それは何時ごろのシーンか?
明確に考えなくてもいいんだけど、
困った時にこれを考えるとヒントになるかも知れない。
早朝のまだ誰もいない時間帯。
みんな起き始めて、町が起き始めた時間帯。
朝のニュースの時間帯。
出勤や通学の時間帯。
店や会社がはじまる時間帯。
午前中の、まだ前半戦の時間帯。
お腹がすいた時間帯。
ランチをかきこむ時間帯。
遅めの昼飯の時間帯。
なんだか眠くなってくる時間帯。
日が傾きかけて、一日の終わりを予感する時間帯。
公園に母親が迎えに来る時間帯。
夕日を眺める時間帯。
陽が沈んで、しばらく天空が明るい時間帯。
夜の電気をつけないと暗い時間帯。
退勤ラッシュの時間帯。
ディナーの時間帯、ふつうの晩御飯の時間帯。
何かを一人でやったりする趣味の時間帯、
セックスする時間帯。
眠りにつく時間帯。
あるいは、一人で創作する時間帯。
徹夜明けの時間帯。
夜がしらんでくる時間帯。
オールしたあとの時間帯。
そのあと帰るのに、出勤する人たちと逆に動く時間帯。
(そのあと二徹三徹もあるよ)
普通じゃない時間帯もある。
寝過ぎて夕方くらいに起きる時間帯とか、
風邪で家で寝込んでる時間帯とか。
ランチを食い損ねた4時頃とか。
寝落ちしたので、風呂に入らず起きた朝とか。
まあ大体、
飯と風呂と寝るを基準にして考えるといいだろうか。
「ある地方特有の、その時間にしかないもの」もあるだろう。
もう終わったけど「笑っていいとも!」は、
会社の昼休みの時間帯であった。
朝や夕方にチャイムや寺の鐘が鳴る地方もあるだろう。
市場の近くでは、そのざわめきで時間帯を知るだろう。
で、
そのシーンはどの時間帯?
と問うてみると面白いぞ。
シナリオ記法では、デフォルトは「昼」だ。
これはべつにランチ後夕方まで、を意味せず、
「日が出ている常識的な時間帯」を意味する。
撮影をしてるときに、
「まあ大体太陽が出てればよし」ということだ。
午後設定のシーンを午前中や朝に撮ったって、
大体バレないからね。
だから映画では「昼」が多い。
そして日本のシナリオでは、省略してとくに時間帯を書かなければ、
「昼」という約束がある。
(ハリウッドでは、dayと明記するみたい)
ようやくここからが本題。
うまく書けているシーン以外のシーン。
うまく書けないとか、
いまいち、と思えるシーンの、
「時間帯を変える」とうまく行くかも、
という話。
「カップルが別れ話をする」を考えよう。
ベタならば、「昼間の喫茶店」が選ばれる。
「夜、バー」かも知れない。
でも普通すぎてあんまり面白くない。
「夕方、会社の給湯室」にすると社内恋愛的で面白いよね。
さらに、
「早朝」にしてみるとどうだ?
「早朝、まだ開いていない喫茶店の前で」でもいいし、
「早朝、(二十四時間営業の)吉野家」でもいい。
こうすると急に色がつく。
「朝、通勤ラッシュで」でもいいよね。
「深夜十二時を回る頃」も面白そう。
こんな風にして、
「ベタな時間帯だと平凡なシーンが、
急に面白くなる」ことがある。
単純にガワからの発想かも知れないが、
時間帯は社会と密接な関係があるため、
行動に制限がかかることがあるわけだ。
「早朝、別れ話をしたいのだが落ち着ける喫茶店がないため、
路上の自販機前で、新聞配達を見ながら」
というシーンになったりするわけだ。
これは見たことがないものになるだろう。
「暗殺するシーン」を考えよう。
普通は夜、人目につかない路上や、
寝付く時間帯に忍び込んで、だろう。
ところが朝出勤する時間帯ならどうか。
白昼堂々にも関わらず鉄砲玉が飛び交えば、
面白そうなシーンになるだろう。
(大阪王将の社長暗殺事件はこれであったね)
「夕方、家に帰る小学生たちの目の前で」
なら美しく残酷なシーンになるだろう。
「捜査員が全員集まって事件を検討する」なら、
普通は昼間か夜だが、
「深夜に全員叩き起こされて、
急遽集まったカラオケ店(開いてる店がなかったため)」
ならば、まったく別の緊張感が生まれるだろう。
もちろん、すっと流すシーンなのに、
わざわざこれをやって意味をつける必要はない。
しかし印象的にして立っているシーンにしたければ、
こうした一工夫は参考になるだろう。
それには、
「普通はこの時間帯」という感覚は大事かもね。
それじゃないことを考えればいいからだ。
「プロポーズ」は?
夜ディナーの時、夕日が沈む時、
ディナーからどこかへ移動する時、
二人で眠った朝、などがベタな時間帯かね。
僕の後輩は「ゴミ出しをしたあと」にプロポーズしたそうだ。
そんな人生の物語があってもいいよね。
ふつうは、「それに相応しい時間帯」がある。
大体合理的に決まってるものだ。
だから、ベタじゃない時間帯にそれをするのは、
何故なのか、という理由づけが必要である。
そこに納得のいくなにかがあると、
それがストーリーを牽引するはずだ。
白昼堂々社長を暗殺したのは、
脅しだろう。
後輩がプロポーズしたのは、
花束を下駄箱に隠していて(一緒に住んでると花を発見されてしまうため)、
ゴミ出しをつっかけで行って帰ってきたときに、
下駄箱を開けたのだそうだ。
こういう行動の制限や工夫こそが、
人の動機を表現するわけだね。
シナリオの柱(時間と場所を書くところ)には、
そのような意味がある。
そこまで考えて書くことが出来る。
2021年04月28日
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