(以下の記事はだいぶ古い情報です。
アクチュエーションの重さ基準の話をしています。
2023/5現在、流行はボトムアウトフォース表記が主流で、
60gボトム表記はおおむね45gアクチュエーションくらいに相当だと思って、
以下の記事を読んでください。
なお、アクチュエーション35gが欲しい人は、
おおむねボトム45〜55gのスイッチを探すと良いです。
稀にボトム37gのスイッチがあり、
そのアクチュエーションは体感25〜30gです。
さまざまなメーカーで、ボトム表記、アクチュエーション表記が混在してるので、
その辺は都度確認してください)
僕がそもそも自作キーボードに踏み出したのは、
「軽い押下圧のキースイッチを作れる」からであった。
そのノウハウを公開していく。
まず無改造で軽いのは、
Gateron Clear 35g
しかない。
これの次に軽いのは45g(いわゆる赤軸)からだ。
そうでなくても60g前後が高級スイッチの主流である。
35gより下の世界に行きたいなら、
スイッチを開け、バネを交換するしかない。
ちなみにGateron Clear
(クリア軸、白軸と初期は呼ばれたが、
いまやスイッチの数は200ぐらいあるので、
ただ白いステムだけでも20〜50個くらいあるので、
白軸では通じない)
の感想は、
「悪くないけど煩い」だ。
東プレの静電容量30gに比べると、
リニアであるぶん素直で、
直線的に落ちる感覚をしている。
だが底打ちが硬く、カラカラするイメージ。
(薙刀式動画でよく使っている光るキーボード、
Magic Force49は、市販品で唯一Gateron Clearを使ったもの。
世間では35gは不人気のようだ)
さらにちなみに、
Gateron ClearのSilent版
(ステムの上下面にゴムが仕込んであり、
底打ちとバネの戻りで音がしない仕組み。
多くのSilentステムはこのような原理で、
ゴムの質や厚みで、柔らかめから硬めまである)は、
「砂でも入ってんのか」と揶揄されるほど、
スムーズさが低く、まったくお勧めしない。
Gazzew Silent Stem
(Boba gumスイッチのステムパーツのみ。
gum と呼ばれるくらい柔らかい接地感がウリだけど、
先日僕が開発したマシュマロのほうが遥かに柔らかくなる)
を、
Gateron Clearに換装すると、
安価で35gのサイレントスイッチを手に入れることが可能。
ここからスプリングを交換して、
軽いスイッチを作っていくのが、
ルートとしては楽かもしれない。
スプリング交換用は、
Sprit Designs一社だけがバネを出していて、
バネ交換とはこれを買うことに他ならない。
昔は韓国から個人輸入していたが、
今では遊舎さんに在庫があるので、
三週間が2日になってありがたい。
かつてはリニアバネ(supremeシリーズ)しかなかったが、
Progressive(最初は軽く、徐々に重くなる)、
Complex Rate(軽いバネと重いバネがカクンと切り替わる)、
Slow Spring(最初からある程度重く、ボトムまでリニアバネほど重くならない)、
などのバリエーションが出ている。
僕はリニアから入ったが、
たぶん最終的にはSlow Springに落ち着きそうだ。
MX用とChoc用があり、
細さの径が異なる。MXの方が太い。
ボトムハウジングのステム穴の外側に入るか入らないかの違い。
じゃあChocバネがMXに入らないかというと、
「ステム穴の上にそっとセットしてスイッチを閉める」
というやり方もあり、その場合はスロースプリング的に、
押下圧がスペックより重め安定になるっぽい。
注意したいのはスペックの表記で、
アクチュエーションフォースと、
ボトムフォースが混在している所である。
バネだけではなく、
各スイッチメーカー(10社くらい?)でも表記はバラバラで、
MX系は、ボトム(アクチュエーション)表記、
Choc系はアクチュエーション表記が多いっぽい。
僕のブログでは混乱を招くので、
アクチュエーションで統一している。
たとえば赤軸のバネは、
始動が25g、
2mm下がったアクチュエーションが45g、
4mm下がったボトムが65g
になるように調整されている。
f=kxの形で示される、線形性質(リニア性)を持っているわけだ。
Progressive、Complex、Slowは、
非線形バネを用いてその沈み込みの打鍵感を、
リニアと変えているわけである。
だんだん沼に入ってきているね。
最初はバネ交換をしていく。
35gから、
30g、25g、20g…と替えていくことになるだろう。
リニアバネは5g単位でバラエティが豊富だが、
非線形バネは10gや15g刻みになってたり、
軽いのや重いのがラインナップにないことがよくある。
じゃあどれをどう買って仕込めばいいのか?
という問題だが、
バネスペックだけでは決まらないのが、
軽い押下圧バネの難しい世界なのだ。
ステムの摂動がスムーズな高級スイッチになれば、
摩擦やガタつき、ブレが小さいため、
数値よりも軽く感じることが多い。
10g〜15gくらいは、
バネスペックが軽く感じることがある。
高級スイッチに60g前後のバネが多いのは、
実質45gに感じるようにスムーズになっているからに他ならないのだ。
逆にいうと安いスイッチは、
バネ圧+摩擦抵抗の、ふたつの要素を足したものが真の押下圧だ。
高級スイッチは後者を0にしていく方向なのだ。
この為、
「どのスイッチに何gのバネを仕込むか」で、
体感押下圧が全然変わってくるのである。
さあ沼だぞ。
Gazzew Silentの比較的柔らかめのステムを固定したとしても、
スムーズなボディからちょっとぐらつくボディ、
目的の重さのバネ(リニアから非線形まで)、
の変数がたくさんあり、
目的の打鍵感に辿り着けるかは分からないのである。
また、軽いバネを使うと、
始動〜アクチュエーションまでは軽くていいんだけど、
底打ちのスピードが早すぎて、
指にダメージを与えることが多くなる。
ProgressiveやComplexは、
バネ一本で底打ちだけを重くしようという目的なわけだ。
僕は色々工夫した結果、
「柔らかいものをボディの底と上に仕込む」
という考え方に達したので、それに関してはマシュマロの記事にまとめておいた。
これは手間がかかるので、
最初はGazzew Silent Stemを使うのが楽でいいと思われる。
さらにルブの話もしなければならない。
スイッチのスムーズさが20%から40%程度上がるのである。
(スイッチ噛み合い方による)
これによって体感押下圧はまた変わってくる。
今のところは油はKrytox GPL 205 G0一択だけど、
新しい油が出るかも知れない。
(少なくともDurck社のファクトリールブはこれとは異なるサラサラの油っぽい)
たかがバネ、されどバネ。
軽いスイッチを求める沼がここにある。
以下、僕が色々試した中で、
オススメのものを、浅い順から。
【Gateron Clear無改造】
35gで市販品では最軽で、これ以外は45g以上。
30は存在しない。
底打ちは硬くカラカラ鳴るので、外では使えない。
【ガムクリア: Gazzew Silent Stem+Gateron Clear】
Gateron Silent Clearがざらつくので、
この改造レシピはオススメ。
ステム交換だけなので、安価で手軽。
これをルブれば一旦はエンドゲームかもね。
35gが重いならバネ交換をしていけばいいと思う。
軽いバネは、一気に軽くすると「軽すぎる」ってなるけど、
徐々に軽くしていくと、
「あれ、昔はこのバネが軽すぎると思ったのに、
今はいいぞ」という現象があることが知られている。
僕は35gから入って、標準30g、薬指小指が20g、親指が15g
あたりの変荷重をよく使うようになった。
【Gateron Silent Red+バネ35g、30g、25g、20g、15g、12g】
僕が最初に試したもの。
Silentステムなので底打ちのゴムクッションに助けられ、
底打ちで指を痛めにくい。
ちなみに12gが市販品では一番軽く、
これ以下は重いキーキャップをつけると戻ってこないこともある。
ただ、安価なGateron系なので、
スムーズさはそれなり。
【Novelkeys Cream+バネ35〜12g】
フルPOMで出来たまろやかな摂動が評判のスイッチ。
これを軽バネ化したのだが、
底打ちの硬さで指にダメージを負う。
ここからダブルスプリングを研究し始め、
次の涅槃イエローにたどり着く。
【涅槃イエロー】
Gateron Ink Yellow(スムーズ、Box stemでぐらつき少ない、スピードスイッチ)
のステム穴にエラストマー樹脂を仕込み、
30gバネに交換して、
トップハウジングにタイルの目地材ゴムで静音化したもの。
もちろんルブする。
一旦はこれでエンドゲームかと思われたが、
さらにスムーズなアルパカが出たことで、
沼はさらに深くなる。
【イエパカ】
Alpacaハウジング+Ink Yellowステム+30gバネ
上と同様のクッション改造、
さらにリーフを曲げて接点位置を変える必要があり、
一番めんどくさいがかなり良い。
【マシュマロL1】
アルパカと同じDurock社の、軽めのL1を使う。
今研究中で、スロースプリング化してみる予定。
イエパカ以降は完全に沼の最深部なので、
ここでは詳しく解説しない。
ガムクリアあたりが「軽いキースイッチ」を経験するのにいいと思われます。
ちなみに、
東プレ30gは、リニアの挙動をしていない。
ゴムのドームが凹み、戻ることで、
メカニカルのバネの代わりをしている。
これが行きと戻りで違う挙動なんだよね。
うまいことやったもんだなあと思う。
リアルフォース、HHKBの「静電容量の打鍵感」は、
静電容量方式、すなわち「非接触で静電誘導の電圧でオンオフ判定」
という仕組みによるのではなく、
ゴムドームの非線形バネ性質によるものだ。
「ただ軽いスイッチを求めたい」だけでは、
リニアバネの軽いだけの安っぽい感じにしかならなくて、
東プレ30gライクでさらに軽いものを、
僕は求めている。
まだゴールではないが、
すでにある感覚では東プレ30gを超えるスイッチが自作できている。
L1改造でうまくいくといいが…
この記事は広いスイッチ沼でも、
リニア限定の話だ。
隣にはタクタイルスイッチの沼があり、
僕はそこには入っていない。
また、リニアスイッチを全て試したわけではないことを断っておく。
リニアスイッチだけで100くらいはあるんじゃないかなあ…
2021年03月26日
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