情を強調する。

なんなら夜の居酒屋まで時間を飛ばして、
みんなと落ち込んだり荒れたりしててもよい。

さらに会社最後の日まで飛ばして、
「あの時重役室に呼ばれた時は世界が終わったと思いましたが、
今は次の出発への気持ちでいっぱいです」
と挨拶する時まで飛ばしてもいいのだ。


呼び出し
リストラ宣告
ショックを受ける
荒れる、落ち込む
後日就職活動
次の職が決まる
退職
次の職場で輝く

のうち、どれを省略するか?だ。

極端な例だと、

呼び出し→次の職場で輝いているさま
VO「あの時リストラされてなければ、
こんなに輝く人生でいられただろうか」

までやってもOKだ。

何かを捨てることで、
何かを強調するとはこういうことである。
リストラというターニングポイントに対して、
どこを強調するかで、
その他のノイズになることは捨てるべきなのだ。

これによって、
展開をコントロールしていくわけである。


コツとして、
「終わった後から始める」
を覚えておくと良い。

次のシーンを書こうとするとき、
時系列で直結するのか、
「いや、待てよ、事後から始める方法もあるぞ」
と、どこまでかを捨ててしまい、
美味しいところから始めたっていいのである。


酒場でナンパしたあと、
次の日の朝、女が嬉しそうに目覚めても良いのである。
(最悪、から始めてもいい。
後日付き合ってるところに繋いでもいい。
ストーリー次第だ)

あるいは、
酒場でナンパしたあと、
結婚式のシーンに繋いでもいいのだ。

帝王として生まれた赤ん坊から、
暗殺されるシーンに繋げてもいいのだ。

事後からはじめて、
回想形式で何があったか語ってもいい。
殺人事件なんかでそういうこともあるよね。


時系列をひとつひとつ拾う必要は、
必ずしもない。
むしろ、大事なことに対してノイズを書いてるだけかもしれない。

大胆な省略をするのではない。
大胆な直結をするのである。

下手な人の脚本は、
ダラダラと順番に書いてるだけだ。
それは愚鈍にすぎる。
そういう人はナンパからセックスから次の朝まで全部書くのだろうか?


むしろ、
「何だけは起こる瞬間をきちんと描くべきか?」
という問いすら立てられる。
それ以外はすべて事後スタートから書いてみると、
勉強になるかもしれない。
posted by おおおかとしひこ at 00:24| Comment(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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