2021年04月08日

【薙刀式】編集モード使用率11%

文字を書いていく行為のうち、
文字そのもののタイピングと、
変換してから以後の瑣末なことの、
割合はどんなもんだろうか。

薙刀式動画の編集モードの使用率
(キーを押す回数/総文字数(変換後))は、
11%という結果になった。


つまり、原稿用紙10文字に1文字は、
なんらかのキーが押されて手が加わっているということになる。
(↑連打とかもカウントしてるので、平均ということで)

これは、BS、エンター、候補選択はカウントしていない。
タイプカウンターによると、
僕のBSとエンターの使用率がそれぞれ10%程度だから、
乱暴に計算して、
「総タイプのうち3割は機能キーを使用している」
と言うことができそうだ。

僕は、思ったより多いと感じた。

文字タイプ7:機能3

文字以外の要素は多い。


編集モードは、動画の範囲では、主に記号入力や再変換に使われた。
全文字の10%とはいえ、
薙刀式のホームポジションから手が届く所で打っているから楽なものの、
正規位置の「」()やカーソルやシフトやコントロール、
正規位置のエンターやBSを使っていたら、
とてもじゃないが時間と疲労が勿体なさすぎる。

そして前にも議論したように、
「そのことによって思考が中断してしまう」
ことの方が問題だ。
一時停止→再開のように人間の脳は出来ていない。
一度落ちたペースを元に戻すには、
平気で20分とかかかる。
思考の中断は、執筆の敵だ。

この3割のパートを楽に素早く、ホームポジションからシームレスに運指するのが、
薙刀式の編集モードだ。
前書いた通り、動画から手作業で見つけて特定するため、
滑らかに繋がりすぎて見逃すくらいスムーズだった。



細かく数値データを見てみよう。

それぞれ、
変換後文字数、編集モードのキーが押された数、
それを文字数で割ったもの、
である。

前置き        160字 0キー  0%
「重力ピエロ」    129字 8キー  6%
「涼宮ハルヒの憂鬱」 136字 3キー  2%
「蹴りたい背中」   331字 49キー 15%
「四畳半神話大系」  218字 30キー 14%
「セーラー服と機関銃」392字 32キー 8%
「雪国」       340字 33キー 10%
「走れメロス」    399字 54キー 14%
「一房の葡萄」    475字 77キー 16%
「宮本武蔵 地の巻」 509字 76キー 15%
後書き        209字 9キー  4%

計          3298字 371キー 11%

癖のある文体は編集モードの使用率が高く、
癖の少ない文体は低いという結果だ。
IMEが対応しきれない部分を手動で操作するのが編集モードともいえるかな。

「一房の葡萄」は振り仮名が多く、カウントが増えた。
文章自体は平易だが、所々造語的な言葉が多かったのもある。
「蹴りたい背中」「宮本武蔵」「四畳半神話大系」は、
それぞれ独特の癖がある為選んでみた。
案の定IMEが苦労するわけだ。

「雪国」の川端康成は、平均的日本語の描像かなと思う。
赤川次郎「セーラー服と機関銃」、伊坂幸太郎の「重力ピエロ」は、
さすが大衆作家、素直な文体ゆえ編集モードの手間がかからない。

「ハルヒ」はさすがラノベ、IMEが素直である。
ラノベが下に見られがちな現象は、
バカでも書ける文体だと思われていることもあるが、
それが数値に出た感じだ。
IMEのデフォで行けるということだ。
(ちなみに作者の谷川流は親指シフトらしい。豆な)

前書きと後書きは、手慣れた僕の文章なので編集モードをほぼ使っていない。
IMEの調教もできてるし、
普段書いてる文体に、薙刀式がそもそも合わせてあるという説もある。

だからこれは、「僕から見た」相対的な複雑さかも知れない。


これらを、
いつもの指標、変換後文字数/10分の速度で見てみよう。
速度順にソートする。
%は上の数値。

前置き        0% 1523
後書き        4% 1441
「涼宮ハルヒの憂鬱」 2% 1236
「重力ピエロ」    6% 1060
「セーラー服と機関銃」8% 1084
「四畳半神話大系」  14% 1006

「雪国」       10% 899
「蹴りたい背中」   15% 860
「走れメロス」    14% 828
「宮本武蔵 地の巻」 15% 834
「一房の葡萄」    16% 796

文体の平易さと速度と編集モードに強い相関が見られる。
簡単な文章はIMEを煩わせずに速く書けるし、
複雑で持って回った言い回しは手間がかかるわけだ。

その開きは倍ぐらいあるので、
文の複雑さのファクターはそれくらいに効いてくる。

たかが15%文字以外の要素が増えるだけで、
速度が50%落ちるというのは衝撃的だ。
編集モードというスムーズなものですらこれだ。
正規位置のコマンドを呼び出していたら、
さらに速度は低下するだろう。

タイパーが長文を書かないのはこれが理由かも知れない。
タイピングゲームに比べて、
変換以降のある実践は、かように速度が落ちるから詰まらないのだろう。


勿論、複雑な文体だからダメという訳ではない。
複雑な文章は濃い味わいがあるし、
平易な文体は薄い分、量を求めたくなる。
濃さ×量がほんとの内容量かもしれないわけで。

なお「四畳半神話大系」が複雑な割に速度が出ているのは、
文体に漢字熟語が多く、
そこが薙刀式の得意とする拗音が沢山含まれているからだと思う。
(あと同じ京大出身者として、文体が似通っている説もある)


勿論これは冒頭箇所のみの、
わずかな文字数での測定だから、
何十ページもやれば疲労のファクターも効いてきて、
速度は半分以下に落ちるだろう。
複雑な文体なら500を切るかも知れない。

たとえば前書き、後書きで比較しても、
元気な頃の前書きの方が速く、
沢山の打ち終えた後書きの方が疲労の分遅くなっている。


たとえば、
華麗なる技巧派、三島由紀夫の文章では、
辞書にない言葉を沢山打たなければならず、
さらに入力は難航するであろう。

しかしIMEがバカだからといって、
それに合わせる理由は人類にはない。

名文ありきである。
その文章を書くに当たって、
道具がブレーキをかけるべきではない。
配列やIMEやショートカットの困難さありきではない。

その道具でその文章が打ちにくいなら、
道具を変えるべきであり、文章を変えるべきではない。

僕がデジタル執筆に否定的なのは、
デジタル入力しやすい日本語に、
変質してしまうことに否定的なのだ。

なにせ現状のIME合わせでは、ラノベ文章が精一杯ってことだ。

本格文章をデジタルで書く困難さが、
あらためて立ち上がってきたと、
今回打ってみてわかった。



おおむね、原稿用紙を埋めた文字たちの、
5%〜15%ほど編集モードのキーが打鍵されている。

薙刀式ならホームポジションから1U範囲にすべてあるが、
デフォルトならば、このたびに遠くへ出張して、かつ戻ってこなくてはならず、
その損失は計り知れない。

オイデジタル入力よ。小説に不利すぎんだろ。
本格小説家はマイクロソフトの頭をはたいて、
さっさと自由な手書きに戻りなさい。

さもないと、IMEと操作系の質からラノベ文章に最適化されてしまうし、
ワードなんてクソエディタ使ってたら生産量は半分以下に落ちるだろう。
マイクロソフトは日本の文化を壊しにきた陰謀である、
という陰謀論すら成立するほどに、
日本語小説をデジタルで書くことには困難だらけである。


薙刀式はそれを自衛するための今のところ最強の手段のひとつだが、
それでもなお手書きが有利であることは否めない結論となった。
それは日々僕が実感していることでもある。
ブログ程度の文章は薙刀式が快適だが、
本格文章を書くときは僕は手書きを選択している。

つまり、これだけ速度があり手間が少なくても、
僕の理想に足りていない。

もっと慣れればもっとスムーズに速くなるだろうか?
さらに改良するには何が出来るだろうか?
posted by おおおかとしひこ at 10:47| Comment(0) | カタナ式 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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