僕がまだ一年目のときに、先輩が出してくれた課題。
ネットがはやる遥か前のこと。
今ならSNSで伝わりそうなデマを考えろ、となるかな。
はいシンキングタイム。
これは、上手な嘘をつくるためのトレーニングだ。
三つほどチェックポイントがある。
第一に、矛盾があってはいけない。
矛盾があれば嘘とバレるからだ。
デマは拡散力を失う。
デマは第一にもっともらしくなければならない。
第二に、期待や願望が少し入っているものである。
「コロナは中国の開発した兵器」
「311は人工地震」などだろうか。
悲劇を人は認めたくないから、
誰かのせいにしたがるものだ。
その薄々そうではないか、誰かにそう言って欲しい、
という集合的無意識に答えるデマが、
心に刺さるデマになる。
「あなたは悪くない」のパターンもこれだね。
「あなたに足りないのは若さじゃなく、テクニック」
という年上向けの女性雑誌のコピーもあった。
これは悪魔の囁きだ。
ドラマ風魔の「壬生、お前が悪いんじゃない。武器が悪いんだ」
という陽炎の囁きは、これを利用している。
第三に、「それを知ってしまったら人に言いたくなる」こと。
ただ願望をくすぐるだけでなく、
拡散力があることが必要だ。
「知ってる?」と他人に言いたくなるやつが、
広がりの力を持つ。
「私は誰も気づいていない、世の中の真実を知ってしまった」
という驚きや、
伝えなければ、という使命感や、
それを教えることでマウントを取れるものが、
広まりやすいものだろう。
SNSよりも2ちゃんよりも前にこんな課題を出したのは、
我々が広告というデマと真実の狭間にいる職業だからで、
それを見極める力を持つためであり、
なおかつギリギリの何かを創作できる力を養うためだ。
デマを作りなさい。
それが面白いなら、流行る何かの要素を持っている可能性がある。
ちなみに僕のその時の回答は、
「(当時二年目の)K1グランプリのトーナメントは操作されている」
というやつ。
もっともらしく一回戦の組み合わせのファイトスタイルの噛み合わなさ、
勝ち上がる計画が大体決まってることを、
全組み合わせで示してみせた。
当時はくじ引きで一回戦の組み合わせをしていたが、
そんなもの簡単に操作できるよね、という検証もつけておいた。
まだ谷川がプロデューサーになる前だから、
そこまであからさまではなかった時のものだ。
まさかその後本当に操作されてるトーナメントになるとはつゆ知らず、
なかなか良く出来たデマだったと思う。
面白い課題なので、
是非挑んでくれたまえ。
これがなんの役に立つかって?
創作そのものではないか。
2021年04月30日
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