おそらく僕が3Dキーキャップで目指していることは、
「すべての指とキーの感覚を、等距離に」
ではないかと思った。
指はキーボードの形をしていないし、
一生キーボードの形にはならない。
だから運指の工夫で、
「まるでキーボードの形に指がなっている」
ように動かす。
そこに、無理と無駄があるわけだ。
TYが無理があるなら近づければいい。
下段キーが打ちづらいなら、打ちやすい形にすればいい。
小指が遠いなら、近い位置に動かせばいい。
指が立体的な軌道を描くなら、
その立体の位置にキーを配置するべきだ。
僕はつまり、
「指がキーボードの形になるのではなく、
キーボードが指の形になる」
ことを目指しているわけだ。
しかしこれがなかなかに難しく、
もう一年以上ぐねぐねといじっている。
最初に手を出した時から、
もう30回くらいは試作をプリントしている。
一回8000円くらいかかるから、24万くらいは使ったのか。むむむ。
ゆかりさんは3Dプリンタ持ってるからまだ試行錯誤が安く上がるかもなあ。
プリンタ買った方が早かったかもね。
(でもメンテとかやる気がしない)
で、具体的には何が最終目標なんだろう、
と考えた時に、
「指とキーの距離がすべて同じ」ではないかと思った。
手を自然に構えた時、
右手ホーム段で考えると、
HJKL;が、各指から等距離にならないか?
それと、親指と親指キーの距離も、
という要求だ。
平面キーボードでそうならないことは、
各指のたわみが違うことや、
そもそも各指で同じ箇所がキーに触れていないことから明らかだ。
指の同じところが当たりたい(指紋の中央部)し、
各指が自然に動いた時に、
同じ距離感でホームキーを押したい。
中指や人差し指は大きめに動くし、
小指は少ししか動かない。
客観的な距離ではなく、
主観的な距離が同じであるように、
いろんなことを調整したいのが、
最終目的なのだなあ、と思う。
それは、デファクトのキーボードでは不可能だ。
平面キーボードでも不可能だ。
立体化にはいくつかの障壁があり、
僕は3DPCBの手間を避けるために、
平面PCB+立体キーキャップのアプローチを取っている。
ゆかりさんは、
「指の第二関節を曲げた状態が基準」と言っていた。
これはキネシス以来の、凹型キーボードの原理だろう。
僕は、
「球を掴んだような形が基準」と考えた。
手の自然な形はこれで、
第二関節を曲げて指を突き下ろすのは、
そもそも人類にとって不自然であると考えた。
球を掴んだような形から、
上中下段、人差し指伸ばし、親指が、
等距離になっていると、
最高に使いやすいはずだと考えた。
それは1mm以下、1度以下の単位での調整が必要だ。
なかなか正解がわからない。
あるキーを変えただけで全部を変える必要も出て来る。
影響力のあるキーは、
JK親指あたりだが、
Nを変えるとKも変えたくなる、みたいな関係性がある。
最近まとまってきた3Dキーキャップではあるものの、
なんだか微妙なところが違う。
各キーがちぐはぐな感じがした。
ある手の置き方で心地よいところと、
別の手の置き方で心地よい部分がある。
なんだかつぎはぎっぽいのだ。
油粘土で微調整するアイデアは、
この微妙さにかなり効果的で、
あっという間に正解へたどりついた。
手の感覚をベースにまとめるのが一番だからね。
(CADは見た目と数字しかなく、触れない)
で、やっと最終のOK基準が、
「指紋部分で打てて、しかも全キーが指から等距離」
という感覚なのだということがわかってきた。
もちろん、Jと、UMは等距離にはならないけど、
中段と上下段は等距離に整えるとかそういうこと。
でも、各指は長さも回転角も、実はついている角度も違う。
だから、客観的な等距離(格子配列がその例)ではなく、
主観的な等距離をつくっている。
サドルプロファイルはひとつの到達点だが、
違う形ならもっと踏み込めると思ってコツコツやっている。
昨日発注かけたやつはかなり自信作だが、
触ってみるまでわからないのがキーボードだ。
ピアノの教本を見ると、
「すべての指を分離できるように」
「すべての指をひとしく使えるように」
「すべての指の粒をそろえるように」
という目標がある。
僕はその逆で、
「そのそろってない指が、
そろっているように感じるキーボードで、
結果的にそろう」
が目標だなあ。
もちろん耐久性や器用度にばらつきがあるから、
それを論理配列薙刀式でコントロールすればいいのでは、
と考えている。
2021年05月09日
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