親指シフトがひっそりと前倒しで死んだそうな。
5月まで生産で、受付はここまで、ということだろうね。
https://pc.watch.impress.co.jp/docs/news/yajiuma/1310461.html
親指シフトは、当時にしては画期的だったのは認めるが、
現在の自作キーボードで肥えた目から見ると、
疑問だと思われる所がたくさんある。
列挙しておく。
物理的な疑問点
・猫の手で打つためには手を浮かせ続けないといけない。数時間も?
(パームレストなのか、打鍵姿勢でカバーなのか、公式見解がない)
・高い親指キーは本当にベストなのか?
(「棒を握る」ようには打てない。指先での打鍵限定)
・左ロウスタッガードはベストなのか?
(より良い物理配列を開発しなかった理由は謎)
・ほんとに早いのか?
(タイピングゲームの動画も、長文実践動画もない。
ワープロコンテストの当時のレベルは低く、900字(変換後)/10分ペース)
・脳内発声がない人への対応
(「脳内発声がない人が文筆業をする」という発想に、
最初から気づいてなかった可能性)
論理的な疑問点
・単文節変換前提だと思われるが、その速度で頭打ちなのか?
(Japanistを触ったことがないので議論できない)
・人差し指>中指>薬指>小指の頻度に整理されていない
(三大メジャーカナ「いうん」が小指薬指、句読点とBSが小指)
・濁音になるカナは、表でよかったのか?
(特に下段の、ひすふへそほ、あたり。
このあたりにメジャー非濁音カナを置く方法論が検討されてないのでは?)
・半濁音、小書きの例外は多すぎないか?
(マイナーカナ×マイナー位置のせいで、マスターに年単位かかる。
またその位置は合理的な場所ではなく「余った場所」の為余計使いにくい)
・TYは遠すぎないか?
(親指との同時打鍵は上段、伸ばし位置が不利になる)
・機能キーとの連動が薄い
(BSとESCしか組み込まれていない。ショートカット系に配慮がない。
薙刀式の編集モードをまるっと持ってくれば済むかもだが)
・よく使う言葉の連接が、打ちやすい指運びに対応していない
(T「れ」のせいで、これ、しれ、たれ、けれなどが打ちづらい。などなど)
・記号配置が練られていない
(ベスト位置とは思えない。とくに最上段と親指同時は遠過ぎる)
こんなところかな。
ここ三年くらいかけて、
ちょいちょいシフターを煽る発言をしてきたが、
反論がなかったのは残念だ。
僕の蒙を啓く知見が欲しかったのに。
だがこの疑問を解消する形で薙刀式ができてきたので、
親指シフトは反面教師として役には立ってくれたのかね。
親指シフトの思想自体はとても斬新で、
qwertyローマ字やJISカナを遥かに凌駕する合理性がある。
しかし思想に対して、実装は貧弱だったのではないか。
その貧弱な実装で我慢し続けたユーザーにも問題があるが、
今や自作キーボードで新たな地平を開拓できる可能性が拓けたのは、
日本メーカーの死とともに皮肉な象徴だ。
先駆的先輩の墓標を弔う気持ちは、
無くしてはいけないだろう。
我々は、親指シフトの屍を超えてゆく。
ガンダーラはまだ先だ。
2021年03月08日
この記事へのコメント
コメントを書く