の写真が面白かったので。
じゃあなぜ、「ごはんが近づいてきてる」ことを我々は認識できる?
これはパラパラ漫画の原理、映画や動画の原理そのものである。
ある静止画と似た静止画をパパッと見た時、
我々は「違い」を認識して、
その違いに「動き」を感じるように出来ている。
だから30FPSとか60FPSとか120FPSとか、
コマ数を競うことはナンセンスで、
たかがこの4枚の写真でも動きを感じることの方が、
本質的だ。
で、なんで「近づいてる」と我々は判断できるのか?
ごはんと机の木目の関係が変わってないからだ。
そして、画角がアップになっているからだ。
つまり、
「ごはんと机の関係は変わってないのに、
どんどん大きくなるということは、
ごはんもしくはカメラが近づいている」
と、我々は無意識に解釈している。
「ごはんと卓が1:1の比率を保ったまま、
巨大化している」
という風には考えない。
それは、
「どちらがよりよくあるか」ということで決まると思う。
重要なことがふたつある。
1. 図-地の関係で、距離感を図ること
2. よくある現象の方を確からしいと判断すること
だ。
図-地は、figure、backgroundの訳語で、
視覚心理学で使われる専門用語。
被写体と背景、などのように写真用語では言うよね。
さて、
ではちなみに、ライス小〜特盛を表現したかったら、
どうするのが正解?
「机は動かないのに、ライスだけ大きくなる」だよね。
さて、ここで我々は、ひとつの法則を知る。
「動きを知るには、不動点を手がかりにする」
である。
もし机もごはんも双方動いていたら、
正確な動きを私たちは認識できないのである。
ここから導ける、我々脚本家が使える原理はふたつだ。
1. 変化をきっちりと見せたかったら、
動いてないものと比較すること
2. 双方を動かすと混乱して楽しい
である。
1.は成長を見せることによく使う。
ブックエンドテクニック(冒頭に成長前、ラストに成長後で、
全く同じ場面で異なる行動を示すことで表現すること)などは、
この典型だ。
冒頭では困ったババアを無視しているが、
ラストではお婆さんの道案内をしてあげている、などである。
ブックエンドにする必要もない。
ただ相手は「動いていないこと(成長していないこと)」
が重要。
「スタンドバイミー」では、
冒険して街に帰ってきたら、「この街こんなに小さかったっけ?」
というシーンがある。
街が動いていない机の役目を果たしてるわけだね。
修行のシーンでも、「これまで超えられなかった何かを超える」
シーンがあるよね。
あるいは、「敵を倒す」とき、
なぜ敵は変化しないのか?
という理由がこれだ。
変化してない敵を倒すから、
主人公の変化が見えるのである。
2.は、複雑さや混乱を表現するときに使う。
主人公サイドの行動と、敵側の行動が同時に絡む時などは、
どちらも停止してはならない。
絡むためには、双方の目的と行動がある必要がある。
どちらかがごはんまたは机になってはならない。
どちらも動くべきなのだ。
プロレスで、ダウンした相手が立ち上がるまで待つのは、
八百長だ。
「そこで停止している」ことがバレるからだ。
また、「よくある現象の方を確からしいと判断する」を使って、
ミスリードを仕込むことができる。
「近づいてると思ったら、実はごはんと机が共に巨大化していた」
のようにだ。
このように、「動く/動かない」をコントロールするだけで、
様々な変化や運動を表現できるぞ。
ごはんが近づいてるだけの手抜き写真やん、
と笑ってるだけではだめだ。
「何故そのような動きを感じるのか?」
と、「動き」「変化」の表現に敏感になろう。
色んなところから吸収できて、ヒントになるかもね。
2021年06月01日
この記事へのコメント
コメントを書く