2021年04月20日

キャラクターの過去、現在、未来

前記事の続き。
つまり、キャラクターの現在を決めるのは、
DNAではない。過去と未来(目的)である。



とある事情があって、こういう事件が起きた。
そのときに、こうしたいと思った。(過去、過去の時点での未来の目的)
それから、こういうことがあり、こうしてきた。(過去)

で、今いる。(現在)
心の中には、かつて思った目的を持っている。(未来)

シナリオが描くのはつねに現在だが、
現在は過去と未来を念頭においているということだ。


明日仕事がない日と、仕事がある日で、
飲み会の質は変わるよね。そういうことだ。

壮絶な過去を持つ人と、
のほほんと暮らしてきた人は、
全然違うよね。そういうことだ。

生まれ持った星座や血液型のような、
性格的なものはあるにせよ、
あるいは、遺伝子に入っているような性格的なものにせよ、
立場や過去の影響のほうが、大きいはずだ。

獅子座だろうが、魚座だろうが、
AB型だろうが、O型だろうが、
「長男として弟妹をかわいがっていて、責任者的な立場で育ってきて、
ある日家族を鬼に惨殺され、妹すら鬼にされた」
になれば、
「妹を戻し、鬼と戦う」
という未来の目的を持つのは同じだ。

そのやり方が、
獅子座ならオレオレで進めるだろうし、
魚座なら、他の人にアドバイスを聞いてやるだろうし、
という違いに過ぎないと思う。

人は異なるが、人は同じでもある。

ひどい目にあったら、何とかしようと思うのが、
人の同じところである。

逆に、だからこそ、
獅子座の観客も、魚座の観客も、
兄弟がいない人も、炭焼き小屋で働いたことない人も、
外国人も、
感情移入できるのである。


だから、ストーリーというのは、
性格や遺伝子と関係ない部分で、
過去や未来がどう現在に影響するのかを、
考えることでもある。

キャラクターとストーリーは不可分ではあるが、
キャラクターは入れ替えることが可能だ。
それは、過去と未来を移植することが可能である、
ということにすぎない。

見た目が変わっても、遺伝子が変わっても、
同じ過去に対して、同じ判断や感情を持つことができる。


キャラクターを、
口癖とか、外見とか、ファッションとか、得意技とか、
家族設定とか、好き嫌いの設定とか、
そのような点でとらえるのは間違いだ。
それはガワの楽しみでしかない。

過去、過去の時点での未来、
これまでの軌跡としての過去、
そしていまどのような未来を見ているのか、
という時系列でキャラクターを決めるべきである。

ぐうたらなおっさん(40)でも、
妹(38)が鬼にされたら元に戻そうとするはずだ。
そして鬼を倒すために、おっさんでも鬼滅隊に入ると思うんだよね。

もちろん、そのおっさんなりの鬼退治があるだろうけどね。


何が起こったのか。
そのときどう思い、どうしようとしたのか。
そして何をしてきたのか。
今それをどう思っていて、最終的にどうしたいのか。
それらがないものは、ストーリーの中のキャラクターではなく、
ただの設定書に過ぎない。

キャラクターを動かすのは目的だ。
目的には「なぜそうしたいのか」という動機があり、
動機は過去から発生している。
目的は、常に未来を向いている。


それらをつくらないかぎり、
キャラクターはいつまでたってもストーリーの住人にはならないだろう。
posted by おおおかとしひこ at 01:07| Comment(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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