前記事の続き。
つまり、キャラクターの現在を決めるのは、
DNAではない。過去と未来(目的)である。
とある事情があって、こういう事件が起きた。
そのときに、こうしたいと思った。(過去、過去の時点での未来の目的)
それから、こういうことがあり、こうしてきた。(過去)
で、今いる。(現在)
心の中には、かつて思った目的を持っている。(未来)
シナリオが描くのはつねに現在だが、
現在は過去と未来を念頭においているということだ。
明日仕事がない日と、仕事がある日で、
飲み会の質は変わるよね。そういうことだ。
壮絶な過去を持つ人と、
のほほんと暮らしてきた人は、
全然違うよね。そういうことだ。
生まれ持った星座や血液型のような、
性格的なものはあるにせよ、
あるいは、遺伝子に入っているような性格的なものにせよ、
立場や過去の影響のほうが、大きいはずだ。
獅子座だろうが、魚座だろうが、
AB型だろうが、O型だろうが、
「長男として弟妹をかわいがっていて、責任者的な立場で育ってきて、
ある日家族を鬼に惨殺され、妹すら鬼にされた」
になれば、
「妹を戻し、鬼と戦う」
という未来の目的を持つのは同じだ。
そのやり方が、
獅子座ならオレオレで進めるだろうし、
魚座なら、他の人にアドバイスを聞いてやるだろうし、
という違いに過ぎないと思う。
人は異なるが、人は同じでもある。
ひどい目にあったら、何とかしようと思うのが、
人の同じところである。
逆に、だからこそ、
獅子座の観客も、魚座の観客も、
兄弟がいない人も、炭焼き小屋で働いたことない人も、
外国人も、
感情移入できるのである。
だから、ストーリーというのは、
性格や遺伝子と関係ない部分で、
過去や未来がどう現在に影響するのかを、
考えることでもある。
キャラクターとストーリーは不可分ではあるが、
キャラクターは入れ替えることが可能だ。
それは、過去と未来を移植することが可能である、
ということにすぎない。
見た目が変わっても、遺伝子が変わっても、
同じ過去に対して、同じ判断や感情を持つことができる。
キャラクターを、
口癖とか、外見とか、ファッションとか、得意技とか、
家族設定とか、好き嫌いの設定とか、
そのような点でとらえるのは間違いだ。
それはガワの楽しみでしかない。
過去、過去の時点での未来、
これまでの軌跡としての過去、
そしていまどのような未来を見ているのか、
という時系列でキャラクターを決めるべきである。
ぐうたらなおっさん(40)でも、
妹(38)が鬼にされたら元に戻そうとするはずだ。
そして鬼を倒すために、おっさんでも鬼滅隊に入ると思うんだよね。
もちろん、そのおっさんなりの鬼退治があるだろうけどね。
何が起こったのか。
そのときどう思い、どうしようとしたのか。
そして何をしてきたのか。
今それをどう思っていて、最終的にどうしたいのか。
それらがないものは、ストーリーの中のキャラクターではなく、
ただの設定書に過ぎない。
キャラクターを動かすのは目的だ。
目的には「なぜそうしたいのか」という動機があり、
動機は過去から発生している。
目的は、常に未来を向いている。
それらをつくらないかぎり、
キャラクターはいつまでたってもストーリーの住人にはならないだろう。
2021年04月20日
この記事へのコメント
コメントを書く