3Dキーキャップを作っているのは、
動線を最小化して効率を上げる目的である、
とも言えるのだが、
実際の僕の感覚としては、
「手の延長としての道具を作っている」
のだ。
「武器は手の延長」と武術ではよくいう。
それほど武器は手の一部、
体の一部になるべきであると。
逆に言えば、
接点であるところの持ち手で、
無駄な空間や変な歪みがあるべきではなく、
「しっくりと手と武器が馴染む」
ような感覚でない限り、
自分の身体を延長することは出来ないと思う。
刀の持ち手や包丁や万年筆など、
道具と手が馴染まない限り、
意のままにそれを動かす、
身体延長感覚は得られないと思われる。
しかるに、
キーボードはその馴染み感がとても薄い道具だ。
我々の手は三次元で有機的に動くというのに、
二次元的な幾何学模様をしているのは、
あまりにも手と道具の間に無駄な空間があき、
しっくりと握れない道具なのではないか?
逆に、キーボードがそのような道具になるためには、
自然に机の上に置いたときの、
自然な手の位置の、
自然に開いた指の位置にホームキーがあり、
そこから自然に指を動かしたところに、
上段キーや下段キーがあるべきではないと考える。
キーボードに体を合わせるのではなく、
俺にキーボードが合わせろ、
ということである。
3Dキーボード、たとえばLime40やDactylなどは、
3Dフレームにキースイッチをつけることで、
各キーの3D曲面を形成する。
一方僕のアプローチは、
格子配列上に、高さも傾きも異なるキーキャップを並べて、
3D曲面を作っていく方法だ。
どちらが正解かはまだ分かっていない。
どちらもまだエンドゲームに来ていないからである。
備忘録がわりに、
これまでサドルプロファイルを開発していくうえで、
「自然な三次元曲線とは」が、
分かって来たことを整理しておく。
打鍵姿勢について:
・掌は小指側がつき、親指側が浮く。(テント)
・従って、最も低いのは小指で、次が親指。
・逆チルトの方が撫で打ちしやすい。
・両腕は肩幅に開くと楽。
・実際には肩幅で使えるカフェの机は少ない。
やや狭めてハノ字を作ると同等に楽。
ホーム段について:
・親指は4指とは違う角度についている。
軽くものを握る形が一番落ち着く。
つまり親指キーは横を向いている。
・4指を自然に前に投げ出すと、中指が最も高く、
人差し指と薬指が同じ高さくらい、小指が低い。
・これは撫で打ち前提だと、指の指紋部分をキーに接触させるため。
・コラムスタッガードでは、長い中指キーを奥へ出して、
短い人差し指と小指を手前に引くようにするが、
格子配列前提なので、中指と薬指は、人差し指や小指に比べて、
折り畳む必要がある。
そのためその2キーは奥に傾き、縮めた指の角度に合わせる。
・全体的に、球を掴んだような曲面になる。
ただし、中指〜小指が形成する凸と、人差し指は異なる位置。
人差し指のみ独立した腱を持ち、それが他より短い為、
人差し指は半径が短い球の上にいる。
指の動き:
・中指、薬指、小指は同一の腱についているため、互いに従属した動きになる。
・一方人差し指は独立した腱のため、他の指と独立して動かせる。
ゆえに、伸ばし位置の別列も担当できる。
・4指は掌の向きに対して、指紋がやや内側になるように、
ねじれつきで付いている。
・このため、指の曲げ伸ばしは、掌に対して垂直面内では行われず、
掌に対してそれぞれ傾いた面内で行われる。
・しかも指は真っ直ぐ握られない。少しだけ内側へ捻れながら曲げられてゆく。
・つまり、中段に対して下段はより内側にねじられ、
中段に対して上段は外側にねじれが解放された角度になる。
これに合わせてキーのトップ面を考えなければならない。
・人差し指伸ばし位置を打鍵するときは、掌が回転する。
残りの3指の位置もホームキーからずれる。
手のひらを戻しながらアルペジオで残りの3指を打つとき、
キーへの入射角は変わる。
伸ばし位置がないなら単純な伸び縮みの運動(ねじれながら)だが、
それに手首の回転方向のベクトルが加わった軌道になる。
つまり、縦方向の撫で打ちが、横方向の撫で打ちになる。
例: NK(薙刀式で「たい」)のときの中指の動きと、
MK(同「ない」)のときの中指の動きは異なる。
・これは中指が最も影響が大きく、小指はそれほど影響を受けない。
(ただし中指>薬指>小指の頻度の薙刀式ゆえにそう感じるのかも知れない)
・下段から上段にかけて、指が末広がりになるようにキートップに当たるべき。
つまり下段から上段にかけて、末広がり、外側へ弧を描くようになるべき。
・人差し指と人差し指伸ばし位置の関係は、
凸(球型)と凹(お椀型)の両方を試したが、今のところ凹がいいようだ。
・親指は毎回握るように打鍵するのではなく、握る角度に対して撫で打ちの時もある。
キーボードは、この動きに対して、
自然な位置にキートップがあるべきだ。
それが自然な手の延長のグリップになると思う。
写真付きでいずれ解説したい。
2021年03月01日
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