2021年06月07日

幕の切れ目は何を意味するのか

三幕構造は、全体は三幕であるべきだと考える、
西洋の演劇から来た考え方である。

演劇では暗転して幕が降り、セットチェンジがあって幕が開く。
幕とはすなわちセットの数のことだ。
(場という数え方もある。
定義がややこしいので以下では、
幕が開いてから降りるまでを単に幕と考える)

幕とストーリーの関係について考えよう。


演劇では幕が物理的に降りて、
ゴトゴトと美術さんたちがセットチェンジをする。
そして幕が開くと別のセットになっている。

そのすこし待つ間に、
これからストーリーがどうなっていくのか想像したり、
あれはああいうことだったのかなあ、
などとこれまであったことを脳内でまとめたりする。

だからか、
次の幕が上がったときは、
前の幕から見てやや時間が経過したあとから始まることが多い。
幕と幕の間の時間を、演出として考えているわけだね。


物理的な幕のある演劇と違い、
映画は幕がない。

インターミッションがあるときは幕があることもあるが、
基本物理的な遮るものはない。
ただ、映像がつながるのみである。


暗転すればいいのだろうか。
時間経過を多めに設定すればいいのだろうか。

逆に、幕と幕の間を決めるものは何か。
シーンとシーンの間のつなぎと何が違うのか。

僕は、ストーリーでつくれると思う。



時間経過や、暗転、場所が変わることなどは、
幕の間と関係ないと僕は思っている。
その代わり、
ひとつだけ大事なことをすればよいと。

それは、
「幕の切れ際に、焦点をひとつに絞る」
ことだと思う。


それまでにあった、
「あれはどうなるんだろう」
「これはどうなってしまうのか」
などの焦点をひとつにまとめて、
「一体Pはどうなってしまうのか?!」
に全部集めてしまうことが、
幕切れのときにあるべきことではないかと考えている。

そうなると、
幕の前のブロックと、幕のあとのブロックが、
意味的に切れるからだ。
それでいて、大きく太いパイプでつながったように思えるからだ。


焦点が細かく色々あるようなときに、
シーンがただ変わっても、
「まだ話は続いていて、大きな切れ目になっていない」
と感じるに違いない。
しかしそれらがまとまってたった一つの焦点になったとき、
「いよいよこのブロックは終わり、
次のブロックへ行くのだな」とわかると思う。

もちろん、それが幕という一番大きな構造ではなく、
もう少し小さなブロックでやることも、
やぶさかではないだろう。
しかし小さなブロックでそれをやるならば、
幕というもっと大きな単位でやるべきことは、
もっと大きな単位の焦点のまとまりが必要かもしれない。

それがセンタークエスチョンであることは、
多少脚本論をかじったなら、理解できることと思う。


なぜ幕の切れ目で、
「〇〇は解決するのか?」
とセンタークエスチョンを提示するのか、
という問いには、これまでの議論が答えるだろう。

なるべく大きな焦点に、
これまでのことをまとめるためであり、
それを次につなぐ為である。
その一番大きなものが、センタークエスチョンというわけだ。

もちろん、センタークエスチョンを提示しただけではなんの意味もない。

「あの言葉の意味は」
「あの伏線は解消するのか」
「あいつのあれはどうなるんだろう」
みたいな小さな問いはすべて、
センタークエスチョンが解決すれば解決するだろうということを、
予感させなくてはならない。

これを幕の間に持ってくることで、
前の幕を圧縮した記憶にして、
次の幕を展開する脳のエリアを開けるのである。


演劇では物理的な幕の下げ、上げがあるから、
自動的になんとなくやってきたことかもしれないが、
幕のない映画では、
このように脚本でやっておかなくてはならない。


逆にこれらの「まとめ」がない幕の切れ目は、
とてもだらだらしているわけである。
失敗した映画のそれを見れば、明らかだと思う。
(たとえば実写版「ノルウェイの森」。
幕の切れ目は曖昧で、だらだらと続くのみであった)


ただセンタークエスチョンを提示すればいいのではない。
まとめとつなぎを、
「ひとつの焦点」として機能しないと、
幕の切れ目として適切な役割を果たしていないと言えるだろう。

それは小ブロックの境目でも同じかもしれない。
話をまとめて、
「次に何をひとつだけするべきか」は、
節目節目でやるべきことかもしれないね。

そうすると、集中することが出来ると思う。
posted by おおおかとしひこ at 00:19| Comment(0) | 脚本論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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