2021年04月17日

驚かないものは面白いだろうか

面白さの定義はたいへん難しい。
主観的なものであるくせに、
統計的には一定の法則があるような気がする。
マスに売るものは特に集団としての大衆を意識せざるを得ない。

その一要素に必ず必要なものが、
驚きである、と仮説を述べてみよう。


驚きでまず想像するのはどんでん返しだろうか。

今までこうだと思っていたのが全く異なっていたものであったと分かり、
これまでの前提がガラガラ崩れて、
ネタバラシが「そうだったのか…!」と納得がいくものは、
強い驚きが必要だ。
(ただ驚くだけでは必要条件で、
そのあとの納得が十分条件である)

そのためには、
一度設定したものを全く逆から見る必要がある。
180度の転回こそが、驚きを生む。


ここまで強い驚きでなかったとしても、

・正体がわかる
・隠されていた秘密がわかる
・意外な展開
・怪物が去ったと思ったらまだいた

などは驚きを伴わない限り面白くない。
「まあ、せやろな」になってしまっては、
詰まらなさに拍車がかかるのみである。

驚きの前には予測、予想が存在する。
これからこうなるだろう、という未来への予測や、
この過去はこうだったのだろうとか、
人間関係などはこうなのだろうという、
過去や現在への推測だ。

これが覆されると、軽い驚きがあり、
「なんでだろう」と好奇心を生む。
そして予想と違う真実で納得すると、
「なるほど」と思い、満足がある。

すなわち、驚きは以下のものがペアだ。

・予測、予想(あえてあとと異なる方向への誘導をミスリードと呼ぶ)
・覆し(驚き)
・予想と異なる真実
・納得

このプロセスにおいて、
驚きは起爆剤になるわけだ。
驚かないとそのあとを知りたくなくなるので、
誘引剤であるとも言える。

そして、
驚かすのは半分でしかなく、
納得とペアであるということだ。
ただ驚かすだけの無責任なオオカミ少年は、
迫害されておしまいだろう。
連載作品で「なにい?!」という驚きで引っ張るのは良くあることだけど、
そのあとの納得がうまくいかないものは、
ただの時間稼ぎだろと非難の対象になるわけだ。


驚きは、自分で設定したものへの予測に対してだけで、
起こるのではない。

たとえば常識に反することや、
全く知らないことに対して、
我々の常識が通用しないと、
我々は驚く。

うんちくが機能する瞬間である。


たとえば「女優はカメラを見ないものだ」
というと驚くかも知れない。
カメラ目線にならない、という意味ではなく、
カメラのレンズに対して、わざと焦点を当てないテクニックがあるのだ。
目線方向はカメラを見ていても、
わざと焦点を合わせないことで、
「この人は私を見ているかも知れないが、
ほんとうには見てないかも知れない。
じゃあ一体どこを見てるのだろう」と、
「気になってしまう」というテクニックである。
「カメラマンに話しかけるつもりではなく、
その奥の遥か遠くの人々に話しかけるつもりで」
というテクニックも、同じことを目的としているわけだ。

また、距離だけでなく、わざとレンズの中心ではなく、
中心から少しずらして見るというテクニックもある。
目的は同じで、「気にさせるため」だ。

こういううんちくは「へえ」と思わせるだけ、
面白い要素になる。
知らない世界の秘密を少し知って、
好奇心が満たされて、納得の満足があるからだ。

それは、知らない世界ほど面白く、
頭の驚きが大きいほど面白いだろう。

だから、
知らない世界の職業ものはおもしろい。
常識を覆される何かで、必ず驚くからである。

逆にいうと、
驚きもしない「変わった職業」もののシナリオは、
存在意義がない。

「へえ、ふつう○○だと思うのに、
意外にもリアルでは△△なんだ」となればなるほど、
インパクトと満足があるものである。

つまり、驚きは話の掴みにもってこいなのだ。



「光より早い速度で宇宙が膨張している」
というのは大変な驚きだが、
これを説明する理論がまだないため、
この驚きは現在人類の宙ぶらりんになっている。

「女の子は○○で喜ぶんだよ」
という、ふつうの常識に反した情報も、
みんな欲している。

みんな驚きたいのである。
そのことによって、「いいこと知ったぞ」と思いたいわけだ。

リアルな世界でもそうなんだから、
うんちく以外でも、
ストーリーには驚きが必要だと思う。

もちろん、
ただ驚くだけでは脅しでしかない。
そのあとの納得が本筋である。

驚きで掴み、成程で満足させる。
その仕組みが「おもしろい」の一部を担っていると考えられる。
posted by おおおかとしひこ at 00:10| Comment(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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