つまり、どんでん返しでなければならない。
すごいどんでん返しでなくても良い。
あ、なるほどね、というやつぐらいは欲しい。
コロンブスの卵の構造を考えると、以下のようになる。
1 目的がある。「卵を立てること」
2 色々な常識的な手段をとる。
そしてそれはどれも失敗に終わる。
「がんばってそっと置く」「塩を下に敷く」
「黄身を下にして茹でる」など。
3 誰もが思いつかない大胆な方法で、
しかも言われてみればそれが最短距離で解決する方法を示す。
「端を割って立てる」
つまり、
目的、
ミスリード(の数々)、
どんでん返し、
という構造になっている。
通常ならばこうするが、
それはあまり目的に対して効果的ではない、
ということを示したうえで、
シンプルなアイデアひとつで、
常識破りではあるが、
それは実は最短距離であった方法で、
どんでん返しをするわけだ。
全てのストーリーはこれを求めている、
といっても過言ではない。
なぜならほとんどの問題は、
(ミスリードに使われる)常識的な方法で普通は解決するからだ。
駅へ急ぐならタクシーに乗ればいいのだ。
コロンブスの卵はないのである。
もっといい方法がないのか、
もっと常識を破る解決策はないのか。
その常識を破る方法は、
なぜ今まで誰もやらなかったのか。
(コストや安定性であきらめた例もある)
そしてその常識破りが成立するための、
逆算の問題とは。
そうしたことを、
ストーリーテラーたる者、
いつも考えているべきである。
まず見たことがない問題が大事だ。
どうやって解決すればよいか分ってしまうと、
もうそれをやればよいだけになってコロンブスの卵が登場する隙間がない。
ミスリードが大事である。
常識でトライすると、たいていこのように失敗する、
というパートは、
次への期待につながるからである。
そしてどんでんの、
なるほどそう来たか、
が本命だ。
これらの作りがすべて整わないと、
どんでん返しは機能しない。
そしてそもそもその解決の為の問題設定、
とループしてゆく。
今やネットで大体どんな解決策でも見つかってしまうから、
常識破りを思いつくことは相対的に難しくなっている。
しかしそもそも常識にない問題を設定してしまえばよいので、
問題設定が実は大事になってくるわけだね。
コロンブスの卵で大事なことは、
「卵を立てる」という常識破りの問題のほうにあるわけ。
あなたのストーリーにおける、
問題は何か?
それは普通どうやって解決に挑むのか?
それはどういう理由で失敗するのか?
そしてそれはどういう常識破りの方法で解決するのか?
その骨組みをうまく思いつけば、
Aストーリーはできたも同然だ。
そこが面白くないと、
そもそも面白くはならないと僕は思うがね。
もちろん、それはテーマとは関係ない。
テーマはそれを解決する人物のほうに存在する。
たとえば、
コロンブスが、
「これまで師匠の真似をしていろいろやってきたが、
はじめて師匠でも出会ったことがない問題に遭遇し、
自分のアイデアを試してよいときがやってきた」
という文脈にコロンブスの卵のエピソードを持ってくると、
「成長」というテーマの枠組みになるわけだ。
さらに、
「常識にとらわれないことが成長になる」
ということならば、
師匠は常識人の塊に設定する。
さらに極端に、
「当時の権力者で法律を決める人、流行作家でもある」
などのようにしてしまう。
そうして、
師匠を超えるドラマを、
卵の端を割るシーンで象徴するわけだね。
そこに常識破りでの解決方法がなくて、
「3Dプリンタで台を作る」などの常識的な方法しかなかったら、
面白くないわけだ。
なるほど、そうやって常識を超えるのか、
という腹落ちが、
ストーリーの説得力というものである。
で、そのエピソードが師匠越えの最初のエピソードだとして、
そのあと新大陸を発見すれば、
「その常識を破る成長力が、結果を出した」
というラストでハッピーエンドになるだろう。
ストーリーテラーは、
毎回コロンブスの卵に匹敵する例を思いつかないといけない。
それが出来ていないならBストーリー(個人の物語)で勝負するしかなくて、
Aストーリーで勝負することはあきらめたほうがいいだろう。
そういうAストーリーは、パンチが足りないと思われるだろうね。
逆に考えよう。
地味で泥臭いが確実なやり方の解決は、
ストーリーになるだろうか?
現実にはそれが正解だとしても、
それは「みんなが口にするストーリー」にはならないだろう。
なぜならそんな真実はみんな知っていて、
それは現実で体験しているからである。
その現実を越える、夢のようなコロンブスの卵だから、
あっと驚くものだから、
みんな見るのだよ。
2021年06月11日
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