物理配列とは、キーボードのキーの配置そのもののこと。
左手にエンターがあるようなキーボードだって自作キーボードにはある。
論理配列とは、そのキーになにが割り当てられているかのセット。
物理配列が同じでも、プログラミングによって、
論理配列を変えることが出来る。
物理と論理、どちらがファクターとして大きいだろう?
「○○配列」のブーム?があったのは、
2000年代初頭であったように思われる。
2ちゃんのスレも沢山あったろうし、
タイプウェルなどのタイピングブームもあっただろう。
その時前提となっていたのは、
「物理配列は全国一律ほぼ同じ」
であっただろう。
JIS規格すごい。
デスクトップ前提、JIS規格ということで、
「同じ物理配列のキーボードを使う人たちが、
これを変えられない前提で、
論理配列をいじりはじめた」
のが、
「○○配列」ブームであったのではないかと思われる。
JIS規格には親指キーの規定がないから、
変換無変換スペースあたりは、
自由な幅と位置にあった。
だからB割れを探すことが至上であっただろう。
「そこ以外は同じ」が前提にあったように思う。
(あとはメンブレンかメカニカルか静電容量か、
というスイッチ機構の違いだろう)
Mac派だけがパンタグラフで、
これは今に至るまで同じ。
ノートPCでパンタグラフが採用されて、
ノートの普及とともに、物理配列はJIS規格からはみ出し始めた。
右端は変態配列になり、
親指キーもよりバラバラになってゆく。
この頃から、
「同じ物理配列を使ったタイピング競争」
という競技的な面白さが薄れていく気がする。
同じ条件で戦うことのほうが面白いからね。
この頃から「○○配列」ブームは下火になったような気がする。
物理のファクターが論理より大きく、
論理の工夫よりも、
まず物理でまともなやつを探すことのほうが優先事項になってしまったのではないか。
そして、
日本のメーカーの凋落によって、
JIS規格準拠よりも、
「USキーボードをJISに改造したもの」
が主流になりつつあるのが現在。
長大なスペースバーに、日本人は意味を見出さない。
むしろ中華メーカーの方が、
ただしくJIS親指部分を再現してくれることのほうが増えてきた。
「そんな物理配列に意味ある?」
として、
新しい物理配列の模索が、
自作キーボードブームを支えているように思える。
僕は、
「親指を活用したい」
「左ロウスタッガードはおかしい」
「押下圧が軽い(30gより下)のがいい」
を求めて自作キーボードに入った。
論理配列はすでに薙刀式を使っていたから、
「薙刀式を使いやすい物理配列」
を求めてMiniAxeと心中することにした。
物理配列の探求の沼はとても深く、
いまだに「自分に合う物理配列とは?」
を見つけていない人は沢山いると思う。
qwertyという論理配列のままで、
ずっと物理配列を探求しているのが現在だろう。
だけど、物理配列が固定し始めると、
今度は論理配列が気になってくると思う。
機能キーをいじるキーマップ沼の存在がそれだ。
たとえ同じ物理配列でも、
合理的なキーマップは、
デフォルトのままとは限らない。
「同じ物理配列で、論理配列を変更して工夫する」
という、かつての配列ブームと同じムーブメントが、
今静かに進行している。
本来ならば「○○物理配列に最適な○○論理配列」
という名前がつくのだろうが、
アイデンティティがややこしすぎて、
「○○配列」と言いづらく、
なかなか普及しづらいのだろう。
たとえば先日紹介した柳式ローマ字は、
Willow物理配列が固定し始めたからこその、
気になる論理配列の解消をしはじめたのだと思われる。
これでWillow固定が進めば、
より論理配列は進化しそうだなと僕は予想している。
人間は環境を作りかえる生き物だ。
物理ファクターのほうが大きな要素で、
その環境変動が収まってから、
論理ファクターをいじり始めるのではないだろうか。
もちろん、
JISのまま○○配列を使い続ける人はいて、
ただその人たちは新しく情報を発信しないので、
ネット界隈ではいないも同然になってるのが勿体ない。
親指シフターはたまに発信するけど、
いまの物理配列ブームを知らないように僕には見える。
もしキーボードを好きなように作れるなら?
まず物理を変えたいと思うのではないかな。
論理配列はそのあとにやって来るのだろう。
僕は平面構造はミニマリスト的に収束したので、
3D構造の沼にいる。
これは薙刀式という論理配列のためにあるので、
新しい物理配列があれば、
また別の論理配列が生まれる気がする。
次の○○配列ブームは、
物理配列が落ち着いたころにやって来るのかもしれない。
2021年05月07日
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