2021年05月31日

乱交の演出は難しい

AVの話だが、物語にも通ずる。


乱交ものは、最初は面白いけど、すぐに飽きてくる。

最初は「すげー!」という刺激があるが、
それに慣れてきたあとは、
「ただやってるだけ」
「誰かと誰かの組み合わせにすぎない」
が分かってきてしまう。

また、乱交はフィニッシュが難しいと言われる。
先に終わってしまった人たちが、
手持ち無沙汰になるからだ。
最後までやってるカップルを囲んで、
がんばれがんばれというのも変だしね。
逆に、
一斉にイクというのも作為を感じる。
そんなわけないやんと誰もが思う。

あるいは、
現実的には、どこかでフィニッシュして、
またどこかでフィニッシュしてるだけの、
散発的な現象なのに違いない。
一人称であればそれでもよいが、
客観であるところのAVではそうはいかない。
ある中心となるカップルがフィニッシュすれば、
それで終わりか?
途中まだやってても、フェードアウトして終わりか?
そうもいかないだろう。

ここに、「終わり方を決めることの難しさ」がある。

現実は、一人称から見た独善的世界が、
多点視点で動いているだけだ。
しかし映像では三人称視点で、
それらの世界の始まりから終わりまでが意味のあることだ。

よくあるのは、
脇の方のカップルが適当に小フィニッシュし、
次々と中程度カップルがフィニッシュし、
いよいよメインカップルがスーパーフィニッシュするという、
クライマックスの段取りがわかりやすく組まれたものである。

しかしこれは本来ランダムフィニッシュであるところの、
乱交に演出が入っていることを意味する。
「それはリアリティがない」と思ったら、
覚めちゃうよね。
(だから最近の乱交ものは、「大乱交大会」と先に銘打つ。
大会だから、大会の盛り上がり用の演出は許容するということ)


乱交こそは、
「始めるのは簡単でワクワクするが、
途中の展開が難しく、
飽きとの戦いになってしまい、
終わらせ方が難しい」
ものの典型なのだと言うことが、
脚本論的に理解できる。

つまり、
乱交の台本をうまく書ければ、
脚本家として一流ということだ。


よくよく考えれば、
乱交とはつまり出落ちなのだ。

誰と誰がカップルになるかとか、
どういう始め方をするかまでは、
バラエティが描けるのだが、
いざ始まってしまえば大体みんな同じになり、
混ざってしまうのである。

まあその「個を超えて混じわりあおう」
というのが乱交なのかも知れないが、
現実の乱交がたとえそうだとしても、
映像になる乱交についてはそうではない。
そこにストーリー性がないものは、
時間軸を持つものとして存在価値がないのである。


ではその条件を満たした、
素晴らしい乱交ビデオはあり得るだろうか?

僕はあまり好きではないのでたくさん見てないので、
名作があるかどうかはわからない。
しかし「どの乱交も似たようなものに見える」ならば、
そのビデオの失敗だろうね。



さてようやく本題だ。

n人の綱引きが誤りがちなのは、
この乱交になってしまうことだ。
くんずほぐれつを作ることが作者的に面白くなってしまい、
観客にとってはどうでもいい肉ダルマにしかなっていないということだ。

始めることは簡単だが、
展開やクライマックス、フィニッシュをつくることが、
シングル戦よりも、
乱交のほうが遥かに難しいわけだ。

シングル戦に比べて、
乱交のほうが遥かに複雑性が高いくせに、
品質やバラエティはシングル戦のほうが遥かに上だ。

複雑にしすぎると、作者自身がそのカオスに呑まれてしまうのだろう。


ということで、
n人の綱引きは諸刃の剣だ。

三国志のクライマックスは、
実は地図を三つに破く、天下三分の計で終わってるのかも知れない。

だってそこ以降の記憶があんまりないんだよね。
ぐだぐだ、という印象しかない。
なんで関羽を取り合ってるんだっけ、
なんで関羽は裏切ったんだっけ、
がよく分からない。
で、それって桃園の誓いとどうなったんだっけ、
とかがよく分からないままだ。

それはn人の綱引きが、単なる乱交ビデオのように、
まあどうでもいいや、大体おんなじだし、
に陥っていたからだと、僕は考える。

趙雲なんてぽっと出のわりにでしゃばるし、
龐統先生は活躍しないし、
孔明が死んでもグッとこない。

ついでに終わり方ももやっとしている。
これはつまり、
失敗した乱交ビデオだ。



男女が同数じゃない方の乱交のほうが、
面白かったりする。

n人の綱引きは、
完全拮抗ではなく、
どこか歪にすると、
時間の矢が進みやすい可能性が高いのだと思われる。
posted by おおおかとしひこ at 00:15| Comment(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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