具体的には、リスクといえるかな。
しかし、主人公的には、それは恐怖に見えているだろう。
ストーリーの正体とは、
問題の解決である。
しかしそれが簡単に解決できるならば、
金をとって見せるレベルのものにはならない。
一見解決するのが困難で、
しかしそれをやり遂げるすばらしさを描くから、
金をとってしかるべき、
すばらしいストーリーになるのだ。
だから一般に、面白い話というのは、
すぐには解決できない、
難しい問題を扱う。
で、
それが簡単に、ノーリスクで解けるならば、
それは難しい問題とは言わない。
難しい問題というのは、
何らかのリスク、危険、法を犯すこと、
失敗したときに失うものの大きさ、
などの、マイナス面が大きくあるものだ。
それがないと、
ノーリスクで賭けをすることと同じで、
たいしてハラハラしない。
ハラハラするということは、
つまりは危険を伴うということで、
それにある種の恐怖を感じているということだ。
もちろん、
高いところから落ちそうになるアクションとか、
モンスターに追いかけられることとか、
突然殺人狂に出会ってしまうという恐怖も、
ジャンル映画にはあるものだ。
それとは関係なく、
「この問題を解決するには、
恐怖のあるゲートをくぐらなければならない」
となっているべきだということである。
(モンスターや高所のアクションや殺人狂は、
解決するべき問題への障壁、
ゲートの一種として存在することが多い)
リスクとリターンという論理的な計算もあるが、
それよりももっと原始的な、
「恐怖」になっているところがポイントだ。
たとえば失敗したら社会生命を失うことは、
恐怖を伴うだろう。
社の運命を賭けたプロジェクトは、
失敗したら恐怖が待っているだろう。
好きな子に告白する勇気がないのは、
恐怖があるからだ。
進みたい動機があり、
明確な目的があって、
それでも進まないのは、
恐怖が邪魔をしているからだ。
その恐怖をいかに乗り越えるかが、
主人公の物語だともいえるだろう。
乗りこえ方は、ふたつあると思う。
1 克服
2 回避
1の克服は、恐怖を恐怖に感じなくなるまで、
成長することである。
高所恐怖症ならば、それを克服するわけだ。
主人公の弱点が設定されていて、
それを解決しない限りストーリーは進まない、
という風になっていれば、
いずれその弱点は克服されるものになるだろう。
2の回避は、
とくに克服を必要としない、
正面からそれに挑まないやり方である。
そのルートを行かないバイパスで解決したり、
誰か他の人に助けてもらったり、
などがあり得るだろうか。
2よりも1のほうが面白くなる。
しかし、難易度が高い。
2はご都合主義になりがちで、
逃げたと思われるだろう。
1もうまくやらないとご都合主義になる。
しかしほんとうにうまく書ければ、感動が待っていることだろう。
恐怖もない目的は、
見るに値しない。
だって誰でも簡単にできるものだろうからだ。
そうではなく、
恐怖を伴うし、リスクもあるし、
実現困難だが、
それを甘んじてやるしかない状況にあり、
やるしかない動機や情熱に満ち溢れている状態で、
その恐怖をドラマチックに乗り越える物語が、
一番面白いと思う。
ただ恐怖から逃げて、
回避するよりも、
そういう正面突破が一番面白いよね。
チートじゃなく、心の奥底にしみるドラマにならないと、
それは表現が難しいのだが。
どういう恐怖がある?
そもそもないのなら、
勇気も出しようがないし、
作戦も立てようがない。
それは、克服できる恐怖だろうか?
出来るとしたら、どのように?
その克服は、見たことのない、ドラマチックなものになるだろうか?
そのセットを見出すことが、
主人公のストーリーをつくることだと思う。
誰もが、生きるのはこわい。
その瞬間を描くのだ。
2021年06月15日
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