2021年04月03日

【配列】飛鳥の起源

飛鳥配列の複雑さは一発で理解し難い。
しかし通りすがりさんの情報により、
かつての飛鳥のページのアーカイブを見ることができたので、
その成立過程の推測が出来るようになった。

記録に残る最初のホームポジションの8文字と左右シフト:

 す   と   し   か    う   い   き   た
わ ず よ で の じ ょ が  ま ん そ ゅ ぎ な ね だ

上段が単打、下段の左右はそれぞれ左右シフト。
出典: https://web.archive.org/web/20030810111754/http://www.izu.co.jp/~wizard/key/kana1.html


新親指シフト飛鳥配列のページ
https://web.archive.org/web/20090429102833/http://shizuoka.cool.ne.jp/izubekkan/asuka.htm
理想の日本語配列を求めて
(伊豆時代のホームページとRayさんが言っていたものと推測。
ここから飛鳥配列が成立して、上のページに独立させたのだろう)
https://web.archive.org/web/20030817164423/http://www.izu.co.jp:80/~wizard/key/rayshiki.html

がそのアーカイブ。

この配列はまだ飛鳥配列の名がなく、
零(れい)式の名がつけられている。
Rayさんの名をとったわけだ。
これが最も若いバージョンかは不明だが、
ここから色んな飛鳥理論が発見され、
それを受けて、配列が複雑化していったのだと思われる。


当初からあった考え方は、
「特等席にはいいカナを」だろう。

その特等席がホームポジションの8キーであり、
この使用率を65%にあげたことが、
飛鳥のはじまりであったと考えられる。

最終的にはこの使用率がさらに上がり、
70〜80%くらいになったわけだ。
ついでに右小指の張り出しも使い、
おそるべき中段率の高さに繋がっている。


もう一度その初期バージョンのホームキーを見てみる。

 す   と   し   か    う   い   き   た
わ ず よ で の じ ょ が  ま ん そ ゅ ぎ な ね だ

「ん」がシフト側なのに少々驚く。
清濁別置だが、す、か、し、たはまだ同置。
飛鳥の特徴は「です」「ます」を連続シフトで打てることだけど、
この時はまだそこまで頭が回っていなかったようだ。
つまり飛鳥の起源は、「です」「ます」を打つためにはなかった、
それは副産物であったことが明らかになった。

わたし、いう、きた、いた、したい、
などの中核になる言葉、
が、だ、で、とか、ので、です、ます、なので、だね、ですよ、ような、そう、
などの助詞を含む繋ぎになる言葉、
かい、がい、たい、だい、しき、とし、かん、がん、しん、じん、たん、だん、
のう、よう、そん、まん、ねん、
などの、漢語に使われる言葉、
しょう、じょう、しゅう、じゅう、きょう、ぎょう、きゅう、ぎゅう
などの、主に漢語に使われる拗音、
などがバランスよく揃っていることが解読できる。

飛鳥の特徴であるところの、
「運指がぬるぬる繋がる」は、
すでに最初期から考慮されていたことが、
明らかである。

つまりは言葉を打鍵塊として捉えようとしたことが、
飛鳥のはじまりであったのかもしれない。

それまでの配列はカナを単文字と考え、
それらの出現頻度と指の分布の考慮が精々(親指シフト)であった。
そうではなく、
「ある言葉を優先的に打ちやすい運指の塊にする」
ことが、指のつながりを生み、
打鍵塊単位での打鍵を可能にしたのだろう。

そして、
重要な言葉とはなんぞや、
打ちやすい位置とはなんぞや、
左右交互とアルペジオとどっちがいいのか、
重要な繋がりとはなんぞや、
などを求めて、飛鳥はここから長い旅に出たのだと思われる。

僕が配列をなんとかしようとはじめた時、
すでに飛鳥は完成していたように思う。
リアルタイムのことを知らない僕は、
だから大変興味深い。


ちなみに飛鳥の最終版は、

 き   し   う   て    ん   い   か   た
だ わ あ お が な ば ら  る く す の ま こ で そ

となり、初期バージョンをベースに煮詰めたことが、
朧げながらも伺える。
ょゅは右下段に落ち、左に移動した「う」とともに左右交互打鍵になった。
ホーム段にはより頻度の高いものを配置できたわけだ。
(最終版を触った時、ゃだけ別位置になってることに疑問を抱いたのだが、
最初期からょゅだけを特別扱いしてたからだな、と理解できた)


僕が知りたかったのは、
薙刀式における「ある」「ない」「する」のような中核カナがあったのか、
芯があって雪だるまのようにしてきたのか、
であったが、
考え方や感覚のようなものを受け継ぎながら、
色々カナを動かしたのだな、ということがこの調査から判明した。


上にあげた資料を読み込むと、

・左から始まり右で終わる
・連続シフトで言葉を繋げる
・助詞は右側
・拗音は左→右のゃゅょ→左の「う」

などが根幹のアイデアになっていることが分かり、
これらを感覚的におさめるために、
飛鳥の配字が収束を続けたことがわかってくる。


飛鳥理論は複雑すぎて色々な所に囚われがちだけど、
煎じ詰めればこのへんになるのだな、
ということがわかって、
大変貴重な資料であった。


飛鳥の批判対象は、主に親指シフト、JIS、qwertyであったが、
当時としては、
明らかにこれを凌駕するオーバースペックであったことがわかる。
大袈裟なことを言えば、飛鳥こそが新配列の考え方の基礎をつくったのだ。

飛鳥完成前に、
我も我もと新配列が登場してきて、
飛鳥理論の一部は共用されたようにも思うし、
そうじゃない理論もたくさん出てきた。

それらの切磋琢磨の結果、
新下駄、蜂蜜小梅などの名作が生まれたのだろう。


配列図が文字化けしてるのが惜しまれる。
たぶんコードを変換すれば見れるかもだが、
文字の変遷を追うことにはあまり興味がなくて、
考え方の幹を知りたかったので、まあいいか。

Rayさんはご存命なのだろうか。
薙刀式を批評してほしいくらいだ。
posted by おおおかとしひこ at 16:00| Comment(4) | カタナ式 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
配列図の文字化けを直すために複数の文字化け解消サイトに突っ込んでみたのですがどれも使えませんでした。お力になれずすいません。
Posted by 通りすがり at 2021年04月03日 18:59
>通りすがりさん

昔のブラウザなら表示文字コードの設定などがあったんだけど、最近のブラウザにはないっぽいんですよねえ……
古い形式で書かれているだろうから、古いタイプの文字コードでも探すか、と思ってたけど、edgeにはないっぽい。
ちょっと別のブラウザでも見てみます……
Posted by おおおかとしひこ at 2021年04月03日 19:12
開発途中の飛鳥カナ入力と出会い、[21-345]に根を下ろした通りすがりの飛鳥使いです。オリジナルの仕様変更として、カタカナキーにエンターを、CapsLockにBackSpaceを割り振って使っています。
(こうしておくと、いちいち指を離さなくて良いので楽です。もう、以前の環境には戻れません)
仮想PC環境上に環境を構築してあるので、この先いくつPCを乗り換えようとも、文章作成にはこの環境を使い続けるのだろうと思います。

ところで、最近は親指シフトに適した安価で良質なキーボードが少なくなった気がします。
自分のお気に入りは、サンワサプライのSKB-SL03です。
Posted by タカ at 2021年04月04日 19:10
>タカさん

345、368あたりは後期の飛鳥の中でもちょいちょい聞くやつですね。
どの辺が他のバージョンと比べて良いのか、教えて頂くと幸いです。
門外漢からはどこがどう味が違うのかわかりにくいので…

エンターとBSは近いに越したことはないですね。
なぜみんなそれをやらないか理由が分からないくらいです。
(薙刀式ではU単打にBS、VM同時押しにエンターです)

SKB-SL03は昔ながらのきちんとした親指周りで使いやすそうですね。
自作キーボード、たとえばJISplitなら、親指に色々割り当てられて便利ですよ。(全てのキーがプログラマブル)
https://shop.yushakobo.jp/collections/keyboard/products/jisplit89
僕は今こっちの沼にいます。
Posted by おおおかとしひこ at 2021年04月04日 20:20
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