2021年04月21日

【薙刀式】キーボード生活のブレイクポイント

これまで自分のキーボード生活に、
いくつかのブレイクポイントがあったと思うので整理してみる。


1. BS0.75U
2. カタナ式をつくる
3. HHKBを買う
4. カナ配列を色々試す
5. 薙刀式をつくる
6. NiZ→自作キーボードへ移行
7. 親指キーをつくる
8. ダブルスプリングスイッチをつくる
9. 3Dキーキャップをつくる


1. BS0.75U

それまでの僕は主にMacのMagic Keyboardを使っていた。
キーボードはPCに付属してくるものと思ってて、
会社のそれを適当に使っていた。

据え置きWindowsが撤去され、各自に安いノートが配られる。
そのパンタグラフのBSキーが、
通常の3/4の大きさの0.75Uだった。

毎回隣の\と押し間違う。
MS-IMEのデフォルト設定で、\\二連打がIMEオフにバインドされている。
(それを知ったのは数年後)
間違えて、あるいは書き直したいときBS連打すると、
半角\\\\\になり、
IMEオンにしなおし、BSを連打しなければならない現象に悩まされる。

これに激怒したことが、すべてのはじまりだ。

「これを設計したやつはおかしい。使ったことないだろ」と。

首都高速を設計した人は、車を運転しない人らしい。
加減速や坂の箇所やレーンチェンジのタイミングがおかしいらしく、
首都高速はいまだに渋滞を解消できていない。
それと同じだと思った。

動線がなっとらん、と。


支給PCなので窓から捨てるわけにもいかない。
他の人は「もう慣れた」という。
僕は慣れるつもりはなかった。

「所詮プログラムで動いてるんだから、
キーの配置なんてソフトで変えられるだろ」
と、調べ物を開始する。

その過程で、
Keyswap、レジストリをいじる方法、やまぶき、窓使いの憂鬱、のどか、
DvorakJを知る。

さらに、
・スペースキーとシフトを兼ねる(SandS)
・無変換、変換にCtrlやエンターやBSをバインドする
・押しながらだとモデファイア、単押しで別のキー(ワンショットモデファイア)
・「近場の親指を押しながら何か」に、遠いキーを当てる。
 たとえば数字をテンキー状にならべたり、
 よく使う記号(ー「」?!など)を近くにおく

という「考え方」を知る。

これはいい、ていうかなんでみんなこれをやらないんだ?
バカなのか?
阿呆な首都高で転び続けるくらいなら、
自分で首都高をつくろう。

それが最初の「考え方を変えた」ポイント。


2. カタナ式をつくる

同時期に、小説も書き始めていた。
これまでサイトメソッドで530字/10分くらいだったので、
ブラインドタッチを学ぼうとして切れる。(二度目)

こんな使いにくい動線が合理的なはずがない。

で、「よく使うAとかエンターやBSは、J近辺に集中させよう。
カーソルもいるな。右手は母音、左手が子音だと、
色々整理できるのでは?
じゃあ左右の手の間に十字カーソルにしよう」
と思いつく。

この時まだ「キー配列」という言葉は知らなかった。
論理配列、物理配列も知らなかった。
キーボードは全部同じ物理配列だと思っていた。

DvrakJ上にそれを実現し、カタナ式と名づけ使い始める。
それまでの僕はダウンロードもインストールもしたことがなかった。
生涯初めて自分でダウンロードしたのがDvorakJ。
インストール的なことが必要なく、
フォルダにコピーするだけで良かったのが効いたね。


カタナ式は快適そのもので、
qwertyの動線のめちゃくちゃさをスムーズさに変えた。

配列は変えられるし、
動線は整理されるべきだと考え方が変わる。

SandSによる連続シフト機構、
U位置にBS、人差し指下段にエンター、中央にカーソル、
J位置に最初の音「あ」を置くべき、
よく使う記号やショートカットをまとめたレイヤー、編集モードを置く、
などの考え方は、
最初に思ったことの実現だ。


一方、本気で文章を書くのに、
メンブレンやパンタグラフは疲れてしょうがない。
キーボードのいいやつが欲しいと思い、
キーボード沼を彷徨うことになる。


3. HHKBを買う

「どうせ色々買って最後にはHHKB買うんだから、
最初から買え」という誰かの言葉を信じて3万はたく。
親指モデファイアをやりたいので、
親指キーの豊富なJPモデル、当時出たばかりのBT。

「いいキーボードは劇的に執筆を変える」
ことを体感する。
しかし僕にとってこれはゴールではなく、
スタートだった。


4. カナ配列を色々試す

この頃「キー配列」と言うものがあることを知る。
Dvorak、Colemakなどの英字配列、
行段系ローマ字やカナの独自配列たち。

親指シフトは聞いたことがあったが、
他にも色んな工夫が存在する事を初めて知る。

なるほど、自分でも触れそうなやつを何個か触ってみようと。
下駄、飛鳥、親指シフトニコラ、新下駄。
そこまでしっくり来ない。

この時「自分は考える時、手書きの時は脳内発声がない」ことに気づく。
長年使ってきたローマ字は、常に脳内発声があった。
発音を意識せざるを得ないからだろう。

ところが下駄配列を使っている時、
脳内発声が起きていないことに気づく。
カナ配列全般で僕の脳内はとても静かだとわかった。
(その中でもなぜか親指シフトは結構脳内発声があった)

これが自分の考え方を大きく変えることになった。
自分の脳を邪魔するローマ字は、もう使うことはないだろう。



5. 薙刀式をつくる

ある日、薙刀式の三大アルペジオ「ある」「ない」「する」
を突如思いつく。
そこから色々、三年かけて薙刀式完成版に至る。

最初に感じた違和感はすべて払拭した、
渋滞しない首都高は、ようやく完成したわけだ。


6. NiZ→自作キーボードへ移行

しかしHHKBの重さに限界を感じてはいた。
最初触った時、
あんなにフェザータッチだと思ったのに。
ふつうのメンブレンやパンタグラフが65-55gだから、
45gは劇的に軽い。
しかさそれが重く感じ始める日が来た。

カタナ式×HHKBだと一日一万字は書けない。
打鍵数も多いし。
HHKBミーティングで30gは出ないと知った僕は、
窓からHHKBを投げ捨て、35gのNiZへ移行する。

HHKB時代から、
親指キーを逆づけしたり、
木を貼って高さを変えたり、
キーキャップを交換したりして工夫してたので、
NiZではさらに親指キーを削ったり、
理想の形の木を貼ったりして物理を工夫していた。
(それまでキーキャップはAliで買ったりしてた)

同時に自作キーボードという世界を知り、
「バネを軽く変えられる」と知る。
遊舎がオープンしてバネ交換したchoc20gを実際に触り、
この重さの自作キーボードを作ろうと思う。

左右分割で肩が楽になること。
左に捻らなければならないことから解放されて、
左右対称物理配列になること。
そして押下圧が軽くなること。
この三つが自作キーボードにしかないメリットだ。


僕の自キデビューは、
MiniAxe×Gateron Silent Red(20gバネ)
×PimpMyKeyboardのDSAと、
OEMの下段キー1.25Uを逆づけして干渉する部分を削ったもの
であった。

論理配列が変えられるのと同様に、
物理配列や、物理そのものだって、
工作すれば変えられる。

つまり、キーボードは自由につくることができる。

あとは(足りない技術は都度覚えながら)つくるのみだ。


7. 親指キーをつくる

下段の逆づけだけでは、親指の動きに対応しきれてないと感じる。
斜めに当たるんだから斜めに抉れるべきで、
凸でなく凹であるべきだとも。

3Dプリントができないので、木でつくった。
ステムは木彫りは無理なので、
DMM.makeでゲットした3Dプリントキーキャップの、
足だけ切り取ってくっつけた。
このための工具を買うところから、
僕の自作への道がつながってるのだ。
だってそれまで家にあった工具は、絵筆とカッターとノリと、
ドライバーだけだったのだ。

以降、
3DプリントするためにBlenderを覚え、
沢山の親指キーキャップをつくった。

プラスチックが好きじゃないので、
木、美濃焼、ガラス、天然石、
木製ボタン、本革ボタン、金属ボタン、
貝などのキーキャップも作り、遊舎にて販売したりした。

市販しているキーキャップはかわいいけど、
機能としてはまだ足りていないと思う。

手にしっくりくる曲面であるべきだし、
手触りのいい材質であるべきだ。
そのうち象牙でつくってみたい。鼈甲もいいかもなあ。


8. ダブルスプリングスイッチをつくる

軽いキースイッチは、
初動はとても軽くていいけれど、
底打ちのダメージが大きい。

そこで「底にもうひとつスプリングを仕込んで、
非線形バネをつくればいいのでは?」と思いつく。

底のダンパー(クッション)は、
金属スプリング、シリコンシート、EVA、ウェットスーツ用ゴムを経て、
現在エラストマー樹脂に落ち着いた。
同時に色んなキースイッチを試して、
DurockL1+エラストマーの、「マシュマロL1」スイッチ
(レシピは過去記事に公開)を使用中。


9. 3Dキーキャップをつくる

HHKB時代からキーキャップを勝手に交換して、
「手に合う曲面」を作ってたんだよね。
既成のキーキャップを組み合わせて、
独自のプロファイルを作ってもいた。

ぜろけーさんの3Dキーキャップ、
「平面PCBでもキーキャップの高さや天面の傾きを変えて、
3Dキーボード的なものにする」
というアイデアに衝撃を受けて、自分の理想の曲面をつくろうと思う。

手は曲線なんだから、それに合う3Dが合理的だ。
問題は、なにがベストが分かっていないことだ。

多くの3Dキーボードの作例と異なり、
お椀型の逆、球型のキーキャップを研究している。
「人間の手は球を包む形が一番自然」と考えたので。





僕はこれだけの疑問をPC入力に思い、
それらを一つ一つ別の考え方、
オルタナティブで突破してきた。

ペン一本、紙100枚あれば済むものを、
PCでやるには、
これだけの労力と工夫をもってしても、
まだ足りていないと実感している。


しかし、これからなんとかなるかもしれない。
とりあえず俯瞰して記録してみたので、
ここに書いた「考え方」がなにかの参考になればと思う。


英語という言語とタイプライターは、偶然というか必然的というか、
相性が良かった。
しかし日本語はそうではなかった。
英文タイプライターから直結した歴史の日本語用PCキーボードは、
都度増設を繰り返して来た九龍城だ。
だれも整理していない。
バベルの末裔として、この無能な歴史を覆し、
日本語のためのデジタル入力システムを完備したい。

ライバルはiPhone。まじで。
(この記事もiPhoneで書きました)
posted by おおおかとしひこ at 20:09| Comment(0) | カタナ式 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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