2021年04月28日

時間帯でシーンを考える

それは何時ごろのシーンか?
明確に考えなくてもいいんだけど、
困った時にこれを考えるとヒントになるかも知れない。


早朝のまだ誰もいない時間帯。
みんな起き始めて、町が起き始めた時間帯。
朝のニュースの時間帯。
出勤や通学の時間帯。
店や会社がはじまる時間帯。
午前中の、まだ前半戦の時間帯。
お腹がすいた時間帯。

ランチをかきこむ時間帯。
遅めの昼飯の時間帯。
なんだか眠くなってくる時間帯。
日が傾きかけて、一日の終わりを予感する時間帯。

公園に母親が迎えに来る時間帯。
夕日を眺める時間帯。
陽が沈んで、しばらく天空が明るい時間帯。
夜の電気をつけないと暗い時間帯。

退勤ラッシュの時間帯。
ディナーの時間帯、ふつうの晩御飯の時間帯。
何かを一人でやったりする趣味の時間帯、
セックスする時間帯。
眠りにつく時間帯。

あるいは、一人で創作する時間帯。
徹夜明けの時間帯。
夜がしらんでくる時間帯。
オールしたあとの時間帯。
そのあと帰るのに、出勤する人たちと逆に動く時間帯。
(そのあと二徹三徹もあるよ)


普通じゃない時間帯もある。

寝過ぎて夕方くらいに起きる時間帯とか、
風邪で家で寝込んでる時間帯とか。
ランチを食い損ねた4時頃とか。
寝落ちしたので、風呂に入らず起きた朝とか。

まあ大体、
飯と風呂と寝るを基準にして考えるといいだろうか。


「ある地方特有の、その時間にしかないもの」もあるだろう。
もう終わったけど「笑っていいとも!」は、
会社の昼休みの時間帯であった。
朝や夕方にチャイムや寺の鐘が鳴る地方もあるだろう。
市場の近くでは、そのざわめきで時間帯を知るだろう。


で、
そのシーンはどの時間帯?
と問うてみると面白いぞ。


シナリオ記法では、デフォルトは「昼」だ。

これはべつにランチ後夕方まで、を意味せず、
「日が出ている常識的な時間帯」を意味する。
撮影をしてるときに、
「まあ大体太陽が出てればよし」ということだ。
午後設定のシーンを午前中や朝に撮ったって、
大体バレないからね。

だから映画では「昼」が多い。
そして日本のシナリオでは、省略してとくに時間帯を書かなければ、
「昼」という約束がある。
(ハリウッドでは、dayと明記するみたい)


ようやくここからが本題。

うまく書けているシーン以外のシーン。
うまく書けないとか、
いまいち、と思えるシーンの、
「時間帯を変える」とうまく行くかも、
という話。


「カップルが別れ話をする」を考えよう。
ベタならば、「昼間の喫茶店」が選ばれる。
「夜、バー」かも知れない。
でも普通すぎてあんまり面白くない。

「夕方、会社の給湯室」にすると社内恋愛的で面白いよね。
さらに、
「早朝」にしてみるとどうだ?

「早朝、まだ開いていない喫茶店の前で」でもいいし、
「早朝、(二十四時間営業の)吉野家」でもいい。

こうすると急に色がつく。

「朝、通勤ラッシュで」でもいいよね。
「深夜十二時を回る頃」も面白そう。

こんな風にして、
「ベタな時間帯だと平凡なシーンが、
急に面白くなる」ことがある。

単純にガワからの発想かも知れないが、
時間帯は社会と密接な関係があるため、
行動に制限がかかることがあるわけだ。

「早朝、別れ話をしたいのだが落ち着ける喫茶店がないため、
路上の自販機前で、新聞配達を見ながら」
というシーンになったりするわけだ。
これは見たことがないものになるだろう。


「暗殺するシーン」を考えよう。
普通は夜、人目につかない路上や、
寝付く時間帯に忍び込んで、だろう。

ところが朝出勤する時間帯ならどうか。
白昼堂々にも関わらず鉄砲玉が飛び交えば、
面白そうなシーンになるだろう。
(大阪王将の社長暗殺事件はこれであったね)
「夕方、家に帰る小学生たちの目の前で」
なら美しく残酷なシーンになるだろう。


「捜査員が全員集まって事件を検討する」なら、
普通は昼間か夜だが、
「深夜に全員叩き起こされて、
急遽集まったカラオケ店(開いてる店がなかったため)」
ならば、まったく別の緊張感が生まれるだろう。


もちろん、すっと流すシーンなのに、
わざわざこれをやって意味をつける必要はない。
しかし印象的にして立っているシーンにしたければ、
こうした一工夫は参考になるだろう。

それには、
「普通はこの時間帯」という感覚は大事かもね。
それじゃないことを考えればいいからだ。


「プロポーズ」は?
夜ディナーの時、夕日が沈む時、
ディナーからどこかへ移動する時、
二人で眠った朝、などがベタな時間帯かね。

僕の後輩は「ゴミ出しをしたあと」にプロポーズしたそうだ。
そんな人生の物語があってもいいよね。



ふつうは、「それに相応しい時間帯」がある。
大体合理的に決まってるものだ。

だから、ベタじゃない時間帯にそれをするのは、
何故なのか、という理由づけが必要である。
そこに納得のいくなにかがあると、
それがストーリーを牽引するはずだ。

白昼堂々社長を暗殺したのは、
脅しだろう。

後輩がプロポーズしたのは、
花束を下駄箱に隠していて(一緒に住んでると花を発見されてしまうため)、
ゴミ出しをつっかけで行って帰ってきたときに、
下駄箱を開けたのだそうだ。

こういう行動の制限や工夫こそが、
人の動機を表現するわけだね。

シナリオの柱(時間と場所を書くところ)には、
そのような意味がある。
そこまで考えて書くことが出来る。
posted by おおおかとしひこ at 00:07| Comment(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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